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男子高校生4人がバスケするだけ

作者: うらとも

テストも兼ねて、心理描写を思いつくまま入れました。

そんなに考えてる余裕ねえだろ、というツッコミに対しては、「まあアニメでよくあるじゃん」ということでご了承いただければ。

心理描写モノローグ部分はゆっくり読んでもらっても構いません。

三石:みついし。バスケ部。

 : 

緒方:おがた。バスケ部。

 : 

伊瀬:いせ。バスケ部。

 : 

瀬戸:せと。バスケ部。

 : 

 : 

0:本編

 : 

 : 

0:とある公園。バスケットコート。

 : 

 : 

三石:「うし。やるか」


緒方:「唐突だな」


伊瀬:「まあボール持ってるからいうとは思ったけどよ」


瀬戸:「あれ? 我らがキャプテンは?」


三石:「『休みの日にまで呼び出すんじゃねぇ』とのことです」


伊瀬:「まあ当然だわな」


緒方:「あいつキャプテンのくせして一番のサボり魔だよな」


瀬戸:「でもこれはサボりとは関係なくない? 個人的な練習だし」


緒方:「他のスタメンがこうして休日返上で練習に励んでいるというのに家でぐーたら過ごすのは充分にサボりでしょ」


瀬戸:「え、おれたちってそんな真面目な理由で集まったの?!」


伊瀬:「なわけ。たぶんバスケするんだろうなぁ程度の認識よ、少なくとも俺は」


三石:「俺も。暇だなぁ、バスケすっかってだけ」


緒方:「おい合わせろよ。せっかくおれが真面目な空気出してやってんのに」


伊瀬:「そういうお前はどうなの? ここに来た理由」


緒方:「まあ暇だなって」


伊瀬:「暇なんじゃねえか」


三石:「花のバスケ部よ? 彼女の一人くらいいないのかお前ら」


瀬戸:「あ、や、俺いるけど」


緒方:「は?」


伊瀬:「は?」


三石:「ぶち殺すぞお前」


瀬戸:「えぇ……いや、つーかお前らにいないのが不思議なんだけど。いっつも女子と絡んでるじゃん、てっきりそのうちの誰かと付き合ってるのかと」


緒方:「……いや、別にそういうんじゃねーし」


伊瀬:「というか、あんまり調子に乗るとあとで悲しい思いをするというか……」


三石:「あれ? こいつ俺のこと好きなんじゃね? くらいで止めておくのが一番楽しいし……」


瀬戸:「……お前ら、たまにすごい奥手になるよな。奥手というか、なに、その気弱さは」


伊瀬:「うるせー! なんだ、彼女いるからって俺たちのこと見下してんのか! やめろよ! 俺たち友達だろ!」


瀬戸:「あぁ友達だからそのひどい被害妄想をやめろ」


緒方:「つーかお前、誰と付き合ってんだよ」


三石:「まさか画面を向こうを指して彼女とかほざかないよな?」


瀬戸:「おれを痛いオタクにするな。日野さんとだよ。ほら、女バスにいるだろ」


伊瀬:「日野さん……? 日野さんって、あの日野さんか……?」


瀬戸:「あの日野さんがわかんねえよ」


三石:「マジかこいつ……いつの間に……」


瀬戸:「いや、そこは成り行きというか……ほら、日野さんとおれの家、近いだろ?」


緒方:「知らねえよ! 初耳だよ! 何だお前やっぱり喧嘩売ってんのか?!」


瀬戸:「落ち着けって! 初耳だったのはすまん。で、まあ帰り道たまに一緒になって、いろいろ話すうちにどちらからともなくっつーか……まあ、そんな感じで」


三石:「…………」


伊瀬:「…………」


緒方:「…………」


三石:「おい、やっぱりこいつ殺すか」


瀬戸:「は?!」


伊瀬:「賛成だぜ相棒」


