翡翠竜
人狼族を好き放題にしている竜を倒しにヴァイオレットは夜が明けると同時にその住処へと向かった
目的地に向かう者は少数精鋭でヴァイオレットとルージュ、そして案内役として人狼族の長について来てもらい他の仲間達は全員待機という形にした
朝から森の中を走り続け太陽が真上に来る頃には目的地付近に到着、竜と戦う前に一旦休憩を挟むことに
『思ったより早く着いたな。そっちの竜はともかく森の中で俺の足についてくることが出来る奴がいるなんてな』
『まぁ私も物心ついた頃から森の中走り回ってたしね。住処はもう大分近いんだよね』
『あぁもう目と鼻の先だ』
ヴァイオレットは先程から既に感じ取っていた。この距離からでも強い気配を垂れ流している存在を
これだけのプレッシャーを放ってくる相手は限られている。まず間違いなく人狼族長が話していた竜で間違いない
ルージュもそれを感じ取っているようで殺気立っている
『そういえば竜が来た時最初は抵抗したって言ってたよね。どんな風に戦ってたとか覚えてる?』
『そうだな……手も足も出ず奴の全力を引き出せなかったから大したことは教えられねぇが魔法を使えてた仲間が突然魔法を使えなくなってたな』
『魔法が使えなくねぇ……』
エリザのように相手の魔法を無効化するような魔法を使用してくるのだろうか
だとしたらこちらにとってかなり不利な戦いを強いられることになってしまうことになる
しかしこの情報だけで確定することはできないので、こればっかりはぶっつけ本番で戦ってみないと対策もできない
『さて、もう十分休憩できただろう。そろそろ行くとするか』
『そだね』
『……ん?ヴァイオレット!』
ルージュの声と同時にそれまで離れた場所から感じていた竜の気配が急接近してきていることに気づく
そして十秒もしないうちにそれはヴァイオレット達の前に現れた
『不快な気配がしたから来てみれば……何者だ貴様は』
自分達が気配を感じ取れているということは相手もまたこちらの気配を察知しているということ
翡翠色の鱗をしていて大きさだけでいえばイグニスと遜色ない
ルージュやイグニス、バシリッサと生活をした経験があるヴァイオレットだが自分に敵意を向けてくる竜と対峙するのはこれが初めてで、全身から汗が噴き出る程のプレッシャーをその身で味わうこととなった
翡翠の竜はヴァイオレットの方を暫く観察した後、人狼族の長へと視線を動かした
『野良犬風情がまさか裏切ったわけではあるまいな。裏切ったら貴様の仲間がどうなるか説明したはずだがその頭では理解できなかったか』
『……俺はお前には屈しない』
『愚かな。まぁいい、貴様等の代わりなどいくらでもいるからな。今度は反抗しない奴を選べばいいだけだ』
『その前にちょっといいかな』
声に反応し再びヴァイオレットの方へ視線を戻す翡翠の竜
『なんだ』
『私と一騎打ちしてよ』
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