恐怖の逃走
ナーガ達がいる洞窟は明かりの一つもなく真っ暗で何も見えない状態
魔法で光を灯して確認すると、洞窟の中はまるで蟻の巣のようにいくつもの道に枝分かれしていた
『この中から全員探すのは骨が折れるなぁ。そういえば魔物をおびき寄せる為の魔法があったっけ。亜人系にも効くのかな?とりあえずやってみるか。"挑発"』
挑発はヴァイオレットが昔自分が動かずとも魔物を自分の元に来させる為に作り出した独自の魔法
以前戦ったことのある植物の魔物の中に特殊な花粉を撒き散らすことで他の魔物をおびき寄せこちらを襲わせる相手がおり、その魔物の技を解析して相手を興奮状態にさせる花粉と同じ効果のある魔力を放出することで自分の元に相手がやってくるように作り上げた
魔物にしか使用したことがなかった為ナーガに通用するかは不明で洞窟全体に放出した魔力が行き渡るのには時間がかかる為、効果が現れるまで待ってみることに
暫く待っていると奥の方から物音が聞こえてくる。明かりで奥の方を照らしてみるとそこには大勢のナーガがヴァイオレットの方へと向かって来ていた
『よかった効いてるみたい。結構いるみたいだけどまぁなんとかなるでしょ』
洞窟前で見張りをしていた二人の力量からして石化にだけ気をつければこの数相手でもどうということはない
それに全滅が目的でない以上何も全員を相手にする必要はない
こちらの力を見せつけて相手に逆らえないと分からせればそれで十分だ
迫り来るナーガ達に対しヴァイオレットは構えようとする。しかし次の瞬間ナーガ達が全員ピタリと動くのを止めた
『ん?何?なんで止まってるの?』
ついさっきまで興奮状態だったはずなのにそれが完全に削がれており、逆にこちらに対して恐怖を抱いているように感じ取れた
不思議に思ったヴァイオレットが近づこうとするとそれに合わせて後退るナーガ達、更に近づこうとすると今度は悲鳴らしきものを上げ始めた
『ギギィ!!』
『えっ!?ちょっとどこ行くの!』
作戦通りナーガ達を自分の元に誘導することが出来たと思った矢先、集まってきたナーガ達はなんと血相を変えて来た道を全力で逃げ始めてしまった
挑発は一度興奮状態になったらすぐに解除されるものではなく、興奮状態を解くにはそれを上回る程の何かを相手に与えなくてはいけない
上半身が人型で表情が読み取りやすいナーガのあの表情からして恐らくこちらを視認した時に興奮状態が解かれる位の恐怖を感じたのだろう
殺気どころか戦闘態勢にすら入っていなかったのに何故そこまでの恐怖に襲われたのか謎だったが、とりあえずその事は一旦置いといてナーガ達が逃げて行った先に向かってみることにした
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