谷子と「ヒロイン勇者」
ここはドキ子の豪邸。
「ああ!? どうすればいいんだ!?」
ヒロイン勇者のメロメロが頭をかかえて、もがき苦しんでいる。
「メロメロが大きな声で叫ぶから、池の恋がビックリしちゃったじゃないですか。」
池の鯉を恋と思っている宇宙人のコイコイである。
「どうせ、ロクなことじゃないわよ。」
この冷たいクールビューティーがミレミレ。
「メロメロは、いったい何を悩んでいるの?」
これが、この家の主のドキドキ。
「実は、独立して3話1万5000字まで書けたのだが、その先のストーリーが思いつかないんだ! どうしよう!?」
これがヒロイン勇者の悩み事。独立して異世界ファンタジーとして、書き始めたのだが、結局は無名作者の得意分野ではないのだ。
「簡単よ! かわいいドキ子に任せなさい! 図書部のみんなに相談してあげよう。」
「自分では考えないのね・・・。」
「さすがドキドキ~♪」
「そこ! 褒めるとこじゃない!」
「頼むぞ! リーダー!」
「かわいいドキ子にお任せあれ~♪」
ということで、ヒロイン勇者の悩み事は、帰渋高校の図書部に持ち越されたのだった。ミックスしまくりの「帰渋」ならではの、いつもの展開である。
ここは帰渋高校の図書室。
「なぜ俺さまが考えなくてはいけない? 」
「部長、ウザ過ぎます。」
「どうして、あんたは厄介事ばかり持ってくるの?」
図書部長、谷子、栞は、ドキ子からヒロイン勇者の悩み事を聞いて、迷惑そうに卑屈な表情になりました。
「そんなことを言わないで!? かわいいドキ子が何とかするって言ったの!? チーム・ドキドキのリーダーとしてのメンツがあるの!? かわいいドキ子を助けると思って、みんなでアイデアを出して!?」
ドキ子は、自分のことばかりでした。いつも、そんな態度だから、みんなから「できるだけ関わりたくない!」と思われていました。
「谷子ちゃん! ドキ子より可愛くない谷子ちゃんなら、かわいいドキ子の相談を考えてくれるわよね!?」
「うわあ!?」
ドキ子は、気弱で控え目な谷子を捕まえて、体をフリフリして脅迫します。谷子の目が回ったところで、ドキ子は勝利を確信します。
「さあ! 可愛くない谷子ちゃんは、かわいいドキ子を助けてくれるわ! 部長! 栞ちゃん! あなたたちもドキ子を助けさせてあげるわよ!」
「仕方がない。どうせ、いつもの展開だ。」
「ああ、大丈夫? 怪獣ちゃん?」
ドキ子の横暴でストーリーが進む。「帰渋」はなんて、都合のいい作品なんだ! と感動する。1話終わりだし、楽は楽なのだ。
「要するに「ヒロイン勇者」のストーリーを考えればいいのだろう?」
「学園祭でも、オリンピックでも何でも実装すればいいじゃない?」
「おねえちゃん、すごい。」
ヒロイン勇者をどうするか? 図書部長と谷子と栞の意見は出揃った。しかし、それにドキ子は納得しなかった。
「それじゃあ普通なのよ! もっと、こう、インパクトが欲しいわ!」
「全員勇者で、魔王も勇者で、勇者と仲良しで、魔王が犬小屋に住んでいる時点で、十分インパクトがあると思うのだが?」
「でも確かに勇者と魔王が仲良しだったら、何と戦えばいいんだろう?」
「ドキ子。」
「ナイスアイデアだ!」
「怪獣ちゃん、すごい!」
「エヘ~♪」
「なにか、ドキ子的に違うんだけど・・・。」
ヒロイン勇者の敵は、ドキ子で決まり! しかし「帰渋」でもないし、作品マタギのキャラクターは書籍化を念頭に置くと、使用することはできない。その世界の、その世界のキャラクターが必要になる。
「新しい討伐目標を作ればいいんじゃないか?」
「そうよ、「夜空のお星さま~☆」なんて、ダイヤモンド姫が最大の敵よ!」
「うん。」
「世界征服を企む、新しい敵を作ればいいのね!?」
大まかな新案が出た。異世界ファンタジー、要するに、戦闘シーンが派手であれば、円盤は売れるのだ。そうしないと売れないので、アニメーション制作会社がアニメ制作をしてくれない。
「おお! 俺様がいいアイデアを思いついたぞ!」
「部長、ウザ過ぎます。」
「ヒロイン勇者は整形をしているとはいえ、人間だ。妹勇者も幼女ではあるが、人間だ。でも、魔王勇者はどうだ? 魔王は、人間ではない!」
「ドキ???」
図書部長は、ウザ過ぎても図書部長だった。実は、賢いのだ。カワイイだけで頭が悪いドキ子にはまったく理解できなかった。