緒方:「じゃあ一発目は俺に譲ってくれ。さっきから拳が震えて仕方ねえんだ……!」


瀬戸:「殺意高すぎるだろ……なんだ彼女くらいで」


緒方:「てめえ言ってはならんことを!」


伊瀬:「ぶち殺し決定だ歯ァ食いしばれェ!!」


三石:「楽にあの世に行けると思うなよ!」


瀬戸:「あーあー悪かったって言葉が過ぎたなごめんって! もうこの話は終わりにしようぜ! どうやったって傷が増えるだけだろ……」


伊瀬:「増えるのはてめえだけだけどなあ……!」


瀬戸:「落ち着けって!」


緒方:「……はぁ。まあ、茶番はとりあえず終いにしてよ」


伊瀬:「おい緒方! 本気で言ってんのか?!」


緒方:「落ち着けよ伊瀬。瀬戸をボコボコにするのは日野さんの話を聞いてからだ。まだこいつの妄想に過ぎなかったという可能性が残ってるだろ」


瀬戸:「すごいさらっとひどいこと言ってるな」


三石:「なるほど。日野さんに事実の確認をしたのちそれが間違いなければ改めて瀬戸をフルボッコにするというわけか」


緒方:「そういうことだ」


伊瀬:「ちっ……命拾いしたな瀬戸」


瀬戸:「たぶん短い期間だろうけどな」


緒方:「ま、つーわけでだ。練習っつっても本気の本気のやつはさすがにいねーだろ。軽く試合でもするか?」


三石:「あぁ。四人だし二対二でちょうどいいしな」


伊瀬:「チーム分けは?」


三石:「グッパでいいだろ」


緒方:「じゃあ俺パー出す」


瀬戸:「その発言意味あんのか……?」


緒方:「俺とチームを組みたいやつはパーを出せ」


瀬戸:「…………」


三石:「…………」


伊瀬:「…………」


三石:「じゃあ、いくぞ。――グッパで別れましょ」


緒方:「……おい。なんだこれは」


伊瀬:「まあ、いっそ振りかと思うよな」


瀬戸:「むしろお望みかなと」


三石:「……じゃあ、どうせだしこれでいくか。俺、伊瀬、瀬戸の三人対、緒方の一人で」


伊瀬:「いぎなーし」


瀬戸:「おなじーく」


緒方:「異議あり大ありだ!」


三石:「なんだようるせーな。望んでたんじゃないのか?」


緒方:「なわけあるか! 仕切り直しだ!」


三石:「ったく。じゃあ面倒なこと言うなよ」


緒方:「そんなにあの発言面倒だったか……?」


三石:「いくぞ。グッパで別れましょ」

 : 

0:間

 : 

伊瀬:「――で、こうなったか」


三石:「俺と瀬戸。伊瀬と緒方。うん、いいんじゃないか?」


瀬戸:「どういう面で?」


三石:「いやてきとー。特に意味はない発言だった」


瀬戸:「…………」


緒方:「よろしくな伊瀬。俺と組めたことを光栄に思えよ」


伊瀬:「チェンジお願いしますー」


緒方:「伊瀬くーん?」


三石:「さて、じゃあ先攻後攻はどうするか」


伊瀬:「無難にじゃんけんでしょ」


三石:「うし。じゃあ瀬戸よろしく」


瀬戸:「え、なんで?」


三石:「俺はじゃんけんが絶望的に弱い」


瀬戸:「じゃんけんにそんな弱さとかあるっけ?」


三石:「ある。試しにやってみるか?」


瀬戸:「おう。じゃんけんポン。あ、勝った」


三石:「伊瀬」


伊瀬:「ん?」


三石:「ジャンケンポン」


伊瀬:「勝ったな」


三石:「緒方」


緒方:「じゃーんけーんぽん! うっしゃあ俺の勝ちィ !」


三石:「こいつ無駄に人をいらつかせる才能があるな。――ま、つーわけだ。よろしく頼んだよ、瀬戸クン」


瀬戸:「はいはい。そっちは?」


伊瀬:「緒方がやったら逐一うっとおしそうだから俺がやる」


緒方:「言い方!」


瀬戸:「それじゃ、じゃんけんぽん」

 : 

0:間

 : 

