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6話 火竜vs翼竜

 さっき聞こえた声は、どちらかといえば肉声よりもソラヒメの念話に近かった。

 思わずソラヒメがいるのかと思って、辺り一帯を見回す……のだが。


『嫌ですねえ。

 私だって分かっている筈ですよ、シムルさん?』


 その声が聞こえたのと同時に正面を向けば、目の前には俺に鼻面を押し当ててきた火竜(カエデ)の姿。


「もしかして……お前かよ!?」


『他に誰がいるんですか?』


 驚きのあまり声を上げるが、火竜(カエデ)はさも当然のようだった。


「何でお前喋れるんだ!?」


 今までそんな素振りなかっただろ!


「まさかお前……星竜か!?」


 ビシッと指さすと、火竜(カエデ)は瞳を閉じながら、グリグリと俺の胸に鼻先を押し当てる。


『ぷっ……ははははっ! 

 そんな訳がないじゃないですか! 

 私は正真正銘の火竜ですよ、竜王様とは違いますって』


 火竜(カエデ)は何が面白いのかころころと笑っていた。


「それならどうして喋れ……」


「……シムル、さっきから何をぶつくさと言っている? 遂におかしくなったか?」


 生徒代表(パツキン)火竜(カエデ)の腹を撫でながら……俺から見て、おかしなことを言った。


「……えっ、だってこいつが突然話し始めたから……」


 すると生徒代表(パツキン)は「ぷっ」と小さく吹き出した。


「そんな訳がないだろう。

 会話をする竜など、星竜だけに決まっている!」


「い、いや! 

 寧ろどうしてお前は聞こえてねぇんだ……」


 何がどうなってるのかよく分からない俺は、ただ困惑するしかない。


『それはそうですよ。私の言葉はアルス様には聞こえません』


「……どういうことだ?」


 聞き返せば、火竜(カエデ)は説明を始めた。


『現在私がこうしてシムルさんと会話できているのは、貴方の持つ竜王様のルーンが原因です。

 貴方の持つ私との仮契約のルーンを通じて、竜王様のルーンの方から様々な知識などが一気に流れ込んできました。

 水が高いところから低いところに流れていくようなものでしょうか? 

 ともかく、竜王様のルーンと私が貴方を通して間接的に繋がったことで、私の思考能力などが拡張されているみたいです。

 そしてルーンを通して心が部分的に繋がったことで、会話をすることができているとお考えください』


「う……うん?」


 火竜(カエデ)の説明は、半分くらいはちんぷんかんぷんだ。

 というか、説明を噛み砕いてくれない版のソラヒメと話してる気分だ。


「……まぁ、要するにソラヒメとの契約のルーンを持つ俺としか話ができない、と」


『そういうことです! 

 それにこうやって話しているのも、言葉というか……どちらかと言えば私が思っていることを、竜王様のルーンが貴方に分かる「言葉」という形に変換してくださっているのだと思います!』


「そんなことができるのかよ……ソラヒメのルーンは。

 やっぱり竜王だと、ルーンも色々と違うのか?」


 火竜(カエデ)にそう聞いてみれば、尾を上下に振った。


『そうですね。

 やっぱり竜王様のルーンともなれば、凄まじい力を誇るのだと思います。

 それこそ私のようなワイバーンが、貴方と意思の疎通を自由に図れるようになるくらいには』


「そっか……やっぱりソラヒメって凄ぇんだな」


 しかもワイバーンから直接『竜王様』とか聞けば尚更だ。


「おいシムル。

 いつまで独り言を続けるつもりだ? 

 早く火竜(カエデ)と連携をする練習を始めるぞ」


 生徒代表(パツキン)は訝し気に俺を見つめていた。

 まぁ、傍から見れば確かに俺が独り言を呟いてるだけみたいに……見えちまっているのかぁ。


「……お前、火竜(カエデ)の声が本当に聞こえてねぇんだな」


 火竜(カエデ)の主人は誰あろう、生徒代表(パツキン)なのにな……。


「お前こそ何度も何を言っているのだ。

 そんな世迷言を言っている暇などないぞ。

 お前はミスリスフィーアのために、一刻も早く頑張らなくては……いけない……」


『クゥーン……』


 火竜(カエデ)が悲しげに鳴く。


 その鳴き声について、俺には『アルス様は、やっぱり私とは話せませんよね……』とはっきりと聞こえていた。


 また、生徒代表(パツキン)生徒代表(パツキン)なりに、火竜(カエデ)の気持ちが分かるらしく、俺を責める語尾をすぼめて火竜(カエデ)へと注意を向けた。


火竜(カエデ)……まさか本当にこの田舎者と話ができるのか?」


『グォォ!』


 火竜(カエデ)は尾を縦に振った。

 それを見て、生徒代表(パツキン)は俺が言っていることを本当だと思い始めたらしい。


「……どういうことか、詳しく聞かせてもらおうか」


 そしてやけに怖い顔で、俺に説明を求めてきたのだった。


「……そうか。お前の持つあの星竜のルーンが……」


 火竜(カエデ)の小難しい説明の一部を端折りつつも説明したところ、生徒代表(パツキン)は「ふむ……」と顎に手を当てて考え始めた。

 生徒代表(パツキン)はソラヒメのルーンに関心気味だが、一方の火竜(カエデ)の方と言えば。


『ア、アルス様!? 

