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13話 全部が片付いた後で

活動報告にてお知らせしましたが、Comic Walkerとニコニコ漫画にてコミカライズ始まりました!

そちらの方も是非お願いします!

そして本編の方、お待たせしました!

 まず感じたのは……全身を包む鈍痛だ。

 それに加えて、体が熱い。

 痛みと喉の渇きで、ゆっくりと意識が覚醒していく。

 頭の方もどうもぼんやりとしている感が否めないが、それでも自分がどうなってるかを判断できる程度には、はっきりとしていた。


「痛てて……何だこりゃ」


 目を開けた途端に飛び込んで来た、包帯でぐるぐる巻きになってる体を見て、思わず声を上げる。

 夏真っ盛りなのにこんなふうにされているんじゃ……暑いのも当たり前か。

 とはいえ俺自身の方も、少しばかり微熱がある気もした。


『やっと目覚めましたか。全く、貴方は私を何度心配させれば気が済むのでしょうか。……飲みますか?』


 いつでもすぐそばにいてくれる相棒の声がして、俺はそちらを向く。

 ソラヒメはすぐ横の椅子に座っていて、水の入ったコップを差し出してくれていた。


「あぁ、ありがてえ」


 ──ここは……俺の部屋か。


『……まだ頭がはっきりとしていませんか?』


 水を飲みながら部屋の中を見回す俺を見て、ソラヒメは心配そうにする。


「いや、大丈夫だ。そこそこはっきりしてるからよ」


『それは良かったです。キマイラと戦っていたアルス達から……貴方があの高度から落ちたと聞いた時には、もうダメかと思いました。……本当に、よく生きていたものです』


 ソラヒメは心底安堵した、といった様子だった。


「……あの時は、ああするしかなかったんだ。心配させちまって、悪かったな」


『ええ。そして、その言葉はテーラ達にも言うといいでしょう。……三日間も目を覚まさない貴方の姿を見ていたテーラは、本当に辛そうでしたから』


「……俺、三日も寝てたのか……」


 道理で身体中が怠い上に、凝り固まってる訳だ。

 俺は肩を回しながらベッドから起き上がり、包帯を必要な箇所以外は外していく。


 ──暑くていられねぇしな……というか、こんなに大げさに巻いたの誰だよ。


『もう少し寝ていた方がいいのではないですか? 今の貴方は、あまり動かない方がよいと思うのですが……』


「心配するなって。軽く体を動かした感じ傷は塞がってるし、歩くくらいなら平気だっての。魔力もそこそこ戻ってるしな」


 ……でも実際、体は少しばかり痛いといえば痛い。

 感覚がなくなりかけてた両手足は、今はしっかり動くものの、その分ジリジリとした痛みも感じるようになっていた。

 ただ、これ以上寝てばっかりいても……それはそれで心配をかけちまいそうだし。

 何より寝てばっかりいるのは性に合わない。


「ソラヒメ、テーラ達は今どこにいるか……分かるか?」


『彼女自身の部屋にいる筈ですよ。……貴方のために、薬の材料を買って来ては、彼女自身の部屋で調合をしているようですから。塗り薬を作っているようなのですが、貴方の全身の傷に使うほどの量は、買うよりも作った方が早い上に安いそうなので』


 薬の調合とは……また器用なことをしているもんだ。

 それに体や包帯から、青臭いような不思議な匂いが漂って来ると思ったら、薬の匂いだったのか。


「そっか。それなら今から行こうと思うけどよ、お前も来るだろ?」


『勿論です』


 俺は体に負担をかけないようにゆっくりと、それでもしっかりと歩いて行く。

 ……どうしてだか分からないが、今は無性にテーラの顔が見たい気分だった。


 ***


「テーラ、入るぞ」


 いつも通り、ドアノブを回してそのまま入る。

 ツンとした薬特有の匂いを感じて、思わず二の腕で鼻をこする。


「うーんと、確かこのポーションを……入れ、れば……」


「そう……だね……」


 部屋の中でガラス瓶やすり鉢、それに薬草や粉を広げていたテーラとカレンは、俺が顔を出すと揃って固まった。

 ……オイオイ、何だその死人を見るような目は。

 俺はまだ生きてるっての。


「シムル、起きたのね!? というか私が巻いた包帯、取っちゃったの!?」


「おう、心配かけて悪かった……」


 テーラは駆け寄って来るや、俺の体をペタペタと触り出す……ちょっ!?