緒方:「準備はいいか貴様ら!」


伊瀬:「お前のその厨二ムーブはいつまで続けるつもりなんだ?」


緒方:「俺が飽きるまで!」


伊瀬:「さっさと飽きろ」


三石:「じゃあ伊瀬・緒方チーム先攻で。ルールは公式準拠な」


瀬戸:「最終的な勝敗は?」


三石:「三点先取にしよう」


伊瀬:「一ゴール一点か?」


三石:「いや、得点をそのまま適応する」


緒方:「つまりスリーポイント入れれば」


三石:「その時点で勝ち確だ。もちろん、先攻の場合は後攻側にまだチャンスがあるけど」


伊瀬:「その場合は引き分けか」


三石:「そうなりゃ次の一点取った方が勝ちでいいでしょ」


緒方:「いいね。シンプルで」


瀬戸:「とりあえずスリーポイントは最優先で警戒ね。了解」


伊瀬:「なんて言ってるとあっという間にリーチ取られるぞ」


三石:「やることは普段の試合と変わんねぇよ。点はやらん。スリー以外だったらいいやなんて甘い考えは捨てろよ」


瀬戸:「わかってるよ。その上でってこと」


緒方:「んじゃ始めっか」


三石:「作戦会議はいいのか?」


緒方:「そこら辺はノリと勢いでしょ。合わせろよ、伊瀬」


伊瀬:「お前が合わせろ。シュートは打たせてやっから」


三石:「瀬戸、今の言葉簡単に信じるなよ?」


瀬戸:「そこまで馬鹿じゃないっての」


緒方:「そんじゃま、行くぜ――」

 : 

0:試合開始

 : 

緒方:「っ!」


瀬戸:(うぉっ、いきなり突っ込んできた!)


伊瀬:(一旦パスして様子見とかなしかよこのバカは)


緒方:「っと……さすがに簡単には抜かせてくれないか……」


瀬戸:「これでも最後の砦を任されてるんでね。ディフェンスには定評があるよ」


緒方:「知ってる。いつもお世話になってますっと!」


瀬戸:「くっ……!」


瀬戸:(ドリブル自体はそこまで脅威じゃないけど、躊躇なく突っ込んでくるのは素直に恐ろしいものがあるな……気を抜けば一気にやられる……!)


三石:「ワンマンプレーがしたいならお望み通り――」


緒方:「うぉ……!」


三石:「かっちり二人で潰してやるよ」


伊瀬:(ほれみろダブルチームにつかれた)


伊瀬:「緒方ー、素直にパスよこせー」


緒方:「ったく、しゃーねーな!」


伊瀬:「ゴールがら空き」


伊瀬:(どうすっかな。あんま俺シュートうまくないんだよなぁ……。スリーポイントは特に。でもせっかくノーガードでもらったのに突っ込むのもなぁ)


伊瀬:「ま、打つんだけどさ」


瀬戸:「三石!」


三石:「おっけー外れる」


伊瀬:「判断早過ぎて泣きたくなるわ」


緒方:「まだまだァ!」


三石:「あん?」


緒方:「リバウンドは続行だろ?」


三石:「おい瀬戸ちゃんと見とけよ」


瀬戸:「悪い、てっきり三石が拾うのかと」


緒方:「おいおいお前ら、そんなんじゃ監督にどやされるぞ」


三石:「試合じゃちゃんとやるっての」


緒方:「どうだか。こういう練習でのたるみが本番での油断につながるんだぞー?」


瀬戸:「じゃあお前もペラペラ喋ってんなよ!」


緒方:「おわっとあぶね!」


三石:「ま、とりあえず仕切り直しか」


伊瀬:「へいパース」


緒方:「また打つなよ?」


伊瀬:「わかってるっつの」


三石:「だからってディフェンス放置するなよ?」


瀬戸:「さすがにそんなバカしねぇっつの」


伊瀬:「さて。どうすっかな」


緒方:「都合いい時にパスよこせよー」


伊瀬:「おー、じゃあとりあえず動き回っといてくれや」


瀬戸:(伊瀬の得意分野はパスだ。ボールから目を離した瞬間に緒方にパスが通ると思った方がいい)


三石:(正直、パスを通さないように動くよりは、パスが通った後のことを考えて動いた方が楽なんだよな。特にパスする側が伊瀬だと、どれだけ緒方に張りつこうがパスは通るだろうし)


伊瀬:(――とか、妙な警戒されてるんだろうなぁ。俺のパスセンスに恐れ慄いてくれるのは嬉しいけど、妙なプレッシャーもあってやりづらいったらこの上ないな)


瀬戸:「そんなぼーっとしてたら五秒経つよ。つーか経ってない?」


伊瀬:「そんな真面目なこと考えないの。とりあえずドリブルすりゃいいんでしょ」


緒方:「なぁまだー?」


伊瀬:「うるせー、パス欲しけりゃちゃんと動け、三石を振り切れ」


緒方:「ったく、しゃーねーなー」


三石:(お、スピード上げたか。でも奥に入り込むわけでもなし、深追いはしないほうが吉だな)


緒方:「ほれ、パス」


伊瀬:「下がり過ぎだ馬鹿」


瀬戸:(すれ違いざまのパス!)


