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警護員藍野と詩織お嬢様の初恋  作者: ななしあおい
5.0_殲滅戦〜詩織17歳〜
22/30

5.2_組織殲滅戦@藍野

 久しぶりの東京生活も慣れた頃、俺は黒崎課長から呼び出された。

 高坂社長から犯人達の抹消命令を正式に受け、本社の承認も得たと言う。

 結局、詩織様が望む犯人逮捕は叶わなかったが、これを成功させれば護衛(俺達)も不要になり、どこにでも行けるし、好きな事もできる。

 本当に自由な生活を高坂社長と共に出来るだろう。

 我々がいなくて済むなら、その方がずっと良い。

 長く詩織様の側にいたからか、離れる事を少し寂しく思う反面、大学入学前に片がついて良かったと思う。

 しばらく前から黒崎課長の代理で俺が高坂社長の護衛と全体指揮を執っていたが、別件がこの抹消案件であることを知らされ、ようやく得心がいった。


 そして今日は作戦の実行メンバーの顔合わせと作戦説明で、本社に招集された。

 俺が会議室のドアを開けると、既に紅谷がいた。

 紅谷翔(くれや しょう)、所属は4課の主任だ。

 情報戦がメインでプログラミングやハッキングなんかも得意。

 この前の詩織お嬢様の救出時に使った警備システムへの割り込みも紅谷のチームが担当した。


 紅谷は俺の同期で初期研修も一緒に受けた、ある意味戦友で一番の親友だ。

 何せ自分の不得意分野が相手の得意分野という奇跡的な組み合わせだから、俺のプログラミング研修はえらく助けてもらい、紅谷の射撃や近接格闘なんかを俺はフォローした。

 その後、紅谷は警護員に向いていないと4課の調査員に転向して同期の中じゃ一番出世している。

 4課員なのに強襲強行ライセンス持ちのちょっと変わり種調査員だ。

 その紅谷はノートPCを開いて何やら作業中だが、気にせず声をかけた。


「紅谷!」

「よぅ。生身は久しぶりだな、藍野」


 紅谷は手を止めずに会話を続ける。

 相変わらず器用な奴だな。

 俺なら絶対にタイピングミスるのに。


「いつも画面か無線越しだからな、結婚おめでとう」

「ありがとう。今度の休みにでも来てくれ、ちゃんと紹介するよ」


 奥さんは香港人だという。

 式や披露宴はやらないのかと尋ねたら、どちらも向こうで済ませた。

 日本では自分に休みを合わて貰うのは大変だから個別に招待して紹介しているんだそうだ。


「じゃあ後で奥さんの好み教えてよ、持ってくからさ!」

「ああ、後でメッセージ入れとくよ」


 俺も自席から持ってきたノートPCを開いて、案件資料を見ていると、柴田さんが来た。


「あれ?今回の招集って藍野さんと紅谷さんですか?」


 3課の柴田燈李(しばた あかり)さん、彼女も俺や紅谷と同期だ。

 普段は俺と同じように護衛もするが、女性じゃないとできないような潜入護衛や調査なんかも担当している。

 精密射撃や狙撃の腕は俺より上で、近接格闘も頼まれてたまに練習相手をしているけど、女性にしては中々の腕前だ。

 女性って元々狙撃に向いてるらしいけど、すごい人だと思う。

 天は二物を与えまくる典型だ。


「そうみたい。今回よろしく〜」

「柴田さんも元気そうだな」


「このメンバーって本社の合同演習以来ですね!」


 合同演習は警護員や調査員の技術力向上と銃器実践の場の提供を目的に各支部と本社、稀にアメリカ軍も交えて合同で行われている。

 襲撃や拠点防衛など軍事演習に近い構成で、最終日には2〜3名でチームを組み、拠点をどれだけ増やせるかのゲーム形式で順位も競われる。

 この時は俺と紅谷が近接と襲撃、柴田さんが狙撃と援護で結構いい成績だった。


「柴田さんは今、藍野(コイツ)と一緒に高坂社長のとこだって?」


 紅谷は相変わらず手を止めずに会話をしている。

 一体どういう脳みその作りなんだろうね。

 脳筋な俺には真似できないな。


「ええ、護衛の割に秘書チームにいるので割と平和ですよ。公安の目も中東グループもぜーんぶハイプロの藍野さんが引き受けてくれるので。藍野さんは時々神戸に行ってるけど、詩織お嬢様はどうですか?」


「平和…いい言葉だねぇ……」


 俺はついボソッと呟いた。

 二人は怪訝そうな顔を向ける。


「平和なの凄く羨ましい。詩織お嬢様、基本ロープロで学校の行き帰り位のはずが、最近急にカフェやら花火大会やらテーマパークやら行きたがって、神戸の日はもう大変、毎度警護計画が変更になるんだよ……」


 俺は遠い目をした。

 警護計画はその通り、依頼人をどのように警護するのかを記した書面だ。

 移動ルートや入る建物の立哨方法と場所、投入人員の数、異常時の対応方法などを予め決めて作成しておく。

 5課の手を借りてるとはいえ、下調べや準備、施設との交渉に時間も手間もかかって結構大変なのに、当日予定外の場所に立ち寄られて、計画を白紙にされると精神的にダメージが大きい。

 賽の河原で積んだ石を鬼に崩されるのは、きっとこんな気分だ。


「あーそれは……」

「キツいな……」


 俺の愚痴に二人とも物凄く同情して、励ましの言葉をくれた。


「藍野さん元気出して下さい!そうだ、都内にお茶を使った美味しいお料理とお酒出してくれるお店出来たんですよ。これ終わったら(いつき)と行きましょ、ね!」

「ご愁傷様。お前には香港の美味い茶葉を進呈してやるよ」


 なぁ、お前らは俺に茶さえ与えればいいと思ってる訳?

 女の子くらい紹介してくれよ、このリア充どもめ!

 など内心で呪っていると、黒崎課長が来た。

 俺たちは立ち上がって敬礼で迎える。


「ああ、揃っているようだな。では、作戦の説明を始める」


 黒崎課長は返礼すると座るよう指示して、作戦説明を始めた。

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