悪役令嬢様、運命
13話
「順調かしら?」
「もちろんだよ、姫様。総ては君の望み通りに」
エーデルワイスの名のごとく可憐な精霊王は、今日も楽しそうに笑っている。
「今代の聖女様がお隠れになるまで、あと少し」
「そうしたら、姫様は王宮暮らしだね。楽しみだよ」
「エーデルワイスと毎日顔を突き合わせることになるのね。なんだか、それは憂鬱だわ」
「僕と毎日会うの嫌なの!?ひどいよ!」
「だってうるさいんですもの」
深夜、傍に控えているのはラミエルのみ。しかし、彼の表情は暗闇で、見えない。
「ねぇ、ラミ。わたくしが聖女に選ばれて、国を巡るときに、貴方はついてきてくれるかしら?」
「どこまでもお供いたします」
「ラミもエーデルワイスもいる旅なら、きっと愉快な旅になるわ」
「なぁんだ。やっぱり僕がいた方が愉快になるんじゃないか」
「愉快になるのは確かね....そろそろ眠るわ。だって今日でしょう?」
「そう、今日だよ」
「エーデルワイス様、リリス様はお眠りになります。ご退出を」
「わかってるよ。じゃあ、よい夢を」
ちゅっと音を立てて、かの精霊王はわたくしの額に口付けを落とす。そして、ここには何もいなかったかのように姿を消した。
「ふふ、ラミ。傍へ」
「はい.....っリリス様!?」
「だって、あんなに羨ましそうな顔をしているんですもの。お前の額にキスの1つも落としたくなるわ」
暗闇に溶けていた表情は、瞬く間に赤色に染め上げられた。
「.......おやすみなさいませ」
彼は、跪いて、わたくしのつま先にキスをした。
今日のノーブル公爵家は、慌ただしい。何故なら、わたくしが聖女に選ばれたからだ。
「リリス、本当にいいのかい。私の可愛い天使が望むなら、この話は、まだ潰せる」
「毎日王太子と顔を突き合わせるなんて、僕の可愛い女神が減る!!!!!今から、王太子の目ん玉すり潰してくる」
「2人とも、いい加減になさい。次代の聖女は2人が選ばれました。それが何を意味するかわかるわね?」
そう次代の聖女は2人、選ばれたのだ。異例ではない。稀にある話だ。そして、ちょうど年頃の婚約者のいない王太子バージル・アヴァロンの存在が、父様と兄様をここまで荒れさせている。そう、優秀な方が、ほぼ確定で彼の正妃となるのだ。そして父様と兄様は、わたくしの方が優秀であることを前提にここまで荒れている。
「大丈夫ですわ。だって、わたくしにとっても、バージル兄様にとっても、お互いに兄妹ような感覚ですもの。わたくしが、王太子妃に。なんて有り得ませんわ。メリルもいることですし」
「いや、でも、私の天使可愛いからなぁ」
「お父様、お兄様。わたくしは、絶対に王妃にはなりたくありませんの」
「「任せろ」」
珍しく兄様と父様は全会一致である。
「大丈夫よ、リリスちゃん。貴方が望むように事は運ばせるわ」
うん、母様。どうやって???.....国王陛下に置かれましては、どうか母様とわたくしの意に反する希望をしないようにした方がよさそうだわ。
「ありがとう、母様。それでは、わたくし、登城いたしますわ」
「僕も一緒に行くよ」
「ありがとう、兄様」
ごく自然な動作で兄様にエスコートされ、わたくしたちは家を後にした。