三石:「瀬戸はそのまま伊勢につけ!」


瀬戸:「了解!」


伊瀬:(緒方に三石がつくまで時間がある!)


三石:(その一秒にも満たない時間があればシュートできるとか思ってんだろ)


三石:「甘ぇよ」


緒方:「おぉ、高ぇなおい……!」


緒方:(ジャンプ力があるやつとは思ってたけど前より高くなってないか……? つーか最近の試合でここまでのは見たことねーってことは)


緒方:「本気出してなかったのかよ……!」


三石:(潰せる! 緒方はシュートを打つ気で飛んだ。このまま打たなければトラベリングだ!)


緒方:「――伊瀬!」


三石:「なっ! 股抜き?!」


伊瀬:「うぉっ……! 怖ぇパスの出し方しやがるな……」


瀬戸:「それをちゃんと取れる伊瀬にもまあまあ驚きだよ」


伊瀬:「ま、パスは得意なもんでね。出すのも受けるのも」


瀬戸:「で? 打つの?」


伊瀬:「そろそろ決めときたいよなとは思う。ただ――」


瀬戸:「うん?」


伊瀬:「それは俺である必要はない」


緒方:「伊瀬!」


瀬戸:「緒方?! いつの間に――」


伊瀬:「ほい!」


緒方:「そんじゃま、ここは素直に二点貰っときますかっと!」


伊瀬:「……そういうならバックシュートするなっての」


緒方:「へへっ、まあ決めたからよしってことで!」


瀬戸:「……ほんと、いつの間に」


三石:「悪い。油断した」


瀬戸:「いや。珍しいね、三石があそこまで離されるなんて」


三石:「確実に止めれると思ってたからな。不意を突かれて着地ミスった」


瀬戸:「あぁ。そういうこと。ま、相手が悪かったね」


三石:「ったく。緒方の野郎め」


瀬戸:「――とりあえず取り返そう。なに、こっちが三点取っちまえばいい話よ」


三石:「おう、そうだな」


緒方:「反省会は済んだかよー」


伊瀬:「それとも降参するかー?」


三石:「冗談。さっさとボールよこせ」


伊瀬:「へいへい」


瀬戸:「……え」


三石:「ほぉん……」


瀬戸:(ゾーン……でいいんだよな? 縦列に並んで前を伊瀬、後ろを緒方が守る)


三石:(けど、二対二でこれ意味あるのか? 横がら空きだし)


三石:「……ちょい探ってみるか。――瀬戸」


瀬戸:「おう」


瀬戸:(……で、わりとすぐに伊瀬がつくと。緒方は前に寄って三石を抑えるか)


三石:(何が狙いだ? これじゃマンツーマンと大差ないだろ)


瀬戸:(とりあえず動き回って様子見るしかないか。下手に動いてボール取られるのも嫌だし)


瀬戸:「三石」


三石:(……で、伊瀬が戻ってきて緒方が下がると)


三石:「……お前ら、何がしたいの?」


伊瀬:「俺らが真面目に答えるとでも?」


三石:「いや、さすがに不思議すぎるだろ」


緒方:「いいからさっさと攻めてこいよ。つまらん考察ばっか進めてないで」


三石:「ふざけてんのはどっちなんだか」


三石:(とはいえ、そろそろちゃんと攻めてみるか)


伊瀬:(おっと、切り込んできた! 合わせろよ緒方!)


