谷子の「日常」
ここまで、構想と本の世界を2冊の異世界に行って、冒険してきた谷子たち。次の展開を考える。「毎回、本の世界に行く必要はないんじゃない?」ということで、元々、谷子の現実世界だけを書いてきた「渋井谷子の奇跡」なので、記憶をたどりながら、谷子たちの日常を書いてみよう。
ここは渋谷。なぜかって? 帰渋高校は、渋谷にあるから。
「うわあ!?」
「危ない!?」
渋谷の町中を歩いていて、谷子が観光客の外国人にぶつかりそうになる。それをお姉ちゃんの栞ちゃんが谷子の手を引っ張って守る。
「お姉ちゃん、ありがとう~♪」
「かわいい妹の怪獣ちゃん、大丈夫? ケガはない?」
「うん~♪」
渋谷って、外国人やヤンキーにギャルが多くて、ゴミゴミしてるのね? 今まで谷子の瞳の中に住んできた栞ちゃん。人間の姿になって、歩く渋谷は危険な町に見えた。
「ただいま~♪」
谷子の住まいは、神山町か、松濤か、道玄坂辺りにしておこう。そう、谷子は、渋谷生まれ、渋谷育ちの女の子だ。
「誰もいないね。」
「お父さんとお母さんは、まだアルバイトに行っているのよ。」
谷子の両親は、イマドキ普通のアルバイト両親。父、渋井谷男は、帰渋郵便局でハガキやお届け物を宅配するアルバイトをしている。母、谷代は、帰渋区役所で、フロアの案内係のアルバイトをしている。渋谷でも正社員の仕事は無いのだ。
「大家さんのおばあちゃんの所へ行きましょう。」
「わ~い~♪ ドリバリ~♪」
なぜ谷子が渋谷に住んでいられるかというと、大家さんのおばあちゃんが、谷子を自分の娘のように、幼少期から可愛がってくれて、家賃を払える金額にしてくれているからだ。
「あれ? おばあちゃんいないね。」
「病院にでも行っているのかな?」
谷子たちは、築50年のマンションの3階の両親の住む部屋から、最上階の10階の大家さんのおばあちゃんの部屋にやって来た。しかし、玄関のベルを鳴らしても、大家さんのおばあちゃんは出てこなかった。
「部屋に帰ろうか?」
「うん。」
谷子は10階のエレベーターの横にある、上へと続く階段を上っていく。階段の先には屋根裏の部屋がヒッソリとある。そこが谷子の自分の部屋である。ここで栞ちゃんとも出会ったのだ。
「お姉ちゃん、何して遊ぼうか?」
「これどう! これ!」
「なに?」
栞ちゃんは、谷子に1枚のビラを渡した。
「銀河系最強の魔法使い、エロメス降臨祭、2020?」
「どう! いい感じでしょう!」
栞ちゃんは、諦めていなかった。現在、2017年。アニメーションの制作の現場のスケジュールを抑えて作成すれば、仮に2018年に大ヒットすれば、まだ2年はある。アニメ化も、映画化も、まだ間に合う! 諦めなければ、夢は叶う!