「魔王勇者には悪いが、魔王勇者に人間離れした生活、街づくり、コンビニ経営でもしてもらって、それをヒロイン勇者と幼女勇者で、バカにして笑えばいいんじゃないか?」
「それいいわね! 実は私も、それを言おうとしていたのよ!」
ドキ子のアイデアは、ドキ子のモノ。みんなのアイデアは、ドキ子のモノなのだ。ヒロイン勇者のストーリーは、日常モノで犬小屋生活の魔王勇者が、人間世界に来て、勇者らしく平和的に世界を征服するとしておこう。
「ああ! よかった! これでドキ子から解放されるわ!」
「おねえちゃん、帰ろう~♪」
こうして図書部は、今日の部活動を終えた。
「メロメロ、待ってなさい! この世で1番かわいいドキ子が、グットアイデアを持って帰るわよ!」
ドキ子は、足早に家路を急いだ。
「アイデア考えたの俺なんだけど・・・。」
図書部長は、図書室に一人きり残された。隙間風が身に染みる図書部長だった。
ここはドキ子の豪邸。
「あなたも恋なの!?」
「キュル!?」
宇宙人の恋ちゃんがドキ子のペットパンダのドキパンと睨めっこしている。表情は真剣だ。
「いいわね、宇宙人って。悩み事が無くて。」
ミレディーは恋ちゃんを見て呆れている。
「本当だ。私のように美しく気高い勇者でも、今後の展開に悩んでいるというのに。」
ヒロイン勇者のメロは、身の振り方に困っていた。自分が主役の作品が続くのか、短編集送りになるのか、運命の瀬戸際なのだ。
「ただいま~♪」
「お邪魔します。」
そこにドキ子が帰って来た。キコキコも一緒だ。
「おお! ドキドキ! 帰って来たな!」
「キコちゃん、ドキ子なんかと一緒にいると、またお姉ちゃんに怒られるわよ。」
「お姉ちゃんなんかに負けません!」
「あ、そう・・・。」
アイデアが帰って来た! とメロメロは喜ぶ。キコキコの将来を心配するミレミレだった。
「慌てないで、メロメロ。みんな! かわいいドキ子に集合よ!」
ドキ子の号令に、ミレミレ、コイコイ、メロメロ、キコキコ、そして、ドキパンが集まってくる。
ん!? なぜドキパンだけ、パンパンじゃないのか? それは「歯科助手のみなみちゃん」で、みなみちゃんのペットのパンダの名前がパンパンで被ってしまうので、ドキ子のペットのパンダの名前は、ドキパンなのだ。
「それでは、帰渋高校の図書部のアイデアを発表します!」
ドキ子が図書部長のアイデアを自分の意見の様に言うと思われていた。
「これからの「ほんのおねえさん~♪」は、誕生石姫と月の騎士、または月の王子さまとの恋の物語を書いていくことに決まりました!」
「おお!」
はあ!? もし、ちゃんと読んでいる人がいれば「何だこの展開は?」と思うはず。ヒロイン勇者のストーリーの発表ではなく、「起始部」の「ほんのおねえさん~♪」のストーリーの発表であった。
「ちょっと待て!? 私のストーリの発表じゃないのか!?」
「帰り道、キコキコとお姫様と王子様の話をしていたら、誕生石姫と月の騎士が放置プレイだったと気づいたの。そこでアイデアがドキドキっとひらめいたのよ!」
「はい! ドキ子さんは可愛いだけでなく、天才です!」
「キコキコは、よくドキ子のことが分かっているわ~♪」
「はい! ドキ子さんは、キコの憧れの先輩です!」
素晴らしい師弟愛。確かにアイデアとは、突然、ネ申が降臨されるものである。
「安心しなさい。メロメロのストーリーも考えてあるわよ。」
「おお! さすが、リーダー!」
しかし、ドキ子は只者ではなかった。
「まず第1案が、かわいいドキ子のドキドキ勇者にタイトルを変える!」
「ええ!?」
ドキ子のヒロイン勇者の世界の乗っ取りである。
「こら、ドキ子。仲間の主演作を奪うな。」
「痛い!? ミレミレ、暴力は反対よ!?」
ドキ子の横暴を、ミレディーが止めに入る。
「では第2案、かわいいドキ子がドキドキ勇者になって、ヒロイン勇者の世界に遊びに行く!」
「断る!」
即答である。ドキ子など個性の強いキャラクターがきたら、あっという間に異世界ファンタジーの世界観が破壊されてしまうのだ。まさに、魔王ドキ子。
「次、第3案、かわいいドキ子が・・・。」
「却下!」
「まだ何も言ってないじゃない!?」
「感じるんだ! 勇者としての感が! これ以上、ドキ子をしゃべらすなと!」
正解。ヒロイン勇者の感は鋭かった。さすが、レベル99である。
