2話
部活が終わり、部長の私は部室の鍵を返しに職員室へと一人で行く。顧問に鍵を渡し、一人で帰ろうとすると、校門には咲菜が待っていて、一緒に下校することになった。
「未来~」
「どうしたの?」
「何かあった?」
「え?」
この時はさっきの告白のことなどほとんど覚えていなかったが、咲菜の言葉でその時のあの女の子の泣き顔が鮮明に呼び起こされた。
「また告白されたの?」
こういう時、咲菜の勘は本領発揮する。どうしても隠すことは不可能だ。
「うん」
「今回も女の子?」
「うん」
「すごいよね。未来の女の子人気」
この一ヶ月で五人から告白を受けたが、全員女の子からの告白だった。
「でも、皆が未来を好きになるのも分かるなぁ。未来は頭良いし、運動出来るし、顔も整ってて、美人だから、同性から見てもすごいカッコいいんだもん!私も何回惚れかけたことか」
「そんな褒めるほどじゃないよ」
「いや、本っ当に未来はカッコいいよ!私も未来みたいになりたいって思うし。でも、未来がそこまで皆に好きになってもらえるくらい努力してるって思うと、私には到底、無理だよ」
咲菜は笑って言う。
咲菜は優しい女の子だ。他人の気持ちを理解して、その人が気付いてもいない欲しい言葉をサラッとかけることが出来る。咲菜のような人の心に寄り添うことは私には出来ない。
「未来はさ、男の子の方が好きなの?」
「え?」
「ちょっと気になって、あ、でも、答えたくなかったら答えなくて良いよ」
「ううん、そんなことないよ。ありがと・・・・・・。私は女の子よりも男の人の方が好きだよ」
私は男の子に好意を持たれることはなかった。周りから、ほとんど男の子のような扱いを受けていたため、まず、私を女の子として見ている人はいなかっただろう。逆に男の子にモテる女の子から好意を受けることも多かったので、男の子からは疎まれていた。
「どんな人が好きなの?」
咲菜は少し前のめりで聞いてくる。
「どんな人か~、どんな人だろう?」
改めて、自分の好きな人について聞かれると、少し照れたが、考えてみる。見た目がカッコいい人は好きだ。性格が優しくて、誠実な人も好きだ。ただ、学校の中で『カッコいい!』と言われている男の子に恋愛感情を抱くことはなかった。
―――――幼い頃、私は童話の中のお姫様に憧れた。あんな風に綺麗なドレスを着て、カッコいい王子様に愛されたらどれだけ幸せなことか。私もそうなりたい!と思うのと同時に女の子にはそう接するのが当たり前だという認識が刷り込まれた。そのため、今では『お姫様』ではなく、『王子様』と言われるようになってしまった。
「・・・・・・分かんないや」
自分を好きになってくれる人はいない・・・・・・。ただ、ワガママを言えるなら、女の子として見てもらいたい・・・・・・・無理な話だ。