ここは、渋谷のスクランブル交差点付近の歩道。
「エロメスさま、降臨祭の開催に署名してください!」
「はあ、エロメスさまも人使いが荒いな。」
この美少年たちは、栞ちゃんこと、エロメスの使い魔、ペット、家族の犬のバーキンと猫のケーリーである。エロメスの魔法で擬人化され、渋谷のスクランブル交差点で、エロメス降臨祭を行うために、署名活動をさせられているのである。
「エロメスさま、早く諦めてくれないかな?」
「私たち2人の方がアイドル事務所からスカウトされたわ。」
「エロメスさまに言ったら、キレるから黙っておこう。」
「命の方が大切だもんね。」
現実問題としては、資金のある大手企業と警察署の道路使用許可がいるだろう。「渋井谷子の奇跡」が30万字。続編の「帰渋」を書き続ければ、十分な文字数はあるので、書籍化ないし、アニメ化が決まれば、逆転勝利なのだ~♪
再び、谷子たちのいる屋根裏の部屋。
「本を読むぞ~♪」
谷子は、内気で優しく純粋な女の子である。本が好きすぎて、自信の成長と共に、「ほんのおねえさん~♪」になるお話であった。まさに「渋井谷子の奇跡」である。単に書籍化のために本が売れるストーリーを考えたわけではない。
「はあ~。」
谷子は本を読む時は、集中して一気に読む。谷子が読む本は売れ、谷子が紹介した本も売れ、谷子がポップを書いた本も売れる。まさに奇跡のストーリーテラー、渋井谷子なのである。
「必殺! 奥義! 速読!」
谷子は、本好きの女の子である。今までに帰渋図書館に通いまくり、1億冊の全ての本を読んできた。そして習得した速読。谷子の速読は、進化を遂げ音速読になり、神の領域である、神速読にまで成長したのだ。本の神さまが谷子に宿っているのも納得のできる説明だ。
「読書、最高(⋈◍>◡<◍)。✧♡」
谷子は、一瞬で本を読み終わった。本を読んでいる時の谷子の体から磁気嵐のようなオーラがサイクロンのよう渦を巻き、誰も近づくことも、話しかけることもできないくらい、谷子は大好きな本を読むために集中している。大好きな本を読み終わった谷子は、上機嫌で笑っている。
「お姉ちゃん、何を悩んでいるの?」
「ん? 次のステージの演出をどうしようかな~っと考えているの。」
お姉ちゃんの栞ちゃんの趣味は、特殊演出である。元が魔法使いなので魔法を使った、大好きな怪獣ちゃんのために次のステージの演出を考えている。昔は、この作業を谷子の瞳の中で行っていたのだ。
「怪獣ちゃん、前髪をあげて。」
「うん。」
「かわいい~♪」
「お姉ちゃんも、かわいいよ~♪」
「ありがとう~♪」
素晴らしき姉妹愛。魔法で栞ちゃんは、全員の記憶をいじって、この「帰渋」から、谷子の双子のお姉ちゃんになった。ちなみに、なぜ栞ちゃんが谷子を「怪獣ちゃん~♪」と呼んでいるかというと、初めて出会った時、谷子の寝返りの素顔を見て、怪獣と間違えるぐらい、怖かったからだ。それ以来、栞ちゃんは谷子のことを「怪獣ちゃん~♪」と呼んでいる。
「ほんのおねえさんの仕事も、次の収録までないし、どうしよう?」
「スクランブル交差点の素敵なレンタルショップに行ってバイトでもする?」
「いいけど、あそこの店長。私のかわいい妹の怪獣ちゃんを「渋谷子」だなんて、気軽に呼ぶのが許せない!」
谷子は、渋谷のスクランブル交差点の素敵なレンタルショップでアルバイトをしている。屋根裏部屋の自分の部屋の家賃を払うためである。本好きの谷子は、本のコーナーで、姉の栞と一緒に働いている。谷子みたいな、前髪長過ぎガールを雇ってくれる店長さんは、いい人だ~♪
「ということで、アルバイトをして、お金を稼いでくれるお父さんとお母さんのために、夕ご飯を作ってあげましょう~♪」
「お姉ちゃん、やさしい~♪」
「レッツ・ゴー!」
「わ~い~♪」
素晴らしき姉妹愛。谷子たちは、3階の両親の部屋に行き、両親たちのためにご飯を作ることにしました。ちなみに栞ちゃんは、元々は「通行人の女の子B」だったので、お父さんとお母さんのいる家族生活を楽しんでいる。もちろん、かわいい妹の怪獣ちゃんもね(⋈◍>◡<◍)。✧♡