三石:(フリースローライン超えたあたりで担当交代か。で、瀬戸にパスは……)


三石:「……あぁ。なるほど。鬱陶しいなこれ……」


三石:(縦列の時はパスが出しやすい。けど一度攻め込んでマンツーマンにつくのが緒方に変わったら、伊瀬は俺と瀬戸の中間地点に移動する。これがなかなかどうして、絶妙な位置取りだな。パスが通る気がしない)


瀬戸:(パスを得意とする伊瀬だからこそ掴める感覚。かといってこれ、三石の方に近づけばダブルチーム組ませるようなものだよな……)


三石:(なら、とりあえず一対一で攻め込むしかないか)


緒方:(お。目が合ったってことは、ドリブルで切り込んでくるつもりだな……)


三石:「………。――っ!」


緒方:「にゃろ! ぜったいに抜かせるかよ!」


三石:「あんまりくっついてくるなよ! おれにそんな趣味はねぇぞ!」


緒方:「俺もねえよ! だからさっさとボールよこせや!」


三石:「やなこった!」


緒方:(うぉっ。バックステップ!)


三石:(もらった!)


瀬戸:「だめだ三石! 読まれてる!」


三石:「え……」


伊瀬:「もーらいっ!」


緒方:「ナイスブロック!」


三石:(伊瀬! しまった、つい視界から外してた!)


緒方:「よーし。これで俺らのリーチ変わらず――っと、おお? ……そういや、リバウンドはありだったな」


瀬戸:「弾くんじゃなくて、ちゃんと手に取らなきゃ」


緒方:「そんな不敵な笑み浮かべてるうちに打てたんじゃねーの? 俺も伊瀬もわりと油断してたぜ?」


瀬戸:「よく言うよ。シュート打とうとしたら即詰めてきたくせに。そうなれば無理な体勢を強いられたさ」


緒方:「あんまりお前にボールは渡したくなかったんだけどな」


瀬戸:「そういう割には、最初のパスはスルーだったじゃないか」


緒方:「ありゃゾーンの意図もあったからな。ただ、切り込んでくるのがお前だったらどうしようかと内心ちょっと焦ってたぜ」


瀬戸:「へぇ……そりゃいいこと聞いたよ!」


伊瀬:「止めろ緒方!」


緒方:「言われなくても!」


瀬戸:「さっきの三石とのやり取りで体力使ったろ? 休んでていいよ」


緒方:「ほざけ。お前も潰してやるよ」


緒方:(つっても、体力云々の前に、やっぱり瀬戸の相手はあんましたくねえんだよなぁ。こいつのドリブル、気持ち悪いし)


瀬戸:「どうした? 目追いついてないぞ」


緒方:(ほぉらこれこれ。早過ぎ。そのくせ振り幅が広いからあっちこっち目ん玉揺すられるし)


緒方:「……ほんと、キモイぞお前」


瀬戸:「褒め言葉として受け取っておくよ」


伊瀬:(どうする……? カバーに行った方がいいか……)


三石:「俺に構ってないで行ってやれよ。このままだと緒方負けるぞ」


伊瀬:「下手くそな挑発してんじゃねぇよ。てめえをフリーにする方が怖いわ」


三石:「よく言う」


三石:(ただ、伊瀬を引き付けてるだけじゃちっと貢献度は低いか)


三石:「じゃあしっかりついてこいよ!」


伊瀬:「マジかこいつ……!」


緒方:(三石が動いた……!)


三石:(さあ、どうする……?)


伊瀬:(すれ違いざまのパス……!)


緒方:(おいおいパクリもいいとこだろ!)


伊瀬:「緒方! ダブルチーム! 一気に叩くぞ!」


緒方:「っ、おう!」


緒方:(三石へのパスはなし! 依然ボールは瀬戸か!)


瀬戸:(伊瀬がつくその一瞬! 緒方に生まれた心の緩みをついて攻める!)


緒方:(俺と伊瀬の真ん中抜かれた!)


伊瀬:(挑戦的すぎるだろ!)


三石:(それでもやってみせた! さすがチームいちのドリブラーは違うな!)


緒方:(とはいえ場所が悪い。そこからレイアップは無理だろ!)


伊瀬:(自然シュートはジャンプシュートに限られる! なら――)


伊瀬:「まだ止められる!」


緒方:「俺は三石を抑える!」


瀬戸:(さすが切り替えが早いな。そういうところはチームメイトとしていつも尊敬してる。だけど今は敵同士。存分に利用させてもらう!)


