悪役令嬢様、把握
3話 リリス視点
しばらく部屋で休んでいるように、と言われたので侍女を下がらせ、わたくしは、ベッドに腰掛けた。
「ねぇ、精霊たち。わたくしの生きるこの世界について教えて」
精霊たちは、嬉しそうにこの世界について教えてくれた。
まず、わたくしたちの住む、アヴァロン王国は、領土的にはそれほど大きくないが、海と森に面し、資源が豊かである。そしてこの世界は、わたくしも先程経験したように、悪魔や精霊、他にも怪物や魔族なども存在し、とくに怪物は、国の外に出るとたくさんいるのだという。
「国境は?」
国と国の間は随分と遠く、その間には多くの怪物たちが存在し、ギルドに依頼をして、護衛をしてもらいながら、移動をするか、維持費や設置費に多大なお金のかかる転移の魔法陣を設置して国を行き来するため、国同士の戦争や内戦は少ないのだという。
「国の外と内はどうやって区別をつけているの?」
国営の魔導師が常駐し、結界を張っているとだいう。
「乙女ゲーとの相違はなし....確定ね。大体のことはわかったわ。ありがとう...なら次にわたくしについてもう少し整理をしましょう」
わたくしは、リリス・ノーブル。公爵家の長女で、今年で6歳になる。
‘名もなき魔導書’との契約により、前世を視たことで理解力は成人並と思ってよさそうだ。前世の女は、それなりの頭脳があったようだ。頭の悪そうなことを叫んでいるシーンもあったが。前世と今世の人格の統合は起こらず、記憶ではなく記録がわたくしの脳に刻みつけられただけで、わたくしはわたくしのままであることに成功した。まぁ、多少性格に影響する部分があることは否定しない。
『聖なる君へ~星降る丘で捧げる恋の唄~』に登場するリリス・ノーブルとわたくしは本質もそう変わらない。
高慢にして、傲慢。世界はすべて自分のものだと思っている。しかし、彼女の美貌の前に、それすら魅力に見える美しき姫。
そんなキャラクター紹介であったように思う。差異があるとすれば、わたくしはどうやったら他人がマリオネットになるか、恐怖や脅迫以外の方法を知っていることだろう。
『聖なる君へ~星降る丘で捧げる恋の唄〜』略して『聖唄』では、アナザーストーリーが存在する。そこでは悪役令嬢、つまりリリス・ノーブルが主人公でヒロインを物理的に社会的に抹殺しつつ、ハッピーエンドを目指す物語である。前世の女は随分とこちらのストーリーにのめり込んでいたようである。わたくしは、そのアナザーストーリーバージョンよりの性格である、と思われる。メインストーリーでは、わたくしは処刑、国外追放、暗殺、娼婦落ち、拷問、幽閉、色々とエンドがあったけれど、どれも生ぬるいわ。ヒロイン(おもちゃ)には、もっと楽しい未来を用意しましょう。
「わたくし、アナザーストーリーエンド似の未来を目指して頑張りますわ」
精霊たちは、楽しそうに嬉しそうにわたくしのまわりを飛び回っている。