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4-3.

 用を済ませた栞は神社に向けて走り出した。日が落ちて辺りはかなり薄暗い。これくらいの時が一番周りが見えにくい。それでも栞は全速力で走り続けた。

 途中何度か道を間違えかけたが、なんとか神社にたどり着いた。急いで裏手に回り、戸を開けると同時に大声で中の人を呼んだ。

「て、天子さ~ん……」

 ……、つもりだったが、息が切れているせいで思ったような声は出なかった。それでも声は届いたようで、天子が玄関まで出て来た。声の主が栞であることを確認するとあまりいい顔はしていないが。

「なんじゃ。シオリか。ここにはあまり来ないようにと……」

「それどころじゃないんです。七生君が……」

「なに?」

 軽く状況を説明して、今度は二人で公園へ逆戻り。天子は肩で息をしている栞を見て、休んでいてもいいと言ったが、栞は一緒に行くと聞かなかった。

 再びの全力疾走。流石にきついが、都市伝説と一人で対峙している駆人を思えば、音を上げるわけにはいかない。

「なんじゃお主。怪奇現象とかハンターとかに興味があるわけじゃなくて、駆人の事を気にしておったのか」

 結構な速さで走りながらも、天子は軽々と話しながら余裕そう。

「……」

「ほぼ初対面みたいなもんなんじゃろ? あやつは特に一目で惚れるような面もしとらんじゃろ」

「そういうのじゃ、ないですよ……」

「ほーん。まあ、別に何でもいいがの」

 走っているからだけではない歯切れの悪い栞の言葉に、天子は興味ないと言う風に話を切った。


 実の所、栞が駆人と会うのも、助けられるのも初めてではない。

 あれは小学五年の時だった。

 ちょうどこの頃、栞には突発的に霊感に目覚めた。後から知ったことだが、生まれつきの霊感餅もいれば、後天的に霊感を得ることもあるのだとか。

 霊感を得た栞は、急に見えるようになったお化けの存在を、友達や教師に逐一伝えてしまっていた。栞にとっては恐怖の対象があちらこちらに見えるようになってしまったのだから当然の行動だが、霊感のない周りの人にとってはお化けよりもそんなことを言う栞の方が恐怖の対象だ。

 日に日に彼女の周りからは人が離れていく。友達も、教師も、親でさえも。

 そんな折に学年全体での遠足があり、山へハイキングに行くことになった。

 一列になって山道を登っていたのだが、一緒に話すような相手もいない栞は俯いて前の人の足だけを見て歩いていた。

 それがまずかった。ふと顔を上げると周りはうっそうとした緑。歩いていた山道はどこにも見当たらない。それもそのはず、栞が追っていた足はいつの間にかお化けの物と入れ替わっていたのだから。

 光も微かにしか届かず深い森の中にいきなり一人放り込まれ、栞は今まで感じたことのない恐怖にただ足をすくませることしかできなかった。

 その時、どこからともなく声が響く。

「目の前に二つの道がある。一つは生の道、元の場所に戻れる。一つは死の道、二度とこの世に戻れない」

 言葉と共に、木々が騒めき二つの道が現れた。

「どちらか選べ。さもなくばここに留まれ」

 言葉の意味の半分も頭に入ってこない。でも、どちらかへ進めばここを離れることができる。そう信じて何とかすくむ足を動かして片方の道に入ろうとした。

「待って!」

 振り向くと、一人の少年が立っていた。

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