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とろとろと過ぎゆく時よ

作者: もくめ

「うし」という生き物を初めて見た時、僕はそれのもつ自分の何十倍もあろうかという莫大な質量にひどく恐怖した。

湿り気のある大きな鼻に通された輪っかを見てそんなことをされて痛くはないのだろうかと少し心配になった。

「うし」はさぞ居心地が悪そうに首をぶんぶん振り、その度に金属のガチャガチャという大きな音が舎内に響いた。

僕は長いこと「うし」の前に立ち尽くしていた。

じっと観察していると「うし」と目があった。

大きなビー玉のような目で、愛らしいまつ毛がすごく特徴的だった。


時が過ぎて僕は成長し、思考はより感覚よりも知性を主体としたものになった。


学校教育と元来持っていた好奇心によって大量の本を読み、その過程で数多くの知識を手に入れることができた。


その代わりに失ったものもある。

それは純然たる感情の発露。カルピスの原液のような濃度の濃い成長体験。そしてそれに伴う心の底からの喜びである。


知性なんかクソ喰らえ!

こんなものを手に入れたせいで僕は心から笑うことができなくなったんだ。全ては知性のせいだ!

ばかやろう!!このハゲ!!!


もちろん僕は100%本気でこんなふうに思ってるわけじゃない。でも知性の獲得が僕の世界から数多くの新鮮で直感的な感覚を奪っていったことは事実であると思う。


とろとろ過ぎゆく時よ、どうかあと一度だけでもあの感覚を味合わせてくれはしまいか……

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