「痛ててて!? お前そこ触るなよ!?」


 包帯の上からとはいえ、傷口をなぞられて飛び上がるくらいに痛かった。

 ──それとあんな大袈裟な巻き方したの、お前かよ!


「ご、ごめんなさい! 痛くするつもりはなかったんだけど……良かった、元気そうじゃない」


「まぁ、一応な。それと……お前らも元気そうで良かったぜ」


 テーラの次にカレンと目を合わせれば、カレンはその柔らかそうな頬をぷくーと膨らませる。


「もー、それは私達がおにーちゃんに言いたいよー。頑張ってキマイラを倒した後、急いで行ったら……おにーちゃん、血まみれだったんだもん……」


 カレンが話しているうちに涙目になってきて、凄まじい罪悪感が湧いてきた。


「……すまん。あれは少し無茶苦茶……だったな。……そういえば俺が寝ちまった後は、一体どうなったんだ? メルニウスの野郎は?」


 一応仕留めた筈だが、あの後逃げられていたら面倒なことこの上ねぇな。

 そうしたらまたどんな手を使って大立ち周りを演じて来やがるのか……と、思っていたのだが。


「大丈夫よ。彼は……あの後集まって来た憲兵さん達に、連れて行かれたわ。私とテルドロッテ代表がしっかりと事情を話したから。……彼がバーリッシュと通じていた証拠も、いくつか見つかってきたらしくてね。世の中は今、王国最強のドラゴンライダーが敵の内通者だったって大騒ぎよ。……もう会うことは、ないんじゃないかしら」


 テーラはそう言いながらもその瞳に……若干の悲しさを湛えていたと思う。

 俺なら単純にざまあみろと言いたいところだが、あんな奴にもこんな表情を浮かべてやれる辺り、やっぱりテーラは優しいな。


「それと、今度シムルにも事情聴取を受けてもらうことになると思うから……憲兵さん達に、失礼のないようにね?」


「はぁ……へいへい。……堅っ苦しい雰囲気は苦手なんだけどなぁ……」


 正直面倒だけど……テーラのためにもなると思って、我慢してやろう。

 ──前なら絶対に嫌だって、一辺倒に片付けてたところだったのにな。

 俺もまぁまぁ……多分悪くない方向に、変わったってことかもしれなかった。


「……あ、そういえば」


 前と変わったことで思い出した。


「シムル、どうかしたの?」


「……おう、ちょいと行かねーといけないところを思い出したんでな」


 ぎくしゃくしてる訳でもねぇし……普通に行くか。

 一言礼を言って済む話だし。


「もしかして、アルスおねーちゃんのところ?」


 カレンに言い当てられて、体が軽く跳ね上がる。


「……何で分かった?」


「おにーちゃんなら、きっとそうするんだろうなぁって。お礼を言いに行くんでしょー? 私も行く行くー」


 カレンは俺の傷に触らない程度に、軽く抱きついてきた。

 ソラヒメとテーラを見れば、二人ともついて来る雰囲気だった。


「……お前ら、長居はしねぇからな?」


 そう言ってみれば、ソラヒメはふふっと微笑した。


『ええ、寧ろ長居はさせません。……私の相棒が、あの二人に誑かされても困りますので』


 こいつ、もしかしてまだ火竜(カエデ)の件を根に持ってやがるのか!?

