第24章夏休み編 合宿(中編その3)
架空世界ステージ1 空VS春間
空と春間の戦闘が始まって、20分が経とうとしていた。
空は春間の剣戟を防戦一方に受けている。
「ッち」
一旦、春間から距離をとり空は鎌鼬を撃つ体勢に入ったが、すぐに春間に、距離を縮められ撃つことができない。
(なろ・・・)
空はすぐさま春間に切りかかった。がそれをいとも簡単に避けて見せ、それと同時に空の左肩めがけて、刃を突き刺した。
「がっ・・・・・・」
春間の刃は、空の左肩を突き刺し、貫通した。
『・・・・・・言い忘れていたが、相手が参った。と言っても戦闘終了だ』
突然、上空から竜也の声が聞こえたが、空も春間も耳を傾けるだけで身動き一つしない。
空に限っては、動きたくても動けないのだ。
(・・・くそ)
痛みを我慢しながら空は春間を見た。
「参った、と言え・・・・・・」
小さい声だがはっきりと聞こえた。
春間の目は獲物を狩るような目つきをしていてそれを見た空は血の気が引いた。
(勝てるきがしねぇ・・・・・・)
「・・・・・参りました」
悔しそうな表情をして言葉を発した。
それを聞いた春間は、そっと刃を抜いた。
「っぐ」
右手で刺された箇所を覆った。
『戦闘終了だ。目を閉じろ』
竜也の声が聞こえてきたので、言われたとおりに目を閉じた。
現実世界
目を開けるとそこは、体育館だった。
空はゆっくり椅子から立ち上がり、チラッと横にいる春間を見て、そのまま、体育館を出て行った。
「どうだった?立花隊の空の実力は?」
春間に歩み寄り竜也が聞いた。
「・・・あの若さで考えると中の上ってとこですかな」
「そうか・・・」
春間は、他の隊員が座ってる場所に歩き出した。
「・・・・・・」
春間から画面に視線を移し、また他の隊員に視線を向けた。
「よし、次ぎ入れ」
その言葉と同時に、座ってた二十歳ぐらいの女性、二人が椅子に座った。
架空世界ステージ2 紅希VS桜
「・・・・・・」
紅希は囲まれていた。数人の桜に。
「ふふ、どれが本物だか分かるかしら?」
全ての桜が、一斉に言われた。
「・・・・・・」
紅希は無言のまま左右に視線を動かす。
(・・・・・・全てに影もあるし、欠けている部分も無い)
紅希は注意深く桜を見るが、どれも姿形全て一緒で、どれが本物だか分からないでいた。
「行くわよ・・・・・・」
声と同時に紅希を囲んでいた桜が一斉に斬りかかってきた。
「っッ!」
斬られると同時に紅希の体が、氷の像となり、砕け散った。
「甘いわよ・・・」
氷身で桜の斬撃を避けた紅希だったが、逃げた先に二人の桜が斬りかかってきた。
「二人なら・・・」
相手が二人と分かり紅希は二人の桜に向かって斬りかかった。
一人の桜が紅希に真正面から刃を振り下ろしてきた。
それを、受け止めると、後ろから、もう一人の桜が斬りかかってきた。
「・・・・・・」
後ろの桜に顔を向けると、前で桜の刃を受け止めていた自分の刃を手から離し、その場から移動した。その為、後ろからの攻撃を避けることができた。
「良い判断ね」
「ハァ・・・ハァ・・・」
呼吸を整える暇も無く、二人の桜が斬りかかって来た。
「くそ!」
真正面からの斬り付けだったので、それを後ろにステップして避けた。
(・・・これからどうす・・・・ッぐ)
突然、後ろから痛みを感じ、感じた瞬間に自分の前に刃が現れた。
いや、違う。コレは刃が後ろから刺され、貫通した刃の部分だった。
口から血を吐き出しながら力を振り絞って後ろに顔を向けた。
「マ・・ジで・・す・か・・・」
そこには下に顔を向けている桜が居た。
「ごめんね、紅希。訓練だからって仲間を斬り付けるなんて・・・・・・」
「ハハ・・・・・・」
紅希は目をつぶった。
現実世界
目を開けると最初にいた体育館だった。
「・・・・・・負けたのか」
「大丈夫?」
俯いていると桜が声をかけてきた。
「大丈夫ですよ先輩。さすが、副隊長ですね」
「・・・・・ありがと」
『ッぐ』
ステージから良祐の声が聞こえたので振り向くとそこには、血だらけで刀を支えに立っている良祐の姿が画面に映っていた。
「良祐!?」
「聖華さん!?」
「紅希、桜、終わったならそこをどきなさい」
竜也に言われ二人は体育館の端に座った。
「・・・空は?」
最初に入った空の戦闘が終わったことを画面で確認してから空を探した。
「空なら、外に出て行ったよ」
近くに居た同じ隊の青年が言った。
「次ぎ入れ」
「へ~い」
青年は竜也に呼ばれ装置に向かった。
「・・・・・・」
紅希は画面に視線を向けた。
架空世界ステージ3 良祐VS聖華
「ハァ・・ハァ・・・・ハァ・・・・・・」
良祐は血だらけで右腕はもう上がらないでいた。
良祐の前に悠然と聖華は立っている。
「まだ・・・やる?」
小さく聞いてきたが良祐は答える気力も無く頷く事もできないで、聖華を見据えた。
聖華も良祐を見据えていると、良祐は刀を支えに立っていたが力尽き、その場に倒れた。
「・・・・・・」
聖華は静かに瞳を閉じた。
現実世界
「・・・・・・ん」
椅子から立ち上がった良祐は右腕を動かした。
「・・・・・・」
「大丈夫だった?」
「勇美副隊長。えぇ、なんとか」
疲れきった顔していたが、良祐は笑顔で答えた。
「なら、良いけど・・・・・・」
「それじゃ、失礼します」
礼をして紅希のいる場所へ向かった。
「・・・どうだった?立花が言うには騎士になって、まだ二ヶ月ちょっとらしいぞ」
「・・・それならはっきり言ってすごいわ。私、少し本気になっちゃたもの・・・・・・」
「・・・・・・」
竜也は良祐に視線を向けた。
(・・・・・・)
それから数時間たち、夕食となり自由行動して、一日目が終わった。
二日目以降も、良祐達は数回、架空戦闘したが、全敗だった。