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今日からの予定

目が覚めた。

うっすらと開いた目にオレンジ色に輝いて沈んでいく太陽が見えている。

温かい草から身を起こして、グッと伸びをする。

これから自室のベッドに戻って、起こしに来るメイドに自室で寝ていたふりをしなければならない。

今朝歩いてきたのと逆の道を、ポテポテと歩いていく。


さっき確認したら、「日光耐性」のスキルレベルが上がっていた。

これは幸先がいい。

今日から始まる授業とはなんの関係もないスキルだが、最近はレベルが上がりにくくなったと感じていたところなのでかなり嬉しい。


一階にある住み込みの使用人たちの部屋からは、様々な声が聞こえてくる。

メイドたちは早起きだ。

耳を澄まして聞いてみると、「ん~」と伸びをしているような声も聞こえる。

コックのベルゴはまだ寝ているらしく、部屋の外にまで大きないびきが響いていた。


ひんやりする石の階段を裸足の足裏に感じながら二階へと上がり、ふかふかのカーペットを踏んで奥の自室までたどり着いた。

細く開けたドアの隙間から自室へと滑り込み、一番奥のベッドに飛び込む。

掛け布団を肩まで引き上げ、ステータスを確認しながらメイドが起こしに来るのを待った。


少し待つと、ルベルが部屋にやってきた。

さすがは専属である。

これまでは朝、起こしに来るメイドはその日その日で違っていたのだが、これからはそういうことも全てルベルが担当することになる、と言うことなのだろう。


「お嬢様。もうお目覚めでしたか。」

ルベルが言う。

「うん。ちょっとワクワクしちゃって。」

噓ではない。

普段は部屋に戻ってからもう一度うたた寝することもあるが、今日はスッキリと覚めていた。


ルベルに寝起きのお茶を入れてもらい、それを飲みながら今日からの予定を聞く。

今日から始まる教育は、闇の日を除く火、水、木、土、光の日の午前中、一の鐘から三の鐘まで行われるそうだ。

火の日には剣術、戦いの基本。

水の日には植物学、文学。

木の日には数学、魔術。

土の日には歴史、地理。

光の日に所作や楽器の教育が行われることになる。

昨日が闇の日で、今日は火の日だから今日学ぶのは剣術、戦いの基本だ。


ちなみに一週間の名前は魔術の種類にちなんでいる。

空間魔法はなかった。

三つ目のユニークスキルに「収納」を選んだのは正解だったようだ。


ルベルの説明が終わっって、私は腰かけていたベッドから降りた。

ネグリジェから普段着のドレスへの着替えをルベルに手伝ってもらう。

剣術の稽古用の服に着替えるのは朝食を終えてからだ。


今回はきちんと靴も履いて、部屋からでる。

廊下を挟んで反対側の姉さんの部屋からも、ちょうど姉さんとスカーレットが出てきたところだった。

「おはよう。姉さん」

「ルナ、おはよう。」

二人で顔を見合わせて笑った。


三歳になって初めての朝。

気持ちのいい朝だ。


両親は、既に食卓についていた。

空色のドレスを着た母さんと、仕事用の騎士服を着た父さんが談笑をしている。

父さんは母さんと結婚してから冒険者の仕事を辞め、王城で安定した騎士の仕事をしている。

子供のためではなく、純粋に母さんと過ごす時間を増やすためだ。

昔から仲の良い夫婦である。


ヴァンパイアは出生率が低く、結婚したとしても子供ができる可能性は低い。

私たち双子が生まれたのは奇跡のようなものなのだ。


領地を持つ貴族だけで構成されるヴァンパイアにも王はいて、その王だけは統治権のある正真正銘の領地を持っている。

といっても領民はほぼおらず、ヴァンパイアたちが集まったりするためだけの土地になっているのだが。


ヴァンパイアは基本的に独立しているので、ヴァンパイアたちを纏めるという目的のためには王は必要なかった。

ところが最近になって種族間の交流が増したことで種族の代表としての王が必要となった。

そこで比較的力の強いヴァンパイアの中から選ばれたのが、今の王なのだ。

最近になって作られたということで、今でも王政賛成派と王政反対派の争いは絶えない。

父さんが王城に勤めているので、我が家は王政賛成派ということになる。


今朝も部屋には清らかな月光が差し込み、ランプの光に満ちていた。


「では、今日も食事を得られたことに感謝して、いただこうか。」

穏やかな笑みを浮かべた父さんが言った。

その言葉を皮切りに、私たちは朝食を食べ始める。

今日もベルゴの料理は美味しかった。


朝食を食べた後は私と姉さんと母さんと筆頭執事。それから手の空いているメイドたちで王城に出勤する父さんの見送りをする。

仲良く手をつないで見送りをする私と姉さんを横目に、母さんと父さんは「いってらっしゃい」のキスをする。

二人ともヴァンパイアなので見た目は若いが、結婚してから何十年も経つはずなのに。

いつまで経っても仲の良い夫婦だ。









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