 言っても通じないのは承知ですが、竜王様を呼ぶときはせめて「様」を付けてください! 

 流石に呼び捨ては……不用意にあのお方の機嫌を損ねるような言い方は、本当にまずいですって!!』


 主人の物言いに、鳴き声で突っ込んでいた。

 しかし哀れな火竜(カエデ)の心の声は、生徒代表(パツキン)には届かない。

 生徒代表(パツキン)に分かるのは、火竜(カエデ)の尾の動きや鳴き声の強弱から読み取ることのできる『はい』とか『いいえ』くらいなものだ。

 詳しい意志疎通はできない。

 だからこそ……。


「……シムル、今火竜(カエデ)は何を言っている?」


 生徒代表(パツキン)は少し難しい顔をしながら、翻訳を頼んできた。

 ……誰より長く一緒にいたんだろう相棒の言葉が自分にはまるで分からないのは……やっぱり少し、悔しいのかもしれねぇな。

 俺だって生徒代表(パツキン)と同じ立場なら、多分悔しかったと思う。

 そういうことも思ったから、せめて生徒代表(パツキン)火竜(カエデ)と少しでも話せるよう、その言葉をありのまま伝えることにした。


「ソラヒメを呼ぶ時は、様を付けろってさ」


 そう伝えてやった途端、生徒代表(パツキン)は凄い顔になった。


「……は?」


 何かもう「お前がそう言わせたいだけだろう」と言いたいことが逆に伝わってくるくらいには。


「い、いやいやお前そんな顔してるけどよ!?

 本当だって! 

 別に俺がお前にソラヒメ様とか呼ばせてぇ訳じゃねーよ!!」


 生徒代表(パツキン)は腕を組みながら、訝しむようにして続ける。


「……百歩譲ったとしても、この私の相棒である火竜(カエデ)があの星竜に対して様と付けろなどということを言う訳がない。

 お前との模擬戦闘(デュエル)でも、勇猛果敢に星竜に立ち向かった私の相棒の内の一体が、そんな遜った物言いをするものか」


 生徒代表(パツキン)の物言いは、ある意味ドラゴンライダーの鑑なのかもしれねぇ。

 それに相棒の強さを信じて疑わないその姿勢は、俺にも分かる所がある。

 ……けどよ……。


『アルス様! 

 本当です! 

 シムルさんの言うことは本当ですって!! 

 ですから竜王様の呼び方にはもう少しで良いので気を付けてください! 

 どこで聞いているか分かりませんよ!? 

 それに模擬戦闘(デュエル)の時は頑張っていただけです!!』


 ──クゥンクゥンと小さく鳴く火竜(カエデ)のお陰で、妙に締まってねぇんだよなぁ……。

 言葉による意思疎通ってのは大切なんだなぁ、としみじみ思う俺であった。


 ***


「……ところでよ。

 前に俺はお前を叩きのめしちまった訳なんだが……そこはどう思ってるんだ?」


 生徒代表(パツキン)翼竜(カマイタチ)も連れてくると言い残して竜舎へ戻っている間、ちょっと気になったことを聞いてみることにした。

 あの時は俺も手加減なしだったし……こうやって話してると、悪いことをした気がしなくもない。

 火竜(カエデ)は『あまり気にしないでください』とあっけらかんとした返事をした。


『いいんですよ。

 あの時はアルス様の指示でしたし。

 そもそも私も途中から本気でしたから、おあいこです! 

 それよりも今は、メルニウスという男との模擬戦闘(デュエル)に向けて集中ですよ!』


「お前……主人と比べて良い奴だなぁ。

 もう少し根に持ってるかと思ったぜ」


 生徒代表(パツキン)も、火竜(カエデ)のこういうところは見習って欲しいもんだ。


「……それとよ。

 お前自身としちゃあ……今回の模擬戦闘(デュエル)で俺と組むことについて、どう思ってるんだ?」


『私自身……ということは、アルス様がシムルさんに力を貸すよう私に言ったから、以外の理由ですか?』


「あぁ。……嫌々やらせちまってるなら、何だか悪いなって」


 こういうふうに話が分かって良い奴なら尚更だ。


『いえ、嫌だなんてことはありませんよ。

 寧ろその逆で、久しぶりに暴れることができると思い少し楽しみなんです! 