「ああ! 大家さんのおばあちゃん!」
「谷子ちゃん、栞ちゃん、こんにちわ!」
「おばあちゃん、どこ行ってたの? 心配したんだよ!」
「え? ごめんごめん。近くのオシャレな百貨店の本店に行って、オシャレなバックとスカーフを買っていたんだよ~♪」
「すごい! おばあちゃんお金持ち~♪」
ちなみに大家さんのおばあちゃんと谷子に血のつながりはない。谷子の両親がアルバイトで忙しい時に、幼少期の谷子を預かってくれたのが、大家さんのおばあちゃんである。趣味は、ウインドウショッピングと読書。マンションの最上階は、たくさんの本を並べて置く、書庫の部屋まであるのだ。確か名前は、松、濤子。
「あ、あ、あれは!? オシャレなブランドのスカーフ!?」
栞ちゃんは、元々、異世界ファンタジーのオシャレなブランドショップの前に立っていた「通行人の女の子B」である。そのお店の名前から、魔法使いエロメスというキャラクターに進化した。
「1度でいいから、あのオシャレなスカーフを首に巻いてみたい!」
栞ちゃんが、キャラクターになれたのも、物欲のおかげである。そして、その憧れのスカーフを、大家さんのおばあちゃんは何十枚、何百枚と持っているのだ。栞ちゃんからすると、大家さんのおばあちゃんは憧れの先輩なのだ。
「谷子ちゃん、栞ちゃん、お腹空いたでしょう? デリバリーしましょう。」
「やった! ドリバリー~♪」
「夕飯の準備は、中止!」
「お母さんたちの分も注文して、お土産にするといいよ。」
「おばあちゃん、ありがとう~♪」
ハハハハハ! っと、楽しい会話をする。ちなみに大家さんのおばあちゃんの家賃収入を推測すると、年収は、1億円を超えている。谷子たちは、大家さんのおばあちゃんの部屋に入って行った。
「さあ、なにをデリバリーしようかな?」
「フカヒレに、ツバメの巣に、北京ダック~♪」
「怪獣ちゃんたら、食いしん坊ね。」
「そうね。中華にしましょう!」
「わ~い~♪ 中華のドリバリー~♪」
こうして、デリバリーは中華に決まった。谷子の家族の生活は苦しいので、大家さんのおばあちゃんに甘えられる時は、とことん甘える谷子であった。
「電話しておくから、2人とも部屋で大人しく待っててね。」
「は~い~♪」
「は~い~♪」
谷子と栞は、中華のデリバリーが届くまで部屋で待っておくことにした。
「わ~い~♪」
谷子は、書庫に行き、大好きな本に囲まれている。谷子の目は輝いていた。まるでイケメンや宝石を見るような目で、本を見つめている。おっとよだれが出そうだ。
「あれ? 「夜空のお星さま~☆」の新刊が無い?」
作者め! 執筆をサボってるな! と本に対する執着が、すごい谷子であった。他の本を読んで中華が届くのを待つことにした。
「わ~い~♪」
一方、栞は、ウォークインクローゼットに行き、大好きなスカーフと戯れている。栞の目はとろけていた。まるでプリンやゼリーのようにトロトロにスカーフと遊んでいるのである。
「これも似合う~♪ あっちのもいいな~♪」
これで栞ちゃんの首に巻いているスカーフのデザインが変わっても、大家さんのおばあちゃんのスカーフを借りたとすれば、いくらでも種類を変えることができる。
「みんな! 中華が届いたわよ!」
ピンポーン! っと玄関ベルが鳴り、中華料理のフルコースが届いた。もちろん、お代は大家さんのおばあちゃんのおごりである。
「は~い~♪」
谷子と栞は、部屋から駆け足でやって来る。それぞれ自分の好きなことをして、楽しい待ち時間を過ごした。そろそろ、お腹も減ってくる。
「わ~い~♪ アヒルさんだ~♪」
「おいしそう~♪」
「さあ、いただきましょう。」
「いただきます!」
谷子たちは、和気藹々と中華料理を食べ始めた。
「アヒルさん、おいしい~♪」
「サメやツバメもおいしいのね~♪」
「いっぱい、お食べ。残しても私はたくさん食べられないからね。」
「は~い~♪」
谷子と栞に遠慮するという気持ちは、少しも無かった。姉妹愛よりも食い気の渋井姉妹だった。口の周りにタレやスープが付こうが気にしないで、次々と豪華料理を平らげていく。
「ごちそうさまでした~♪」
