服従
怪我をして帰ってきた者達から襲撃されたことを聞いたヴァイオレットは、ルージュと共に鬼人族と遭遇したという場所へと向かった
村の脅威となるのなら遠慮なく排除させてもらおうと息巻いて行ったはいいものの、いざ到着してみると鬼人族と思われる者達がヴァイオレットに対して既にひれ伏している光景がそこにはあった
鬼人族は男性女性関係なくヴァイオレットの倍近い大柄な体型をしていて頭には角が生えていること以外は人間と殆ど変わらない見た目をしている
そんな巨体が全員自分の目線よりも低い位置まで頭を下げているのはナーガ族の時を思い出して気が引けてしまった
『この展開、ついこの前にも見たなぁ』
『貴様……いやあなたは一体何者だ?』
『あれ、貴方達は私と同じ言葉を使うんだね。なら話は早いね、私はさっきあなた達に襲われたリザードマンやナーガ達と一緒に生活してるの。それでわざわざ会いに来たってわけ』
『俺達を皆殺ししに来たと……』
『いや痛めつけるだけでそこまでするつもりはなかったしもう他の部族を無闇に襲わないって約束できるっていうんだったら考えてあげてもいいけど……私達の住処を襲うっていうんだったら話は別かな』
そう言うと鬼人族の面々は怯えた顔でこちらを見つめてくる
どうやら鬼人族もヴァイオレットが身につけていたイグニスの爪を恐れているのは間違いないようだ
リザードマン達は初めて会った時からこれに恐れている様子はなかったので、もしかしたら敵意を向けてきた相手にだけ反応しているのかもしれない
『わ、悪かった……もう手を出さないと誓う。あなたの言う事をなんでも聞くから許してくれ』
『いやまぁ分かってくれればそれでいいんだけど。うーん……あっそうだ。じゃあちょっと手伝ってもらいたいことがあるんだけどちょっと村まで来てくれる?』
鬼人族はヴァイオレットの言うことに素直に従い村までついてきた
その光景を村で待っていた者達は何事かと驚き怯えた様子を見せる
ヴァイオレットは訳も話さず突然連れてきてしまったことを謝り、鬼人族を連れてきた理由を話した
『いやぁこれ運ぶの大変だったんだよね。助かるよ』
鬼人族を村に連れてきたのは建築途中である壁に使う木材を運んでもらう為
村の者達だけだと一本運ぶのにも大人数が必要で効率が悪かった。彼らならば一人でも運ぶことができるとだろう
実際鬼人達は鬼気迫る感じで必死に働いてくれたので、たった一日で当初想定していたよりも大幅に作業を進めることができた
『このペースだったらあっという間に終わるかも。明日も手伝ってくれる?』
『わ、分かった』
こうして労働力を手に入れたヴァイオレット達は僅か数日で村の拡大に成功、鬼人達が必死に働いてくれたのでつい調子に乗ってしまい予定していた倍以上の土地を得ることができた
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