 ……というより、二人って……後一人は誰だ。

 思わずソラヒメに聞こうとしたが、その笑みが少しばかり黒く見えて……どうにももう一人について聞くのは憚られた。


『そしてシムル。貴方には身体中の傷が治った後、しっかりと滝に打てれてもらいますから』


「……やっぱりそれ、やらされるんだな」


 ***


 相変わらずギラギラと照る太陽の下、真竜の竜舎の前にて。

 時たま風が心地よく吹いて来るその場所では、生徒代表(パツキン)が真竜二体と共に待ち構えていた。


「そろそろ来る頃だと思っていたが……体の方は、もう大丈夫そうだな」


「おう、どうにかな。……おっと、火竜(カエデ)も心配してくれてたのか? ありがとよ」


『グォォォ……』


 軽く鼻面を押し付けてきた火竜(カエデ)の頭を、ゆっくりと撫でてやる。

 滑らかな鱗の感触がして、それなりに撫で心地がいい。

 ふと包帯のほつれた部分から自分の左手を見てみるが、そこにはもう仮契約のルーンは刻まれてなかった。


「……そっか。だからもうお前とは話せないのか」


『グォォ……』


 俺の気持ちが伝わったのか、火竜(カエデ)は残念そうに唸る。

 でも……その気持ちは、ちゃんと伝わってきた。


「ふん、火竜(カエデ)と話せなくて不満か?」


「いや。心は今でも通じ合ってるから、問題ねーよ……うっ」


 少し意地悪げに聞いてきた生徒代表(パツキン)にそう返した後、背後からの鋭い殺気を感じて固まる。

 殺気の出元は誰あろうソラヒメだと、振り向かなくても分かる。

 ……それに、火竜(カエデ)が小刻みに震えてるし。

 俺は雰囲気を変えるべく、慌てて話し出す。


「お、おうそうだ! 生徒代表(パツキン)火竜(カエデ)……本当に、今回の一件は助かった。ありがとうよ」


「私からも、本当にありがとうございました。テルドロッテ代表」


 俺に続き、テーラも礼を述べる。

 すると生徒代表(パツキン)は、満足げに頷く。


「何はともあれ、一件落着ということで本当に良かった。ミスリスフィーア……いや、テーラ。これからも何か困ったことがあれば、遠慮なく頼って欲しい」


「ありがとうございます!」


 良い感じの二人を見てたら、そういえば、とカレンがいなくなっていることに気づく。


「……なぁ、カレンはどこに行ったんだ?」


『恐らく、彼女のところでしょう』


「……彼女?」


 ソラヒメは竜舎の向こう側を指差す。

 そしてその瞬間、竜舎の向こう側から黒い影が飛び出した。

 その姿を視界に入った途端、半ば反射的に身構える。


「ちょっ……ヴァルハリアだと!?」


「あ、おにーちゃん。大丈夫だよー!」


「……へっ?」


 黒い竜の背から、カレンがぴょこりと顔を覗かせたことで、俺は構えを解いた。

 ──どういうこった!?

 俺が驚いている間に、ヴァルハリアは俺達の目の前に着地し……カレンを下ろしてから、赤黒い閃光を発しながら人の姿になる。

 その姿は見覚えのある、黒髪のメイド……って。


「お前がヴァルハリアだったのかよ!?」


『ええ、その通りよ! 私の新しいご主人様!』


「……は?」


 ヴァルハリアが言い放ったよく分からない一言に唖然としてたら、突如としてヴァルハリアが飛びついて来た。

 ……というか、やっぱりこういう話し方が素じゃねーかよ。

 前の時は、メイドとしての話し方を作ってたみてぇだな。


『させませんよ?』


 ソラヒメは黒い笑みを浮かべながら、俺に届く手前でヴァルハリアの首根っこを掴む。

 ヴァルハリアは『ぐえっ』とか言いながら止まった。

 そして……よく分かった。

 ──火竜(カエデ)以外のもう一人ってのは、ヴァルハリアか!


