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蛙、死す。そして転生。
さわさわと蒸した熱を裂くように降り注ぐ小雨。
その中に鮮やかな緑色の両生類が...
そう、それが僕だ。
「雨が気持ちいいなぁ」
僕は蛙。ポピュラーでサブカル受けのいいアマガエルだ。
遅めの朝食がわりに羽虫を捕食する。
すると視界の端に美しく輝きを放つ虫が...
食べなくては!と思った僕は虫を追いかけた。
そのときだ。
目の前に車が迫っていたのは...
そしてそこから記憶がない。
あるのは人間のような手足と重たい鉄の服、それに回りに広がる緑。
...僕は死んだのか。
そう思っていると天から声がした。
『蛙、蛙よ...聞こえますか...』
「誰?ここはどこ?」
虹のように綺麗で滑らかな声が響く。
『あなたは選ばれたのです...この異世界に』
「異世界?」
当時無知な僕は知るよしもなかった...これから壮大で、残酷な冒険が始まることに...
『あなたはこれからこの世界を救わなければなりません』
「なんで僕なの?」
『ちょっとした手違いです』
天の声はこういった。思えば、確かに僕が選ばれるのはおかしい。
だって僕は蛙なのだから。