谷子たちは、手を合わせて礼儀正しく挨拶をする。テーブルの上には、一つも料理は残っていなかった。結局、両親へのお土産は、豚まんとシュウマイだけである。
「おいしかったね~♪」
「おばあちゃん、ありがとう~♪」
「またデリバリーしましょうね。」
「わ~い~♪ ドリバリー~♪」
「私たちで片づけるから、おばあちゃんはゆっくりしててね。」
「そうかい、ありがとうよ。」
谷子たちはキッチンでお皿を洗ったり、料理の容器をゴミ袋に入れて片づけていく。栞ちゃんが魔法を使えば、すぐに終わるのだが、人間の生活を楽しんでいるので、できる限り魔法は使わないようにしている。
「ありがとうございました。」
「おばあちゃん、またね。」
「ばいばい、谷子ちゃん、栞ちゃん。」
谷子たちは、お土産の豚まんとシュウマイを持って、3階の両親の部屋に向かい、大家さんのおばあちゃんの部屋を後にした。
「お姉ちゃん、おいしかったね~♪」
「怪獣ちゃんは、食いしん坊ね~♪」
「うん。」
エレベーターで移動中の谷子と栞は、おいしい中華調理を食べて、お腹いっぱいだった。そして、両親の部屋についた。
「おかえり、谷子、栞。」
「ただいま。」
「今、カレー作ってるから、ちょっと待ってね。」
「うん。」
お父さんとお母さんは、アルバイト仕事を終えて、自宅に帰って来ていた。アルバイトの良い所は、夕方には親が自宅に帰って来ているので、安心なのだ。
「これ、おばあちゃんから差し入れ。」
「豚まんとシュウマイ!? また、おまえたちだけ、デリバリーでおいしいものを食ったのか!?」
「サメとツバメとアヒルさん~♪」
「ぎゃあ!? 俺も1度は食べてみたいよ・・・。」
「じゃあ、あんたたちお腹いっぱいよね? カレー、どうしましょう?」
「食べます!」
カレーは、別腹である。あれだけ中華料理を食べたのに、谷子と栞は、カレーライスを食べれるのだ。もちろん、豚まんとシュウマイも自分の分は食べるのだ。
「わ~い~♪ カレー豚まん~♪ カレーシュウマイ~♪」
「おいしそう~♪ カレーの新しい食べ方だわ~♪」
谷子は、豚まんとシュウマイに、お母さんの作ってくれたカレーをかけた。カレーのかかった豚まんとシュウマイは、とてもジューシー、カレーのおいしそうな臭いが部屋中に広がっていた。
「おいしい~♪」
「豚まんとシュウマイにカレーを書けるのもありだわ~♪」
「おまえたち、食べ過ぎで、お腹が痛くなっても知らないぞ。」
「平気だよ~♪」
「おかわり!」
「はいはい。確かに食べてもらわないと、鍋が洗えませんからね。」
「食いしん坊シスターズだな。」
「キャハハハハ~♪」
谷子たちは、カレーと豚まんとシュウマイを家族で楽しく食べた。貧乏でも楽しく生きる、これが渋井家である。ちなみに、谷子は「ほんのおねえさん」の仕事をしているので、お給料をもらっている。谷子の稼ぎは、すでに両親の合算を超える!
「ごちそうさまでした~♪」
「お父さんとお母さんは、ゆっくりしててね。私と怪獣ちゃんで片づけるから。」
「ありがとう。」
「栞は気がきくいい子だよ。」
「私も手伝ってるよ!」
「谷子は、おまけだ。」
「ハッハハハハ~♪」
谷子と栞は、カレーのこびりついている鍋を必死に洗う。4人分の洗い物も2人で片づければ、すぐに片づけることができる。
「おやすみなさい。」
「ゴミは、ついでに捨てていくね。」
「ありがとう。気をつけて帰るんだよ。」
「おお、谷子、栞、おやすみ。」
ご飯を食べれば用は無いので、谷子と栞は、ゴミ袋をゴミステーションに捨てて、屋根裏部屋に帰って行く。
ここは屋根裏部屋。谷子と栞は、自分たちの部屋に戻ってきた。
「お姉ちゃん、たくさん食べたから、眠たくなってきた。」
「ふあ~、私も眠たくなってきたな。」
2人は、たくさん食べてお腹いっぱいで眠たくなってきたのだ。谷子と栞は、自然にベットに入り、そのまま眠りについた。
「zzz。」
「zzz。」
谷子と栞は、2人で抱きしめ合いながら、食後の睡眠をするのでした。独りぼっちではなく、2人で眠る姿は、どこか幸せそうに見えるのでした。
つづく。




