畏怖の象徴である父
ナーガ達が逃げていった先へと歩を進めると、奥の方で集まっているのを発見した
気を取り直して再び歩み寄ろうとしたところ、密集しているナーガ達の中から子供らしき泣き声が聞こえてきた
それを身を呈して守ろうとする大人ナーガ
『ガ、ガルガ!』
『これじゃあ私が悪者みたいでなんだかやりづらいなぁ……言葉も通じないし一回ガリアさん連れてきて話聞いてもらおうかな』
敵意のない相手を攻撃するのに気が引けてしまったヴァイオレットは外にいるガリアを連れてこようかと考える
するとそれを察したかのように外で見張りを任せていたルージュとガリアがこちらに現れた
『あれ、どうしてここにいるの?外の見張りは?』
『ヴァイオレットが中に入っていってから少しした後に外に出てた奴らが戻ってきたんだ。それでとっちめて動けなくした後にこのリザードマンが外に敵はもういないって敵から聞いたらしくてそれで中に入ってきた』
『そうなんだ、まぁちょうどよかった。ガリアさん、なんでそんなに私に怯えてるのか聞いてみてくれない?』
ナーガと対話ができるガリアに怖がられている理由を聞いてみるようお願いするヴァイオレット
これだけ意味も分からず怯えられてしまうと流石に少しばかりショックである
ガリアが話しているナーガは他の者とは色が異なっており、他が黒に対して一人だけ白い鱗をしていた
多分あれがナーガ族の長なんだろうと二人が会話をしているところを見ていると、暫くしてガリアがそのナーガを連れてこちらに戻ってきた
『話聞いた。あなたから邪竜様の気配、感じた。言っている』
『邪竜の気配……?』
ヴァイオレット自身からその気配を感じるというのなら邪竜というのがルージュでないのは分かる
となると竜と言われて思い当たるのは首にあるイグニスの爪しかなかった
『もしかしてこれのことかな?』
『ギィ!』
ナーガがその爪を見ると途端に恐怖で慄きだしてしまった
ヴァイオレットが見てもただの爪でしかなく何も感じ取れない
『これがそんなに怖いの?リザードマン達は何も感じてないみたいだったけど……』
ナーガの行動を不思議に思いながらふとガリアの方に目を向けてみると、なんとガリアはその場で平伏していた
『ガリアさんまで何してるの?』
『その爪、紛れもなく邪竜様のもの。あなた様、邪竜様の庇護を受けていた、気がつかず申し訳ない』
『ねぇその邪竜ってイグニスっていう竜のことを言ってるの?』
『正しく。名前、口にできない、恐れ多い存在』
まさか自分の親が邪竜などという異名でこれほどまでに恐れられているとは思いもしなかった
その事については一先ず置いておくとして、労せずにリザードマンとナーガの争いを止めることができたヴァイオレット達は長であるナーガを拘束し、他のナーガ達にここで待機するよう命じてからリザードマンの村へと帰還した
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