『いいじゃないお姉さま。シムル君がお姉さまの相棒と一緒に、アタシのご主人様を兼任したって! 減るものじゃないし!!』


 ヴァルハリアは、ソラヒメを非難がましく見つめながらむくれる。


『いいえ許しません。今回の一件で、私は悟りました。……私の相棒に近寄る竜に、隙を見せてはならないと』


 ソラヒメはなおも俺に近寄ろうと頑張っているヴァルハリアを、不機嫌顔で力任せにぐいっと抑え込もうとする。

 しかしヴァルハリアもそのままやられるつもりはないのか、どうにかソラヒメから逃れようと悪あがきをしていた。


「……なぁソラヒメ。そもそも何でヴァルハリアがここにいるんだよ?」


 何がどうなっているのかを、とりあえずソラヒメに説明してもらおうと思った。

 ソラヒメはヴァルハリアのこめかみを片手で掴み、その動きを止めながら何事もないかのように話し出す。


『まず、彼女は人間の手で捕らえておける存在ではありませんので、私が抑えておくことにしたのです。そして次に……』


 ソラヒメにじろりと目配せされたヴァルハリアは、顔を青くしながら頷き、辛うじて口を開く。

 どうやら今のは、ソラヒメによる『自分で言いなさい』という合図らしかった。

 それにしても……相当痛そうだな、ヴァルハリア。


『ま、前のご主人様がいなくなっちゃったから、アタシも行くところがないのよね。それならとりあえずは、アタシを倒したシムル君に責任を取ってもらって、次のご主人様をやってもらおうと……痛い痛いですお姉さま!?』


 そうか。

 確かにヴァルハリアの言う通り、主人って呼んでたメルニウスがいなくなった今、行くところがないのは道理だな。

 ……とか思って、半ば納得していたところ。


『などと彼女は言っていますが、私は絶対に認めません』


 ソラヒメの冷静な一言が、ヴァルハリアにガツンと打ち下ろされた。


『えっ!? それなら今、どうしてわざわざ私に言わせたの!?』


 裏切られた!? と言わんばかりのヴァルハリアに、俺は同情せざるを得ない。

 それに正直……今ヴァルハリアが言ったことは、俺も思ってたところだし。


『寧ろ貴方の言い分を、どうして私が代弁しなければならないのですか』


 ソラヒメはさも当然のように、そう言い放った。

 それを聞いたヴァルハリアは、遂に涙目となる。


『ううっ、酷いわ! 何よこの暴君!?』


 ……ヴァルハリアお前、ソラヒメが暴君だってことを……知らなかったんだな。

 まぁ、まさか同じ星竜相手でもソラヒメがここまでするとは、俺も思ってもみなかったけどな。

 ヴァルハリアは涙目のまま『理不尽よ理不尽! 扱いの改善を要求するわ!!』とソラヒメをぽかぽか叩こうとするが、ソラヒメはそれが気に入らなかったのか、容赦無くヴァルハリアの腕を後ろ手にして関節を極めていた。


 ……人の姿で容赦なく関節を極める竜王と、泣きながら決められる星竜。

 中々シュールな光景だ。


「……ソラヒメ。そろそろ可哀想に見えてきたから、その辺にしておいてやれよ。それとヴァルハリア。今更だけどよ……この三日間でメルニウスを助けに行こうとか、そういう考えにはならなかったのか?」


 助けに行こうと思えば、ソラヒメの目はあるものの……どうにかこうにか助けには行けただろうに。

 ソラヒメの拘束から辛くも逃れたヴァルハリアは、面白くないものでも思い出したかのように、苦い表情を浮かべる。


『もう、あんな奴はいいの! それに……あの時剣の鞘で目を回したアタシを思い切り叩いていたの、シムル君も覚えている? あれをされた時は……流石に酷いし、やっていられないと思ったから。あんなことをされた以上、もう助けに行こうとは思わないわ!』


 ──それもそうか。

 あの時の鈍い音、俺の方まで伝わってきたしな。

 その後も話を聞けば……どうもヴァルハリアは、メルニウスに中々雑な扱いを受けていたらしい。


 果ては『星竜にメイドをやらせるって何よ! おかしいわよ!! おまけに口調まで変えろって、私の鱗よりもよっぽど真っ黒な労働環境だったわ!!』とか言い出して、メイド服をその場で脱いでラフな格好になる始末だった。

