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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

スピリットリザレクション~名も無き精霊の祝福~

約一年ぶりです。ならし運転がてらファンタジーで書いてみました

いつもと変わらない日常、平和な日々、なんの変哲もない空

 

 そんな何処にでもある普通の日常

 

 この光景、この景色は俺が死ぬまで―――いや死んでも変わらないと思っていた

 

 人が生まれ成長し大人になり、愛すべき人を見つけ子を成し、愛すべき人を見守りながら朽ちてゆく

 

 その繰り返しが永遠に続く

 

 もちろん生きていく上では様々な困難が待ち構えている

 

 それも含めて生きていく…という事なのだろう

 

 その困難がどんなに理不尽・不条理でも超えていかねばそこにあるのは停滞だけだ

 

 だから抗うし諦めない――だって 止まる( 死ぬ )のはイヤだから




 


 体のあらゆるところが痛い

 

 目は片方潰れ、左腕は二の腕の半ばからない


 これらは全て奴に奪われた。


 それだけだったらまだ良かったかもしれない奪われたのはこの身だけじゃない


 家族も、友人も、隣人も、好いていた人も

 

 みんな、みんな奪われた/死んだ


 憎い、憎い!! 許さない、許せない!!


 この内側から溢れるモノをアイツにぶつけなければ気が済まない


 こんな痛みなんぞ忘れろ! 怒りで塗りつぶせ、お前はこのまま奪われっぱなしでいいのか!


 絶望するのはまだ早いするならコイツをぶっ殺してからにしろ!!


 そう自分に言い聞かせて体に力を入れる


 「――っあああぁ!!!」


 目の前の敵に向かって吼える


 右手に持っている斧を振り上げながら駆ける


 「ふん、矮小なニンゲンの分際で我に刃向うとは…程度を知れ」


 「っが!!!!」


 振り下ろした斧はカスりもせず逆に相手の拳が頬にめり込み殴り飛ばされる


 「……我が拳を生身で受けまだ形を保っているとはな存外ニンゲンも丈夫なものだ」


 ダメだ、届かない。遠すぎる。


 奴との力が天と地の差がある


 「…あ、ぅ……」


 「その傷、我が拳を受けてなお意識があるか。キサマ本当に矮小なニンゲンか?」


 「…………」


 だめだ、もう喋る力さえもない


 意識がだんだんと遠のいていくのと同時に死の足音が近づいてくる


 …あぁここで終わりか。せめて…カノジョは無事であれば


 「……さすがにもう立てぬか。さて、ここにいたニンゲンはコレ意外全て殺したしコレももうじき死ぬ。あとはこの地の精霊を始末するだけだ」


 「!!」


 精霊と聞いた途端意識が覚醒した


 精霊? この地の精霊はカノジョしかいない


 名も無き精霊、美しき君、俺に残った最後の友、この土地に住まう星からの祝福


 ……だめだ。カノジョまでも殺させるわけにはいかない


 カノジョが死ねばここら一体の土地は死滅する。


 そして何より一番の友を


 「ま、……て…」


 最後の力を振り絞る。『待て』と言うだけなのにもの凄く疲れる。


 死が一気に近づいた感じだ。たかが一言喋っただけなのに



 「…………」


 こちらの事なぞ気にも留めずに奴は目の前に魔方陣を空中に出した


 「待たぬ、我が野望の為に数々の犠牲を成してきたのだ。今更、我は止まらぬ」


 そう言い奴は魔方陣の中に手を入れる


 「……見つけたぞ」


 魔方陣から抜いた手の先には――カノジョがいた


 雪のような白い肌に輝くような黄金の髪、その瞳は宝石と言われても信じられる透き通った碧い瞳


 間違いなくカノジョだ

 

 「…やめ…ろ」


 カノジョはじたばたと暴れている


 「無駄だ、キサマをこちらに持ってくる際に力を封印させてもらった。もはや貴様はただの子供にすぎん」


 

 ―――――そうして奴はカノジョを滅した―――――


 「…ぁ……」


 自分の中でぷつんと音がした


 怒り、憎悪で忘れさせていたモノが今一気に我が身に何とも言い知れぬ奔流となって押し寄せてきた


 これが絶望。ショックのあまり前が見えなくなった。


 片目が潰れているがそれとは違う形で目が見えなくなる


 「……これでここでの仕事も完了だ。」


 そう言い奴は歩いてゆく


 俺はただ倒れ奴の足音だけが鳴り


 静寂が訪れた







 「……ぃ……」


 




 「ぉ…ね…ぃ」





 聞こえる



 「おねがい…」





 「お願い、生きて」


 カノジョの声だ


 「死なないで、愛しき人の子よ」


 死なないでと言われても俺もうボロボロだよ


 「わかってる、でも…それでも生きて…」


 無茶言うなぁ。腕も目もないのにどうやって?


 「私がなんとかするわ…」


 なんとかできるの?


 「えぇ、私は名も無き精霊。器なき力。私が貴方と一つになれば腕や目の代わりくらいには成れます」


 キミが俺と一つに?


 「はい、名も無き私は未だその存在をこの星に確立できていません」


 存在の確立?


 「人は、いえ自我のある生物には全て名前…個を成立させるための祝福があります。そしてその名を初めて自分以外の者に呼んでもらうことで星に、世界に自分という個を認識させます」


 認識…世界……


 「しかし私は未だ名がありません。その為存在が少々不安定なのです」

 

 なんで?


 「…わかりません。精霊は星の祝福。生まれた時から星に名を、意味を、与えられるのですがどうしてか私にはありませんでした」


 

  ……名前、存在の確立……腕や目の代わり…?


 「私にあなたと同じ名前を付けるのです。そうすれば私は貴方と同じ存在だと世界に認識させるのです」


 でも、それってキミは…


 「えぇ私という存在は無くなり、貴方に統合される」


 それはダメだ


 「ですが、これしか方法がありません。こうしなければお互い死ぬだけです」


 …俺がキミにこの体を譲るのは?


 「できません。その肉体は貴方だけの物。私が入ってもあなたの魂に弾かれます」


 なら、死んだあと…魂が無くなってからは?


 「それもできません。今この瞬間、私たちは生と死の境界にいますが私たち2人が互いに干渉しあってなんとかこの場に留まっているのです。


 もし片方がこの場からいなくなった瞬間もう片方も一緒に死に引きずり込まれます」


 ………。


 「もう、これしかないのです」


 わ…か……った


 カノジョはコクリと頷くと手を俺の胸に当ててきた


 「では私に貴方の名前を…」


 ――与えてください。


 





 「―――――っぷはぁ!!」


 まるで長い間息を止めていたかのような苦しさのなか目が覚める


 まず見えたのはカノジョの瞳と同じように透き通った青い空


 辺りを見回すとボロボロになったよく知っている場所


 そこにはまばらに人が倒れている


 自然と涙がでる。みんなが死んでしまったのに自分は生き残ってしまった虚無感と絶望感に。


 だけど立ち止まってはいられない。


 カノジョにもらったこの命、1秒も無駄になんかしない


 壊された家から使えそうな物を探し準備する


 「……みんなの敵を取ってくるよ、皆とカノジョからもらった目と腕に誓って」


 そうして1人の若者は全ての元凶たる者を探しに旅に出る



 これは精霊に救われた者の復讐と生きる意味を探す旅の物語

つづくかも?

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