1話
好きな人。そう言われても私には良く分からない。恋愛に興味がない訳ではない。私のことを好きになってくれる人も居たが、それは全員、女の子だった。その中の何人かと付き合ってみたこともあった。しかし、特別な感情を抱くことはなく、その関係も直ぐに終わってしまった。
下駄箱に行くと上履きの隣に手紙が置いてあった。そこには『放課後に体育館の裏に来てください』とだけ。名前はないが、可愛らしい文字だ。私はそこに書かれている通りに放課後、体育館裏に行くと、そこには小柄で華奢な可愛らしい、女の子が待っていた。
「この手紙書いてくれたのって君?」
「は、はい」
その女の子は下を向き、時々こっちを見てはまた顔を下げる。
「一年生だよね?確か陸上部の体験入部に来てなかった?」
「はい!覚えててくれてたんですか?」
「うん。えっと、今日は何かな?私この後部活あって・・・」
「すみません。そうですよね」
その女の子は意を決したようにこっちを見る。
「入学式で先輩のことを初めて見た時からカッコ良くて、ずっと憧れてました。好きです!付き合って下さい!!」
やっぱりか。いや、まぁそうか。手紙、場所の雰囲気、ここに来た時の顔、どれをとっても告白の流れだ。
「・・・・・・ごめんね。君とは付き合えない」
直球過ぎたか。
女の子の目には涙が込み上がる。
「そ、そうですよね・・・・・・・・。先輩と私じゃ釣り合い取れてないですもんね」
「いや、そうじゃなくて・・・・・・」
「良いんです!・・・・・・来てくれてありがとうございます」
「ちょっ、待って!」
私の声に振り向くことなく、その女の子は涙を拭いながら走り去り、私は独り体育館裏に取り残された。
今回のようなことはもう何回目だろうか。別れる時、いつも相手の人は泣いている。だから、誰にも自分のせいで泣いてほしくなくて、誰とも付き合わないと決めた。でも、告白された時、それに対してどう応えて良いのか分からないで、泣かせてしまい、いつも後悔する。そんなことを考えることが多くなったことで、それが日常に溶け込んで、私は直ぐに頭を切り替えられるようになっていた。日に日に薄情になっていく自分に反吐が出る。
「あ、未来居た!探したよ。準備終わるよ」
「ごめん、咲菜。直ぐ行く」
私が体育館裏から顔を出すと、ちょうどそこにはポニーテール姿の咲菜が居た。私はさっきまでのことを悟られないよう、何事もなかったかフリをして咲菜と一緒に校庭へと向かう。こういう時、自分の作り笑顔が上手くなっていくことも嫌で仕方なかった。
『FIRSTLOVE~早乙女未来MEMORY~』1話を見ていただき、ありがとうございます。
これは『CROSSMEMORIES』というシリーズで、その中でも『早乙女未来』にスポットを当てた作品です。他にも作品がいくつかあるので、お時間ある時に覗いてみてください。