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お兄様、苦悩

初のお兄様視点です。

 14話

 リリスの兄、アルフレッド視点です。





 馬車の窓の外を眺めるふりをして、硝子に映った美しき女神を見ていた。


「兄様、緊張していらっしゃるの?」

「緊張は、してるよ。少しだけね」


 そう、君とこの2人きりの空間に緊張しているんだ。そう心のなかで呟いた。


「もしかして、わたくしが聖女になることに反対で、わたくしに怒っているの?」


 女神は悲しそう眉をさげ、瞳を潤ませた。


「ああ、違うんだよ。リリス、ごめんね。僕は君が聖女になって遠い存在になるんじゃないかと不安なんだ」

「そんなことないわ。わたくし、兄様のことが大好きですもの」


 飛び込んできた薔薇に、ドキリと胸が高鳴る。壊さないように、柔らかく抱き締めればクスクスと甘やかな笑い声が聞こえる。


「兄様とこうして2人でお話できるのは、久しぶりね。兄様もメリルも、バージル兄様ばかり構うんですもの」

「ごめんね。どうにもバージル王太子(アイツ)が仕事を押し付けてくるから。今度2人でどこか行こう」

「本当に?約束よ、兄様」


 ギュッと、首元に抱きつかれ、いよいよ僕の理性がはち切れそうになる。甘美で、優美な誘惑の香りが僕を包む。


「リリス、レディがそんなことしては、いけないよ」

「わたくしは、レディである前にアルフレッド兄様の妹よ。たまには、わたくしだけのものでいてほしいわ」


 僕も君が、僕だけのものになってくれたら、なんて何万回考えただろう。君が、僕の可愛くて、愛しい女神が、僕のものになんてなるはずもないのに。


「兄様?.......アルフレッド」


 囁かれた自分の名に、理性が飛んだ。気づいたら、彼女は僕に組み敷かれていた。


「ぁっ...痛いわ、兄様。ごめんなさい、もうお名前で呼んだりしないわ」


 その唇から漏れた小さな声に、羞恥か恐怖か、薄紅色に染まった頬に、潤んだ瞳に、彼女のすべてに煽られる。ああ、その薄く開いたさくらんぼ色の唇に、今すぐ噛み付きたい。


「ダメだよ、リリス。男に、そんなことしたら、どんなことされたって、文句言えないよ?」

「兄様にしかしないわ」

「....僕で何がしたいんだい、僕の可愛い女神様は」

「兄様、最近元気がないようでいらっしゃったから、母様に相談しましたの。そうしたら、2人きりになって可愛く甘えれば、兄様が喜ぶと仰っていらしたのよ....失敗してしまったけれど」


 プクッと頬をふくらませリリスは、本当に愛らしい。母様、確信犯だろうな。僕、父様に抹殺されるかもしれない。


「いや、とても元気が出たよ。ありがとう、可愛い女神様」


 ちゅっとリリスの甘やかな唇にキスを落としてしまった。ああ、やっぱり僕死んだな。このとき、リリスがどんな表情をしていたか、僕が知る術はなかった。

お兄様大暴走でした。

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