伊瀬:(瀬戸はシュート体勢! ここからドリブルに切り替えるのは無理! 完全にブロックはできなくても、これだけプレッシャーを与えれば外れる可能性は――)


伊瀬:「……は?」


緒方:「……マジかよ」


三石:「あぁ……これは俺でも引く」


瀬戸:「……っと。――今の、ファールってことでいいよな?」


伊瀬:「……はは。マジか。マジでマジか、お前」


瀬戸:「マジもマジ。正直あのまま打ってたら入ってた気しないし。貪欲にいかせてもらった」


伊瀬:「だからって即座にファール狙うかねぇ……」


瀬戸:「つーわけで。フリースロー権限二つ。行使させてもらうぜ」

 : 

0:間

 : 

緒方:「なぁ、フリースローってありなのかぁ?」


伊瀬:「先に三点取った方の勝ち。それ以外は公式準拠。ならファールからのフリースローはありだろ」


緒方:「なんかズリぃ気がするんだよなぁ」


三石:「負け惜しみだろ、諦めろよ」


緒方:「ちぇー。ま、まだ負けてねーけどよ」


瀬戸:「打っていいか?」


伊瀬:「早く打てよ」


瀬戸:「いや、そんなぺちゃくちゃ喋られてちゃ打てねーって。試合本番意識しろよ」


緒方:「何を偉そーに」


三石:「外すなよ」


瀬戸:「外すかよ。……ほい、一本め」


伊瀬:「ちゃっちゃと打て」


瀬戸:「へいへい。……ほい、二本め」


緒方:「ちっ。やなやり方だな」


瀬戸:「素直にシュート決めさせてくれればこうはならなかったよ」


伊瀬:「打たせるわけねーだろ」


三石:「さて、これでお互いリーチだな」


緒方:「なあ、フリースローつまんねえからさ、次は無しにしようぜ」


瀬戸:「お前、それじゃあファールし放題になるだろ」


緒方:「お前は俺たちを無法者か何かと思ってるのか……? 万が一にもあった場合は仕切り直し。酷かった場合はその時点でファールした方の負けでいいだろ」


伊瀬:「ファールの判定は全員でやるのか?」


緒方:「そこは……まあ、なあなあで。なんとなくその場の雰囲気でやろうぜ」


三石:「ざっくりしてんなぁ……」


伊瀬:「まあでも、フリースローなしには賛成だな。真っ当なシュートで勝ち負けは決めたい」


瀬戸:「なんか遠回しに俺が悪者みたいに言われてないか?」


伊瀬:「次からはって話だろ。正直、さっきの使い方は個人的にはうまいなって思ったぜ」


三石:「まあ、ファールは起こさない起こさせないのが一番だしな。じゃあ、次はフリースローなし。ファールが起こった場合はその時考えるってことで。異議は?」


伊瀬:「なし」


緒方:「なーし!」


瀬戸:「まあ、実際俺もとやかく言う気はないし、異議無しで」


三石:「よし。じゃあ改めて、伊瀬・緒方チームからの攻撃で。瀬戸、ここ守り切って、俺たちの勝ちで締め括るぞ」


瀬戸:「おうともよ」


緒方:「なら俺たちだって守り切ってやるよ」


伊瀬:「そんで無限ループに陥らせてやる……」


瀬戸:「そこは俺たちが勝つって言えよ……」


伊瀬:「そんじゃいくぞー、っと」


瀬戸:「なっ!」


三石:「は?!」


三石:(いきなりスリーかよ! しまった、距離あけ過ぎた!)


伊瀬:「なーんて、ほい」


三石:「なっ!」


伊瀬:「やっぱりチーム一のパスメーカーとしては股抜きはやっておかなければと思ってさ」


緒方:「ナイスパス! 伊瀬! そんじゃ第二試合はさくっと終わらせてやるぜ!」


瀬戸:「そんな堂々と宣言されてはいそーですかってさせるわけないだろ!」


緒方:「それは止めてから言うんだなっと!」


瀬戸:「バックステップ?!」


緒方:「やっぱり俺もやっておかなきゃと思ってさ。チームいちのシューターとして」


瀬戸:(くそっ、手際が良すぎる!)


三石:(リバウンド……!)


