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S.A.T.O.S.ー特殊強襲戦術作戦隊ー  作者: ダークナイト
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口裂け女

Aber der schlimmste Feind, dem du begegnen kannst, wirst du immer dir selber sein; du selber lauerst dir auf in Hohlen und Waldern.

「口裂け女?」


ファーラートが初めて聞いた単語だと言わんばかりの声を上げた。


「まさか知らないとか言わないよね?」

「有名な都市伝説だよ?」


ビーストが呆れたようにファーラートに言う。

ビーストは身長が170cmくらいの中肉中背の男だ。親しみやすい雰囲気を出しており実際このチームのムードメーカーだ。


「知ってるよ。口が裂けた女でしょ?」

「ていうか、これやっぱりピッチャーじゃね?」

「皆普通のコップなのに俺だけおかしくね?」


現在円卓のテーブルに座った彼らはそれぞれが好きな飲み物を飲んでいる。

ファーラート以外は普通のコップに飲み物を注いで飲んでいる。彼だけはカミカゼがアメリカ土産で買ってきた髑髏のピッチャーで飲み物を飲んでいる。


「口裂け女そのままじゃねえか。」

「しかしピッ...そのコップ似合うね、買ってきて正解だったよ。」

「一目見た時から君に買っていこうと決めてたんだよ?」

「ガキの頃から君だけジョッキで飲んでたでしょ?」


カミカゼが笑いながら昔を思い出すように話した。


「そういえばビーストの家で集まってパーティーしてた時もファーラートだけピッチャーだったね。」

「そういえば、パーティーっていつからするようになったの?」


ドラゴンソルジャーが質問をした。


「たしか小学校4年生だったような気がする。」

「最初はクリスマスパーティーとしてやってたはずなのに、オールシーズン何かと集まってたよ。」


カミカゼが懐かしそうに答えた。

今この部屋にいるメンバーであるカミカゼ、ビースト、グリーンティー、ライトは幼稚園の頃からの付き合いだ。一方ドラゴンソルジャーは中学生からの付き合いからなので、パーティーに参加したのは後からである。