 いやいや、それに関しちゃあお前もそれなりにノリノリだっただろ、と心の中で突っ込む。


 そんなこんなで、今までメルニウスのいいようにされてきたらしいヴァルハリアだったが……それでも『メルニウス様は今まで見てきた人間の中だと強い部類に入るし、話は通じない訳じゃなかったから!』ということで、自分に乗せてたらしい。

 でもまぁ、俺がメルニウスを倒したこともあって……その時点で流石にお役御免になったとか何とか。


「……ただしよ。お前の言い分でいくと、俺が誰かに負けた途端に他の奴にくっついて行くこともありそうだな」


 興味本位で、ふとそんなことを聞いてみる。

 俺としてはヴァルハリアがどこの誰について行こうと構わないから、別にそういうふうにしてどこかに蒸発しても構わない。

 するとヴァルハリアは、面白いくらいに両手をわたわたとさせて焦り出した。


『それはないわよ! 仮にも本気だった星竜(アタシ)を墜とした実力者を、簡単に手放したりしないから。それにシムル君は何だかんだで優しそうだし……少なくともメルニウス様よりは情に厚そうだし。何よりも……』


 ヴァルハリアは前にも見せたいたずらっ子みたいな笑みになって、にやっと真っ白な八重歯を覗かせる。


『最強クラスだろう概念干渉(ノーネーム)使いの行く末は、間近で見ていてつまらない訳がないもの。それに、竜王を駆る概念干渉(ノーネーム)使いなんて……うん、格好良くていいじゃない! こんなにも面白そうなご主人様なんて、アタシにとっては超優良物件よ!!』


 何の悪びれもなく、はつらつとそう言うヴァルハリアの態度は、前のメイド然としていたものよりもずっと自然体で接しやすいと思った。

 ……だが、ヴァルハリアのそんな姿も長くは続かない。


『だから……彼の相棒は、私一人だと言っているではありませんか! これ以上の狼藉は、竜王の名の下に許しませんよ!!』


 本格的に怖い顔になったソラヒメが、バチバチと帯電し出す。


『い、いやー! 雷撃はもう勘弁してー!!』


 怒るソラヒメに、悲鳴を上げるヴァルハリア。

 そして、それを微笑ましく見守るテーラ達。

 それは何とも賑やかな光景だった。


 ──あぁ。やっぱり俺……こういう日常が好きだな。


 できることならずっとずっと、こうやって過ごしていたい。

 でもこんな日常を送っていくには……やっぱり、バーリッシュがどうしても邪魔になるんだろう。

 連中がいる限り、イオグレスやメルニウスみたいな奴がいつまで経っても出て来るんだろうし……それを考えれば、な。


「……なぁ、ソラヒメ」


『どうかしましたか?』


 ソラヒメは帯電をやめて、俺と向き合う。

 どうかしたのかと首を傾げる相棒に、今更ながら……もう一度だけこう聞きたくなった。


「これから先も、力を貸してくれるか?」


 皆と一緒に、こういう日常を送っていくために。

 俺の幼馴染が、もう危ない目に遭わないように。

 ソラヒメは一つ頷いて、満足げに微笑んだ。


『ええ。勿論です。何度でも言いますが、私は貴方の相棒ですから。今も昔もこれからも……それは変わりません』


 柔らかな表情でありながらも力強くそう断言してくれたソラヒメに、俺の方も頬が緩むのを感じた。

 ──きっとお前となら……やれるよな!

「この先もソラヒメと、力の限りやっていこう」なんて、我ながら珍しくやる気のあることを思った……丁度そのタイミングで。


「あ、そうそう。ねえ……シムル。少しいいかしら?」


 テーラは思い出したかのように、俺の正面に回り込んで来る。


「あぁ、どうした?」


 そう聞き返せば。テーラは顔を赤らめてから。


「改めて、私のことを助けてくれて……本当にありがとうね!」


 この時のテーラの笑顔は……驚くくらい、可愛く見えた。

 きっと俺は、この時のことを……一生忘れないだろう。


前の話でこの章はひと段落の予定でしたが、今回でちゃんとしめる形にしたいと思います。

次話から次章に入る予定です。


p.s.作者のモチベーション維持のために書籍版の方も是非お願いします!!!

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