悪役令嬢様、日常。
お久しぶりでございます。いまだにこの連載を読んでくださる方々、今回初めてお目にかけていただいた方々に感謝を。
11話
わたくし、リリス・ノーブルは齢14となり、より美しく、より可憐に、より儚げに成長した、ともっぱら噂である。
「ごきげんよう、メリル」
「こんにちは、俺だけのお姫様。今日も君の美しさに感謝を」
氷の貴公子、と呼ばれるわたくしの婚約者こと、メリル・ネイサンは、海面から反射した眩い光のごとき美しさを誇っている。彼は、昔の記憶から人間不信を発動し、信頼した人間以外には笑わない。とくに、初対面の婦女子になんと冷たいことか。それでも、とてもとてもモテるが。わたくしが彼の隣に立てば、全員黙る様も、そこそこに愉しいので、お父様にもお兄様にもメリルにも、婦女子たちを注意しないように釘を刺してある。
「わたくしだけの王子様、どうぞこちらへ。今日はとっておきの紅茶をご用意させていただいたわ」
お茶会に並ぶのは、みずみずしい果物をたっぷりと使ったフルーツタルトと、華やかな香りの琥珀色の紅茶だ。
「随分と会えなくて寂しかった。リリィは、最近何をしていたの?」
「わたくしも寂しい想いで胸がいっぱいでしたわ。それに、メリルが魔獣の討伐遠征に行かれると聞いたときは、もう胸が張り裂けそうでしたのよ。毎日貴方を想って、お祈りを捧げていましたわ」
「.....だから、異常なまでに魔獣が弱体化していたのか.....ありがとう、リリィ。貴方のおかげでずいぶんと助かった」
彼の笑顔に、わたくしは少しだけ得意気に笑う。
「リリスお嬢様、お茶のお代わりはいかがですか?」
「あら、ありがとう。今日の紅茶もとっても美味しいわ、ハニー」
「もったいないお言葉です。メリル様もいかがでしょうか」
「ああ、いただく」
今日は、愛すべき口うるさい従者もリリスオタクと化した兄様もご不在で、よい日である。2人は、王太子に絶賛貸出中だ。側近であり悪友である兄様は、もちろん毎日登城する。今日は王太子の近衛騎士であるメリルがお休みをいただいているため、ラミエルが2人の護衛件パシリとして駆り出されている。帰ってきたら、2人をうんと褒めてあげましょう。じゃないと、明日登城しないとか言い出しそうだし。




