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夢日記

にいさんとふたり

作者: 鶏野玉子

たかいたかい鉄の塔

いちばんたかい塔のさき

ぽつりとあかりがとぎれてる


風はずっとふきつけて

あおられよろけて まっさかさま

おちたら形ものこらない


じいさんもとうさんもおちた

しらないだれかもおちた

いままでもこれからも


あにと二人でのぼっていく

なんどかのぼれば

じぶんの工具をかえるから

そうしたら

地上ではたらける

じいさんもとうさんも夢をみて

そしておちた


おとなは二人のぼれない

子どもは風にあらがえない

みんないつかおちてしまう


ぼくらは子どもじゃないけど

おとなでないから

ふたりで登れる

だからだいじょうぶ


靴よりあらいかなあみを

ふみはずさないように

こごえるりょうてで つめたい手すりをつかんで


風にあおられたら

足をふみはずしたら

つめたい鉄にこごえた手が

手すりをつかみそこねたら


だいじょうぶだ

おとうとよ

すぐうしろに兄がいる

おまえがもしもよろけても

兄がささえる

だからゆっくりあがるんだ

手がこごえたら わきの下にはさんで

いちにちひとつで十分だから

あたためるじかんはある


たどりついた塔の上

ちいさな電球をひとつ

こしのふくろからとりだして

のびあがって交換する


子どもほどちいさくない

おとなほどおおきくない

せいいっぱいのびをして

ゆびの先がようやくとどく


はずした球をつかみそこねた

下にまっさかさま

あっというまに見えなくなった


だいじょうぶだ

おとうとよ

古い球はすてるだけ

気にすることはない


あたらしい球はしっかりと

落とせばおかねがはんぶんに

さあ手をあたためて


にいさん

うまくいったよ

おりられる


気をつけろ おとうとよ

とうさんはおりるときに


わかっているよ



かなづちをひとつかう

かなづちをふたつかう

それともぺんちをかう


ひとつずつでいいんだよ

あにがいう


でもぼくとにいさんの


ひとりぶんそろえたら

ひとりが地上ではたらける

おかねはふたりでわければいい

ひとつずつでいいんだよ


わかった


かなずちをひとつ

ぺんちをひとつ

のこぎりをひとつ

くぎをひとはこ


ひとつづつひとつづつ

そろえていく

ひとつづつひとつづつ

そろっていく


今日でさいごだ


気をつけて

とうさんもさいごのひとつだった

ここでおちたら


わかっているよ

にいさん


かぜがつよい

てをのばす

ふるい球がかたい

うごかない


おちついて

すこし背がのびたじゃないか

むきをかえて手をのばせ


うん


しっかり手すりをにぎって

よろけないように


うん


とどいた

はずれた

かえた


よくやった

さあゆっくりおりるんだ

地上まで気をぬくな


うん

あとひゃくだん

あとじゅうだん

あといちだん


やった

地上に足がついた


にいさんやったよ

ぼくらは地上ではたらける


よくやった おとうとよ

おまえはにいさんのほこりだ

さあさいごのひとつをかいにいこう



「――をください」

「はいどうぞ、これで一通りそろったね」

「はい、兄のおかげです」

「お兄さんも喜ぶよ、おめでとう」


これで地上ではたらける

もうあぶない塔にあがらなくていい

にいさんもあんぜんだ

よかった

ほんとうによかった


どちらがはたらきにいこうか

にいさん


おまえがいくといいよ

おとうとよ


でもにいさんのぶんは


おまえがひとつづつ揃えてくれたらいい

いっておいで


わかった

いってきます



ただいまにいさん

しごとはたいへんだったけど

塔の上にくらべたら

にいさんどこ

そうだお墓に行かないと

あれからずっといってない



おじいさんおとうさん

ぼくらはやりました

にいさんとふたり


どうしてもうひとつお墓があるんだろう

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