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ヒロイン、困惑

 17話

ヒロインちゃん視点



 まだ聖女の住む離宮は、用意ができていないから、ということで王宮の客室へと通された。なんだか、上品ではあるけど、質素な印象の部屋だ。2人の侍女は、控えているだけで、話しかけてはこない。


「うーん、なんだか疲れちゃったなぁ。何か甘い物と紅茶を用意してくれる?」


 無言で準備を始める2人。家では、私つきの侍女なんていなかったから、とても楽しい。私の言うこと1つで、全部こなしてくれる。


「んー!さっすが王室御用達!紅茶もクッキーもおいしい!」


 これから毎日これが食べれるのか....。幸せだなぁ。なんだか、扉の外がうるさいな。どうしたんだろう。


「お食事中、失礼いたします。バージル王太子殿下がお見えです。お通ししますか?」

「えっと、え...?うん、お願い」


 え...突然バージルが来るってどういうこと?


「突然の訪問を許してくれ、聖女よ」

「いえ、大丈夫です...?」


 彼は、私の前に膝をついて、まるで一国のお姫様を相手にしているかのように、手の甲にキスをした。こんなことされたら、周りのザワめきなんて聞こえなくなるに決まってる!


「ああ、思っていた以上の愛らしさだ。もう一度、聖女の名を、俺だけに教えてくれないか...?」


 蕩けるような笑顔で、甘やかな声で囁かれる。好感度MAX時のエンディング直前と同じセリフを!


「め、メアリー・カーティスです」

「メアリー...俺の女神に、相応しい名だ」


 ああ、この腕に抱きしめられて、むちゃくちゃにキスされたい。


「なぁ、もう我慢できないんだ。いいか?」


 キツく抱きしめられる。そして、掠れた声で囁かれ、艶めかしくつぅっと唇をなぞられる。


「...ぁっ....」


 そして、彼と私の唇が重な...


「そこまでだよ。バージル第1王子、拘束させてもらおう。連れて行け」


 らなかった。どうして邪魔をするの!すごいイイところだったのに!王子から!キス!されたい!マーリンのバカ!


「離せ、マーリン!この無礼者!俺を誰だと心得ている!メアリーと俺を引き離そうと言うのか!」

「無礼者は、どちらかな。未婚の女性に強いろうとしていただろう?しかも、相手は聖女サマだよ?事の重大さはわかってる?」

「だが、ここで彼女を手に入れなければ、メリルとアルフレッドが必ず出しゃばる!俺はその前になんとしででも、メアリーがほしい!」

「....はぁ....いい、連れて行け」


 バージルは、マーリンに魔力抑制装置(ゲーム内でも何度かみたことある)をつけられて、騎士?の人に連れられて行かれてしまった。


「お願い、私は傷ついてなんかないから、バージルに酷いことしないで!」

「貴方の言い分は、関係ないよ。さぁ、陛下がお呼びだ。行くよ」


 氷よりも冷たさそうなマーリンの眼差しは怖かったけれど、バージルに初対面から求められてあまりの嬉しさに私は舞い上がっていた。


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