三石:「――は、無意味か……」


緒方:「うっし! 勝ち星いただき!」


伊瀬:「正確には負け星回避だけどな」


緒方:「この後きっちり抑えて勝ちゃいいんだよ!」


伊瀬:「それが盛大なフラグでないことを祈るよ」


三石:「うし。取り返すぞ」


瀬戸:「さすがにこのまま負けってのはかっこ悪いしな」


緒方:「その意気やよし。潰してやるよ」


瀬戸:「わっるい顔……。天性の悪人ヅラだな」


緒方:「地味に悪口やめな?」


伊瀬:(さて、どう攻めに来るか……)


三石:「瀬戸、パス」


瀬戸:「おう」


伊瀬:「何か考えがおありで?」


三石:「いーや。ただ、俺もそろそろいいとこ見せないとなと思って」


伊瀬:「へぇ。さすが副キャプテン。じゃあ、かっちょいいところ見せてくださいなっ!」


三石:「言われなくてもっ!」


伊瀬:(三石はこれといった特長はない。けど、それはマイナスな意味を持たない。言うなれば万能。ドリブルの瀬戸。シュートの緒方。パスの俺。俺たち三人に渡り合えるほどの実力を持ったオールマイティ)


伊瀬:「……ほんと、一番手間取るのがお前みたいなタイプだよな」


三石:「ただの器用貧乏だよ」


伊瀬:「言ってろ」


三石:(さて。伊瀬相手に的確なパスルート探すのは無茶だ。ならここは素直に――)


三石:「瀬戸」


瀬戸:「おうよ」


緒方:(切り込んでくるか……?)


瀬戸:「ちょっと離れ過ぎじゃない?」


緒方:「は? ……あっ!」


緒方:(ドリブル警戒し過ぎた! スリー狙いか!)


瀬戸:「なーんちゃって!」


緒方:「うぉっ……結局ドリブルかよ!」


瀬戸:(よし、重心ズタズタ!)


伊瀬:「馬鹿! 揺られすぎだ!」


緒方:(だめだ、体勢が崩れる……!)


伊瀬:「くそっ!」


瀬戸:「おぉっ、カバー早ぇな……。ほんと、伊瀬を見てるとディフェンスのいい参考になるよ!」


伊瀬:「そうかよ! じゃあお礼ってことで今そのボールくれよ!」


瀬戸:「それとこれとは話が違う!」


三石:「ナイスパス!」


伊瀬:(俺のカバーで三石がフリーになったのを狙って……! でもなるたけ、チャンスになるようなパスコースは塞いだつもりだったんだけどな……!)


瀬戸:(三石の位置どりが良かった。伊瀬がこう塞いでくるだろうってのを読んでたのか!)


伊瀬:(ほんと……そういうとこだぞ副キャプテン!)


緒方:「おい! 俺抜きで楽しんでんじゃねえ……!」


三石:「緒方〜、お前もうボロボロだろ」


緒方:「ぬかせ。一回崩されたくらいで凹んでられっかよ。むしろ我らがチームメイトが強者揃いで歓喜に震えてるぜ」


三石:「そうかよ。じゃあお前も負けてねーってところ見せてくれよ」


緒方:「言われんでも!」


三石:「っ!」


瀬戸:「伊瀬、カバー行かなくていいの? たぶん、このままだとあそこで決着つくぞ」


伊瀬:「だな。でもまあ、そろそろ二十四秒だろ。さすがに一回休憩挟みたいし、俺は傍観させてもらうよ」


瀬戸:「のわりには気迫抜けてねぇけど?」


伊瀬:「たりめーだろ。傍観すんのと観戦するのはちがうんだよ。てめえにボールが渡るようなことがあれば徹底的に潰してやるから覚悟しとけ」


瀬戸:「おぉ怖。じゃあボールはもらいたくないし……三石ー! さっさと決めてくれー!」


三石:「好き放題言ってくれんな……!」


緒方:「どうしたー? 諦めてやけくそシュートでも打つかー?」


三石:「なめんな!」


緒方:「おっと……! 油断も隙もねえな!」


三石:(緒方相手にシュートフェイントは通用しない。ドリブルはドリブル、シュートはシュートで集中しないと一気に追いやられる……!)


緒方:(多少無茶なシュートでも決めてくるか……? たまに俺でも惚れちまいそうなことしてくるからなこいつ……。ボールから目を離すなよ俺。その一瞬でゴールは決まってるぞ……!)