「春にやるから春会、夏にやるから夏会、秋に秋会、そしてなぜか冬だけクリスマス会なんだよね」

「子供の時にそう呼んでたから今もこの名前でやってるよね」

「社会人になってから仕事とかで参加できなくなっていって最終的には大晦日か正月にやってたね」

「15年以上やってると思うと凄いよね。」


ライトがニコニコしながら話す。


「なんで俺だけいつもジョッキなんだ...」


ファーラートは頭を抱えた。


「話脱線したから、戻そう?」

「そもそも口裂け女って知ってるよね?」


ビーストの質問に対し、「なんとなく」

という声がライトとファーラートから聞こえたビーストは呆れて頭を抱えた。


「口裂け女は1970年代に社会問題にまで発展した都市伝説だよ。」

「学校帰りの子供に【私、綺麗?】って質問してきて、綺麗っていうとマスクを外して口が裂けているのを見せつけてきて、綺麗じゃないっていうと殺されるらしいよ。

「実際にパトカーが出動する騒ぎにまでなったんだよ」


突如今まで口を閉じていたグリーンティーが解説をした。


「さすが、オカルト大好き野郎」

「そのくせレンタルしてくるDVDは三流のホラー」

「もっと良いやつ選んで来いよ。」

「センスは壊滅的だからね」


上からライト、カミカゼ、ビースト、ファーラートの順にディスられている。


「良いじゃんおもしろそうだったんだから。」

「面白くなかったけど」

「とにかく口裂け女は危険な怪異であることは間違いないよ。」

「時代に適合してるんだか知らないけど、襲われる人間にしか見えないらしいし。」

グリーンティーは若干不貞腐れつつもしっかりと口裂け女について解説をする。


「SNS対策ばっちりっていうわけか。」

「まあ、誰にでも見えるんだったら今の時代ネットに晒されるわ、居場所特定されるわ、袋たたきにされるわ。」

「データを見る限り100m6秒から12秒は変わってないね。悪さするんじゃなくてオリンピック出ろよってな。」

「とりあえず、俺たちに見えないはずがないからとっとと片付けよう。」

「これ以上被害者増やすのはダメだ。」


そういうとカミカゼは立ち上がる。

すると彼の服は戦闘服から瞬時に黒のカーゴパンツ、白いシャツに銀色のジャケットに変わった。

腰にはSTI2011、右足にはレッグホルスターにSIG SAUER P226が装備されていた。

もちろんこれらの武器が見えるのはS.A.T.O.S.の隊員のみだ。

これは彼らが使う魔術による恩恵の一つ。

瞬時に自分の好きな服装、装備になることが可能かつ共有モードに入っている武器を瞬時に装備可能。

しかも武器、装備品は落としてもすぐにホルスターに収まっているか手に戻ってくる。

彼らはこの特性を利用した戦闘を行う。


「とりあえずグリーンティー...一緒に来い」




―新宿―


二人の男が歩いている。

どちらも至ってその場には違和感のない服装に見える。

実際に彼らの近くを通る人々は何でもないように彼らの横を通り過ぎていく。


「とりあえず、クレープでも食べるか」

カーキ色のパンツに藍色のパーカーを着た男、グリーンティーが言った。


「別に食事をとる必要性ないんだから口裂け女を片付けてからにしようぜ」


もう一人の男、カミカゼが答えた。


「前方500mの位置にいるあの赤い服を着た女がそうだろう」

「俺たちからしたらマスクをしていようが関係なく分かるからな。」


彼らの魔術により強化された視力で口裂け女をすぐに見つけることができた。

赤い服に黒く長い髪、しかしその髪はホラー映画によく出てくるように乱れている。

虹彩は赤黒く、死んだ魚の目のように曇っている。

手は爪が乾いた血のように赤く染まっており大きい鎌を持っている。

カミカゼとグリーンティーが見つけたと同時にターゲットへ向かって走り出す。

スピードは一般人より少し早いくらいだ。

しかし異常なのはその持久力である。

彼らは走り出してから口裂け女の目の前に到達するまでスピードが落ちることなくトップスピードのままであった。


口裂け女は突然走ってきた二人の男に一瞬戸惑ったが「私、キレイ?」と質問をした。

「少なくとも美人ではないな。」

カミカゼが不敵な笑みを浮かべながらそう答えると同時に瞬間に鎌が彼の口元めがけて襲い掛かってきた。

しかしそれを避けると同時に走り出す。

口裂け女も同時にカミカゼを追うために走り出した。

グリーンティーも後に続く。


100mを6秒程度で走るだけあって何度も捕まりそうになったがそのたびにカミカゼは素早い動きで攻撃を避ける。

避けた鎌から発せられた衝撃波アスファルトの床を引き裂いたせいで破壊された道が数か所あったが幸いにも人的被害はなかった。

約3時間のダッシュを続けたころには人がほとんどいない場所に着いた。

何故人間である彼らが口裂け女相手にこんなことができるか、それは彼らの驚異的な回復能力にある。

全力を出してもその瞬間に回復、精神を破壊されてもその瞬間に瞬時に回復、傷を負っても瞬時に回復する驚異的な回復能力が備わっている。

しかも最高の状態での回復が可能であるので彼らには不調というものが存在しない。

またその回復能力のおかげで食事も睡眠も排泄も何もかもする必要などないのだ。

しかもノーリスクで制限なしである。

ゆえに彼らを倒すために肉体的損傷、精神的損傷や兵站攻めしようが意味をなさない。


「さて、ここなら変な動きをしても目撃者がいないからな。」

「最初は即射殺と思ったが、接近戦の練習台になってもらおうか」


そういうとカミカゼは右足を前に出し両手も前に構えた。

俗にいう軍隊格闘術の構えにカミカゼのスタイルが混じっている。


口裂け女が鎌を振り下ろしながら走ってくる。

カミカゼはその鎌を受け流すと同時に頭をつかみ地面に叩きつけた。

合気道の入り身投げだ。


叩きつけられた口裂け女の頭から脳が零れ落ちる。


「ナゼ...サワレル...?」

口裂け女はまさか接近戦での攻撃によるダメージを喰らうとは思っていなかったのか動揺しているようだ。

その隙を狙ってカミカゼは一瞬で距離を詰め、顎に肘打ち、膝に横蹴りのコンボをする。

膝を破壊された口裂け女が膝をついたその瞬間に右足刀を顔面に入れた。

首の骨が折れる音が響く。

そしてそのまま前のめりに倒れた口裂け女。


「よし、クレープに行くか」


そう言って後ろを振り向いた瞬間にカミカゼの後頭部へ鎌が襲い掛かった。

通常であればカミカゼの首から上がが飛んでいたはずだ。

しかし飛んだのは鎌の刃だった。しかも粉々になりながらである。


「ちなみにお前の攻撃では俺にかすり傷一つつけることは不可能だよ?」

彼らが魔術で受けた恩恵、通称【絶対防御】それは対物理、対魔術、対精神、対時間、対怪奇というあらゆるものから己を守る絶対的な防御力を発揮するものである。

これのおかげでカミカゼへの攻撃に対し彼の防御力に耐えることのできなかった口裂け女の鎌が破壊されたのである。

最もこれがなくても瞬時に再生していたであろうが。


「とりあえず消えろ」


そういうとカミカゼは腰からカランビットナイフを抜きその驚異的な腕力で口裂け女の首を切り落とした。




あなたが出会う最悪の敵は、いつもあなた自身であるだろう。

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