王都の動き2
『全く、突然帰ってきたと思ったらあんな事を言い出すとは。我が息子ながら頭が痛くなるな』
『よろしかったのでしょうか?ユリウス様にお任せしてしまって』
『仕方がなかろう。数年ぶりに会ったが一度言い出したら聞き出さないのは昔から変わらないな。まぁ奴にはこちらとは別に私の私兵数十名を貸して監視をさせつつ適当な場所を探させておけばよかろう』
アレクサンドロスは息子ユリウスの直談判を受け入れヴァイオレット捜索の任を任せることにした
ユリウスは頭を使うことが得意ではなくそれが関係しているのか簡単な魔法もままらない程、だがその代わりとして剣術の才能があった為剣の腕を磨くのに剣の達人が多くいる隣国リベラに留学させていた
短気で少々粗雑な面もあったので儀作法等最低限王族としての礼節をそこでしっかりと学ばせてから帰って来てもらおうと思っていたのだが、あの様子を見る限りあまり成果は出ていないように感じられた
故にアレクサンドロスはユリウスが何か面倒事を起こすのではと案じていた
『何も問題が起きなければいいんだが……』
そんなアレクサンドロスの心配を他所にユリウスは、数年ぶりに王都へ帰ってきたにも関わらず休む間もなく父親から借りた私兵に王都を発つ準備をさせていた
『出発は何日後になりそうだ?』
『明日の夜には準備が整いますので明後日明朝を予定しています』
『そうか、お前にはこの任務の間指揮官を務めてもらうつもりだ。暫くの間世話になるぞ』
『ハッ。しかしユリウス様、申し上げにくいのですが一体どうやって探すおつもりで?未だ痕跡すら発見できていない状態ですのでただ闇雲に探しても……』
『心配するな、こいつに犯人を見つけてもらう。おい、連れてこい』
ユリウスの呼び声と共に一人の兵士とその後ろから金髪碧眼の女性が現れた
街中を歩いていれば自然と目で追ってしまいそうな美しさ、しかしその見た目を台無しにしてしまう手足の枷で彼女が奴隷だというのはすぐに理解できた
王族が奴隷を連れて歩くのは非常に珍しいがこの国でも奴隷制度はある為そこまで問題ではない
問題はそこではなく女性のある一部が普通の人間とは異なることにあった
『長い耳……まさかその者長耳族、エルフですか?南方の大陸にある広大な森に住んでるという噂は聞いた事はありましたがまさか実在するとは。一体どこでエルフを見つけたんですか?』
『リベラにいた時貴族位の者達の間で行われる奴隷の競売を見学する機会があってな、そこで見つけたんだ』
エルフは不老長寿、千年以上平気で生きている為他の種族が使えないような技を扱うことができるというのは聞いたことがある
ユリウスはこのエルフを使って犯人を見つけ出そうと考えていたようだ
『早く森に……家に返して』
『喋った……こちらの言葉を喋るのですね』
『それは珍妙な技によってこちらの言語で伝わるようにしているらしいぞ』
『な、なるほど?因みにこの事国王は……』
『無論伝えていない。いいか、この事は父上にはくれぐれも内密にするんだ。その代わり今回の事が上手くいった時にはお前の昇格を父上に打診してやろう』
『わ、分かりました』
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