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EX ローナスの怪談 その1

またまたEXですが、今回は続く話でその1です。


そして今回はあとがきにてコミカライズのお知らせがありますので、よろしくお願いします。

 ──カレンがやってきてしばらく経ち、夏も近づきつつあった日ある時。


「……幽霊だぁ? このローナスに?」


 某講義後、顔見知りになった隣の席の奴が振ってきた話題に、俺は首を傾げていた。


「そうだよ、幽霊だよ幽霊! 最近出るんだってさ。どう、シムルくん的にはあまり興味ない?」


「あるかねーかって、いや、幽霊とか今まで真面目に考えたこともなかったが」


「ふーん。シムルくんのいた辺境の田舎って、幽霊とか不思議な存在の伝承とかってなかったの?」


「あ、僕もそれ気になる。辺境の方って、地方特有の言い伝えみたいなやつがあったりするし」


 周りにいる連中も興味津々だったのか、次々に話に加わってくる。

 ひとまず後ろ頭を掻きながら「うーん」と唸って記憶を掘り返してみる。


「……いや、その手の話は聞いたこともねぇな。基本、のどかな片田舎だったし」


「そっか、なら怖い言い伝えとか話はなかったんだ?」


「怖い、怖い話か……強いて言うなら時たま魔物が人喰いそうになったとか、そんな話題くらいだな」


 言うと、周りの奴らは少し後退った。


「うっ、それはそれで……。でも悪霊が悪さしたとかそんな話はないんだね。暴れん坊のシムルくんが元々暮らしていただけに、正直、怨霊とか霊的なところも含めてもっと殺伐としているもんだと……」


「オイコラ。俺や田舎を何だと思ってやがる」


 てか何だよ殺伐って。

 王都の連中からしたら田舎なんて魔物や怨霊の巣窟、くらいのイメージなんだろうか。

 聞き捨てならんことを言った奴をじーっと見てやると、そいつは苦笑を漏らした。


「ははっ、悪かったって。でも最近幽霊が出るって噂は本当らしいから。シムルくんもちょっとは気をつけなよ?」


「ああ、一応は覚えておくさ」


 そんな返事を適当にして、ひとまずその場は解散となった。






 ……だが、問題はその日の晩だった。


「……お、おにーちゃん! おにーちゃん!!」


「うっ、ごはっ!?」


 何かが熟睡していた俺の上に降ってきて、息が詰まった。

 跳ね起きると、腹の上にカレンがいた。

 しかも涙目で、妙に息が荒い。

 ひとまず起き上がって、ぼやけた頭をはっきりさせた。


「カレン、どうした。今日は女子寮のテーラの部屋で寝るんじゃなかったのか?」


「で、出た! お化けが出たの!!」


「……お化け?」


 また一体何事だよ。

 そう思いつつ、慌てたカレンから事情を聞くこと少し。


「……なるほど。一人で女子寮のトイレに行ったら竜似の大きな影が現れて、唸り声をあげて迫ってきたと。それでおっかなくなって、女子寮から飛び出したと」


「……!」


 コクコクと頷くカレン。

 起きて話を聞いていたソラヒメも少し考え込んでいた。


『……竜似の影、ですか。しかし女子寮自体、竜が出入りできる空間などない筈です。面妖な話ですが……』


「だから幽霊が出たって言ったのっ!」


 カレンは俺に張り付いたまま、必死な形相で訴えていた。

 ……よほど怖かったらしい。


『シムル、どうしますか? 一旦女子寮の方に行きますか?』


「オイオイ、勘弁してくれよ。しかも影が出たの、トイレだろ?」


 いくら俺でも、消灯後に堂々と女子寮には入れねぇ。

 それに、夜中に女子寮に侵入してトイレに堂々と入る男子生徒とか、完全にアウトだ。


「出たのが男子寮ならともかく、女子寮ならソラヒメが行ってくれよ。お前なら問題ないだろ」


『……』


「ソラヒメ?」


 ソラヒメはしばし無言になってから、目を逸らしながら言った。


『……シムル。もし霊が本物だとして、あなたは相棒があの世に連れ去られたりなどなど、心配にはならないのですか? ……やはりここは、あなたも一緒に行くべきかと……』


「ソラヒメ、お前……」


 まさかまさかだが。


「幽霊とかダメだったんだな」


 幽霊にビビる竜王、これはいかに。

 とは言え誰しも苦手はある、ソラヒメは幽霊が苦手とは初耳だったが。

 ソラヒメは顔を赤くして、突っかかってきた。


『なっ、ダメとは何ですか、ダメとは!? 別にダメとは言っていません。行くなら二人、二人以上で行くべきと思っただけですっ!』


「ちょっ、分かった! 分かったから詰め寄るな!?」


 ひとまずソラヒメもこんな調子だったので、この日の晩はカレンを俺の部屋に泊める方向で話が落ち着いた。

 それにカレンの見た幽霊や聞いたうなり声も、もしかしたら寝ぼけて見た夢かもしれないし。


 ……とまぁ、この日の晩はこんな風に考えていた……のだが。






 意外なことに、問題は翌日に持ち越された。






「……シムル、幽霊って信じる?」


 朝方、テーラに会って昨晩カレンを俺の部屋に泊めたと伝えた後。

 一緒に朝食を食べていたら、テーラが珍しく覇気のない声でそんなことを言い出した。

 またこの話題か、そう思いながら俺はパンを飲み込んだ。


「本物がいるかいねーかは知らねぇけど、ローナスに幽霊的な何かがいるらしいってのは聞いた。で、お前もカレンと同じで、実際になんか見聞きしたのかよ?」


 テーラは顔を青くして声を高くした。


「が、がっつり聞いちゃったわよ!? 何、あのうなり声!? 竜の鳴き声を数段低めて不気味にしたような、呻き声みたいな……。おかげで昨日はまともに寝られなかったわ……」


 妙にげんなりしていると思ったら、寝不足かよ。


「カレンも言ってたぞ? 女子寮のトイレでそれっぽいのを見たって。ならお前、今日の夜にでも行って幽霊とやらに言ってやったらどうだ? お前のお陰で寝不足だーってよ」


 茶化しつつ言うと、テーラは黙々とパンを食べてから言った。


「……夜中、しばらくトイレに行かないようにするわ」


「お前も幽霊ダメなのかよ?」


 意外に感じつつ聞けば、テーラは大真面目な表情で言った。


「だって……幽霊よ? 魔法でも解明できない超現象の癖に、異常な魔力の塊って噂じゃない。加えて、一人で会ったらあの世に引っ張り込まれるって都市伝説も有名だし、会わないに越したことはないわ」


「……。…………」


 俺の周りにいる女性陣、皆元気いっぱいな割に幽霊とか変に怖がっていやがるなぁとか思っていたが。

 王都で言う「幽霊」とは、田舎出身の俺が思っていた以上に危険なものらしかった。


『お知らせ』


本作【王都の学園に強制連行された最強のドラゴンライダーは超が付くほど田舎者】のコミカライズ版2巻が6/23に発売されます。


各書店やオンラインストアにて予約も始まっており、同じ日に発売する電子書籍版も予約可能ですので、そちらもよろしくお願いします。


コミカライズ2巻はWEB版で言うところの模擬戦闘決着まで、書籍版では1巻のラストのあたりまでとなっています。


2巻もソラヒメをはじめとするヒロインたちが非常に可愛らしく、戦闘シーンの迫力も文句なしの仕上がりとなっています。


発売中の原作1〜3巻やコミカライズ1巻と共に、2巻もよろしくお願いします。

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