三石:「っ!」


瀬戸:(切り込んだ!)


伊瀬:(どっちが勝つ!?)


緒方:(止める!)


三石:「よっと」


緒方:(後ろに下がった?! まずい……打たれる! ……いや、ドリブルが止まってない! しまった! 近づき過ぎた!)


三石:「ほいっ」


伊瀬:(ここでスピンムーブ?!)


瀬戸:(おいおい、そんな綺麗な動き、俺でもなかなかできねーよ)


緒方:(からのバックステップ。正真正銘スリーポイント圏内!)


伊瀬:「欲張るねぇ……」


三石:「――悪い。もらったぜ」

 : 

0:間

 : 

緒方:「っあー! やられたー!」


伊瀬:「さっすが副キャプテン。魅せてくれたな」


三石:「ゴールバーにガンって当たった時はちょっとヒヤッとしたけどな」


瀬戸:「ともあれ、これで同点か。どうする? ちょっと休憩するか?」


伊瀬:「いや、得点差でいえば四対五だろ? じゃあ俺らの負けだ」


三石:「緒方はそれでいいのか?」


緒方:「まあ、引き分けってことにしたい気持ちはあるけど、正直疲れた。あとは適当に流して飯食いに行こーぜ」


瀬戸:「お、じゃあ負けた二人の奢りな」


伊瀬:「やめろよ。俺今金欠なんだから」


緒方:「同じく」


三石:「二人ともバイトは? 一昨日給料日だったろ」


緒方:「ゲーム買ってなくなりました」


瀬戸:「欲に忠実だな……」


伊瀬:「俺は貯金。将来のために」


三石:「お前、そんな出来たやつだったのか……」


伊瀬:「失礼だな。大事だぞ、貯金。俺は金がなくて破産した親父を見てるからな。ああはならん」


三石:「急に生々しいな……」


緒方:「なんだ……その、ゲームいくつか貸してやろうか?」


伊瀬:「馬鹿、娯楽できるくらいには家は裕福だっつの。母ちゃんのバイタリティ舐めんな」


緒方:「おぉ……そういやお前の母ちゃん強そうだもんな」


瀬戸:「ま、ともかくさ。何するよ? 流すってなるとシュート練か?」


三石:「まあ適当だな。ボールも一個しかないし」


伊瀬:「あー、汗拭きてー。ギャッツビー誰か持ってねーの?」


緒方:「部活ならともかく遊びで持ってきてねーよ」


三石:「じゃあ飯行くついでに銭湯でも行くか」


瀬戸:「おぉ、いいね。締めはやっぱりコーヒー牛乳で」


緒方:「俺はイチゴミルク派」


伊瀬:「俺は牛乳」


三石:「おれはフルーツ牛乳だな」


瀬戸:「よし、じゃあちゃっちゃと済ませちゃおうぜ!」


伊瀬:「っと、待てよ瀬戸」


瀬戸:「うん?」


伊瀬:「あそこにいるの、もしかして日野さんじゃないか?」


瀬戸:「え? ……あ、ほんとだ。おーい!」


緒方:「日野さんが手振ってる……」


三石:「めちゃくちゃ可愛いな、おい」


伊瀬:「……瀬戸くん」


瀬戸:「うん? ……おい、三人とも、どうした? 顔が怖いぞ……?」


三石:「およそ二十分前にした話、もう忘れたかなー?」


瀬戸:「二十分前……?」


緒方:「君が僕たちを馬鹿にしたあの件だよあの件ー」


瀬戸:「あの件……。――あ」


伊瀬:「ほんと、短い人生だったな、瀬戸くぅん?」


瀬戸:「お、落ち着け……な? 俺たち、友達だろ?」


緒方:「あぁ友達だとも。だからきっと、瀬戸は俺たちのこの怒りの鉄拳を受け入れてくれるよね?」


瀬戸:「いや、それとこれとは……」


三石:「ぐちぐち見苦しいぞ瀬戸ぉ! 歯ぁ食いしばれェ!」


瀬戸:「ま、待てぇ! 話し合いを! 冷静な話し合いを求めるぅ!」


伊瀬:「(雄叫び)」


緒方:「(雄叫び)」


三石:「(雄叫び)」


瀬戸:「(絶叫)」

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