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警護員藍野と詩織お嬢様の初恋  作者: ななしあおい
5.0_殲滅戦〜詩織17歳〜
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5.4_壊滅戦結果報告〜詩織18歳〜

 事後処理のすべて全てを終え、直接報告を行うため 私は高坂社長の元へ出向いた。

 受付を済ませ、柴田に案内されて社長室に通される。

 もう何度目かもわからないTKエネルギー開発社の社長室だ。

 応接ソファーに座って待っていると、別の女性秘書と共に高坂社長が入ってきた。


「待たせたかな、黒崎君」


 立ち上がって一礼して出迎えた私に、高坂社長は私に座るよう勧め、自分は上座の一人がけに座り、悠然と足を組む。

 微かな食器の触れ合う音と共に秘書がコーヒーを私達の前に置いていき、一礼して退出した。

 柴田に客人の案内はさせても、コーヒーは出させない事に私は少し歯嚙みしたい気分だ。


「いいえ、高坂社長もお忙しいようで、何よりです」


 高坂社長はコーヒーカップを手に取り、口をつける。

 私も一緒に一口手をつけた。


「では、報告を始めます」


 タブレットの1台を高坂社長に渡し、私も説明用のタブレットを開き、かいつまんで各ページを説明していく。


「各国の拠点と人員、情報網を壊滅させました。用心のため追跡用ウィルスも置いてきましたので、何かあっても先手を取って対処致します。記録には残しておりませんので、ご入り用であればそちらをお持ちください」


 高坂社長はスワイプしながらページをめくって確認していく。

 最後までめくるとサイン箇所があるので、そちらにサインを貰えば案件完了となる。


「いや、必要ない。何だかあっけないものだな……」


 最後までめくったのだろう。

 タッチペンを手に取り、高坂社長はサインしてタブレットを私に寄越した。


「実感がございませんか?」


 受け取ったタブレットを鞄にしまいながら聞く。


「正直、まだないな。公安も張り付いてるしね。どの位かかる?」


 高坂社長は忌々しげに窓を見やる。

 こんなセキュリティの厳しい高層階に監視はいないというのに、本当に嫌なのだろう。


「2〜3日もすれば情報が伝わって離れるでしょう。離れないようなら本社(アメリカ)から警告させます。柴田か藍野にお伝えください」


「今後は警護を減らす事もできるでしょう。如何致します?」


「勿論減らすよ。詩織はがっかりするだろうがな」


「殊の外、お気に召して頂きましたから。高坂社長、この後は予定通りですか?」


「ああ、もう少し目処がついたら私はアメリカへ移住しようと思う。詩織も留学したいと望んでるから時期はその辺かな」


 それでは、と前置いて私は言った。


「以上を持ちまして、本案件は終了致します。HRF社一同、TKエネルギー開発社のこれからのご発展を心よりお祈りいたします」


 これで高坂家の長かった依頼は一旦終わった。

 これからはランクを落とした警護体制に切り替えても、二人を充分フォローできる。

 どこの部署にも殉職者を出さずに済んで、私自身も安堵した。

 碧月(みつき)先輩のような事は、もう二度と起こって欲しくないものだ。


「本当にありがとう、約束は必ず果たす」


 高坂社長は憑き物が落ちたように迷いのない表情だった。

 これだけでも実施した価値はあるが、その上、記録にも残らない約束を律儀に守ってくれるつもりらしい。

 これでグループと高坂社長に恩を売れるなら、苦労した甲斐もあっただろう。


 高坂社長は流れを変えるように、話題を変えてきた。


「そういえば聞いたよ。これで黒崎君は支部長昇進だってね」


 ウチ(日本支部)の人事情報は、現時点で本社しか知らない筈だが、随分と噂好きな者がこの方の側にいるらしい。

 私は内心で眉をひそめた。


「お陰様で。若輩の身に余る光栄な事で、立場に恥じぬよう精一杯務める所存です」


 噂の出所を気にしつつも、心にもない定型文で返答した。


「じゃあ、日本支部の人事はもう君に相談した方がいいかな?」


「どういった件でしょうか?」


 平静を装いつつも、高坂社長のもったいぶった言い方に嫌な予感を感じた。


「藍野君を当社(ウチ)に欲しい。グループ内で異動は問題ないし、寄越してくれればできうる限り君の便宜も図るし、彼の将来も保証するよ。どうだろうか」


「お断りします」


 私はきっぱりと要求をはねつけた。


「即答だね。彼には聞かないのかい?」


 こんな好条件を断るなんて想定していなかったのだろう。

 当惑している様子に柴田の件の溜飲を下げた。


本人(アレ)に聞いても断ると知っているからですよ。アレ(藍野)()()私の物です。ああ、私は独占欲が強くて嫉妬深い男なのですが、手出しなさるならそのおつもりでどうぞ」


 私も泰然と足を組んで見せた。


「そう脅さないでくれ。HRF(きみたち)を敵に回すほど私は愚かでないよ」


 高坂社長は肩をすくめて見せる。


「詩織お嬢様の為ですか?」

「そうだね、半分は親ばかの一環かな」

「もう半分は?」


「私自身が彼を気に入った。彼は詩織に随分といい影響を与えてくれた、私の想定以上にね。後継はともかく詩織の側に置くにはベストな男だ」


 これはピンときた。

 高坂社長は詩織様お嬢様を留学させたがっていたからな。

 そのため護衛を選ぶ時も、わざわざ留学経験者か帰国子女を入れろと指定したからな。

 付き合いの長い藍野達の働く様子を見せ、彼らが留学を勧めればそちらに傾くのは当然の事。

 食えないお方ですね。


「でもね、黒崎君」


 高坂社長はすっかりぬるくなったコーヒーに口をつけ、カップを置くと確信めいた表情で言う。


「私の娘を見くびってもらっては困るな。あれも高坂の人間だ。欲しいものは自分で掴む子だよ」


 そう言って、自身の手帳から一通の招待状を取り出してセンターテーブルの私の前に置く。

 宛名はHRF日本支部長だけで、個人名はない。


「黒崎君には招待客として来て欲しいな」


 護衛依頼のあった詩織お嬢様のお披露目の招待状か。

 面倒な事だが、ウチにとっては今や立派なお得意様(取引先)だ。

 不参加など選択出来ない。


「喜んで参加させて頂きます」


 同伴の女性に一人思いついたが、却下した。

 星羅(せいら)はこういう場には向かないだろう。

 3課の誰かを適当に指名して、連れて行くことにしよう。

 寄越された創業記念パーティーの招待状を鞄に押し込むと、これ以上の面倒事に巻き込まれたくないので、早々に型通りの挨拶をして社に戻った。


 高坂社長のちょっかいもこれだけで済めば良いのだが、あの親子は執念深くて、溺れるほど愛情深い。

 藍野がうっかり絆されぬよう、手綱を締め直さねばなるまい。


 全く。

 藍野も厄介な方に目をつけられたものだ。

黒崎部長のコソコソ話

天海あまみ 星羅せいら

高級ブランド系のショップ店員さん。

明るく可愛く天然な子。

ちゃっかり屋さん。

時計は詳しい。

黒崎が腕時計のメンテに来た時、星羅がナンパした。

黒崎の彼女で付き合い始めたばかり。

見た目以外は全然黒崎の好みじゃないので、ほぼほぼ身体のみのお付き合い。

さて、どうなることやら。

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