「なによ・・・図書部のみんなで考えた、ヒロイン勇者のパーティに魔王勇者を加えて、魔王勇者に人間界の生活を送ってもらおうって、言おうとしただけだもん。」
ドキ子は、落ち込んでボソボソとつぶやく。
「おお! それだ! 魔王勇者が人間界で暮らすギャップ! それだ!」
「すごい! ドキドキ~♪」
「たまには役に立つじゃない。」
「さすが、ドキ子さん!」
「キュルキュル~♪」
珍しくチーム・ドキ子の面々がドキ子を褒め称える。パンダまで拍手をして、喜んでいる。ドキ子は普段、仲間にどう思われているんだろう。
「見たか! これが可愛いドキ子さまの実力よ!」
ドキ子の立ち直りは早かった。そうでなければ、ドキ子のようなサンドバック・ガールは生きてはいけないだろう。
「ありがとう、ドキドキ。これで「ヒロイン勇者」の続きが書ける。」
「隊長として、当然のことをしたまでよ!」
ドキ子と愉快な仲間たちは、微妙な・・・絶妙なチームワークで、毎日仲良く暮らしているのだった。
「今日は気分がいいわ! お庭でバーベキューパーティーにするわよ!」
「おお!」
古代文明発掘家の両親のおかげで、大豪邸のお嬢さま設定のドキ子。しかし、両親は古墳だ、ピラミッドだ、風穴だと大冒険に忙しいので、寂しい1人っ子だった。
「肉に野菜をジャンジャン持ってきて!」
「コーラもよろしく!」
「悩み事も解決したし、思いっきり食うぞ!」
「恋も焼いたら、焼き餅になるのかな?」
「私も食べていいんですか!?」
「キュル。」
まだ6人だが、ドキ子は楽しく生きているのだった。変なメンバーに囲まれて。炎に汗をかきながら、肉や野菜を率先して焼いて友達につくす、ドキ子の意外な一面である。
「さあ! 肉が焼けたわよ! いっぱい食べてね!」
「おお!」
「キュル!」
ドキ子もドキ子で、普段わがままで好き勝手しているサイコパス女なので、みんなに迷惑をかけているので、罪滅ぼしの気持ちもあるのかもしれない。
「恋ちゃん、鯉を焼いてみる?」
「いいんですか!?」
「やめろ!!!」
やはり、ドキ子はドキ子なので、反省や自制の気持ちはなかった。「おいしい!」「おいしい!」と楽しくバーベキューパーティーをしていると、1匹の黒ウサギがやって来た。
「ぴょんぴょん!?」
「キコちゃん、そろそろ帰らないと、お姉さまに怒られますよ。」
黒ウサギのぴょんぴょんは、間家の使い魔である。妹のキコちゃんが、姉のリコに怒られないように気を利かせて迎えに来たのだった。
「ウサギの丸焼きね!」
「やめろ!!!」
「ぴょん・・・。」
やはりマリコさまの言うように友達は選んだ方がいいと思う、黒ウサギだった。
「いやだ。まだ帰りたくない。」
「そんなことを言われると、私がお姉さまに叱られます。」
「・・・。」
中学生のキコちゃんは、反抗期の真っただ中であった。お姉ちゃんの思い通りに生きるのが嫌な、難しいお年頃であった。
「ちょっと待て! なんだ!? この展開は!? 魔王のお姉ちゃんに連れていかれそうになるお姫さまが、メイドのウサギを救うために、自らを犠牲にして、魔王のお城に帰る。そこをヒロイン勇者が魔王の城に乗り込んで、お姫さまを救い出す! まさに、これこそ、異世界ファンタジーのストーリーじゃないか!」
ヒロイン勇者は、やっと異世界ファンタジーのストーリーに出会えて、感動に興奮している。
「これだ! こおいうのが、欲しかったんだ!」
メロは、鼻から鼻時が出るほどエキサイトした。地が出ていることには気づいていない。困ったヒロイン勇者である。
「今までのドキ子の考えたストーリーは何だったの?」
「まあ、いいじゃない。いつもの展開でしょ?」
「恋が肉を食べてます~♪」
「ぴょんぴょんが怒られたらかわいそうだから、私、帰りますね。」
ドキ子は、今日の疲れがドッと出て、憂鬱な気持ちになった。ミレディーは、いつも通りの展開に慣れてきた。恋ちゃんは、池の鯉が早く大きく成長するように、お肉を食べさしていた。キコちゃんは、まだまだ純粋な女の子なので、お土産に焼いたニンジンをもらって、黒ウサギを抱きかかえながら帰って行く。
「さあ! お腹も大きくなったし、今度は露天風呂に行くわよ!」
「おお!」
いつも通り入浴シーンは、18禁になるので割愛されて、この話は終わっていく。
つづく。