 最近はお昼寝ばっかりで、ストレスが溜まっていたんですよねー』


「その……なんだ。本能的に暴れたいとかって、そういうことか?」


 火竜(カエデ)は『そういうことですね!』と尻尾を縦に振った。


『私達竜種は、やっぱり暴れることも必要な生き物なのですよ。

 その点シムルさんの申し出は願ったり叶ったりなんです。

 それに……実はアルス様が私をシムルさんと組ませると、そう竜舎で言った時、翼竜(カマイタチ)は大分羨ましそうにしていたんですよ?』


 火竜(カエデ)は快活に語った。

 聞こえてくる口調は人間のようだったが、やはりその中身は竜なんだな、と改めて感じさせられる内容だ。


「まぁ……そういうことならよかったぜ。

 三日後までだけど、改めてよろしく頼むぜ!」


『こちらこそです!』


 俺の差し出した拳に、火竜(カエデ)は翼爪を軽く合わせる。

 ──よしよし。こいつとなら、良い感じに組めそうだな!

 乗る竜についてはこれで問題なさそうだな……なんてふうに安心していたところ。


「……ほう、随分と仲が良さそうだな」


 翼竜(カマイタチ)を引き連れた生徒代表(パツキン)が、また妙に怖い目で俺を……正確には、今度は俺達を見ていた。

 そしてズカズカとやって来て、火竜(カエデ)に向かって一言。


「シムルと仲良くするのは……仮契約相手のことを知るという意味で、悪いことではない。

 だが……仮契約期間中もお前は私の竜だということも、しっかりと覚えておけっ!」


 見ようによっては、やきもちを焼いたとも取れるような生徒代表(パツキン)の言い振りに、俺は思わず吹き出しかけた。

 でも、それを目ざとく察知したらしい生徒代表(パツキン)がぎろりと睨んできて、思わず固まる。


「……何でもねぇよ」


「ならばよし」


 ──危ねぇ、後少しでまた追いかけ回されるところだった……!


「……ところで、何で翼竜(カマイタチ)まで連れて来たんだ?」


「それは勿論、本格的に訓練を始めるからだ」


 生徒代表(パツキン)翼竜(カマイタチ)を撫でながら答えた。


「……早いな。

 てっきりこの先暫くは、操竜術の練習をするもんだと思ってたんだけどよ」


 生徒代表(パツキン)は「そちらはもう大丈夫だろう」と首を横に振った。


火竜(カエデ)と本当に会話ができるなら、操竜術はほんの少しできれば良いだろう。

 そもそも操竜術とは、竜と自由に会話ができないから使う必要があるものだ。

 竜の感覚を自身のものと共有することで、竜の考えを読み取りながらもこちらの意思も伝えていく……そういうものだ。

 会話を通して竜に詳しい指示が出せるなら、操竜術に割く魔力はいくらか戦闘面に使った方が有利だ」


「そうなのか。そういうもんなら、別にいいけどよ」


 火竜(カエデ)は小さく鳴いた。


『そうですね。

 シムルさんはそもそも操竜術が上手くないということでしたので、私も会話の方がいいと思います』


火竜(カエデ)もそれでいいってよ」


 そう伝えてやると、生徒代表(パツキン)は小さく頷いてから素早く翼竜(カマイタチ)に跨る。


「お前も早く火竜(カエデ)に乗れ。

 まずはワイバーンに乗って、飛ぶ感覚を覚えるところから始めるぞ。

 恐らく、星竜とは感覚が違う筈だ」


「俺もそれは思うけどよ……まぁ乗って飛べば詳しく分かるってもんか、っと!」


 俺は火竜(カエデ)に飛び乗り、その首筋から魔力を通していく。

 ものの数十秒で火竜(カエデ)の全身に俺の魔力が行き渡り、感覚がうっすらと共有された感覚を覚えた。


「準備完了だな。

 それじゃあ火竜(カエデ)……お前の力を見せてくれ!!」


『いきます!』


 火竜(カエデ)は軽く嘶いてから、空中に浮き上がった。

 俺達を追いかけ、生徒代表(パツキン)達も飛翔する。

 やはりソラヒメと比べれば、空中に昇っていく速さは遅く思えたが……そこは逆に、ソラヒメが星竜だから速かったと考えた方がいいか。

 そして、ある程度の高度まで上昇してから。


『風に乗りますよ!』


「……うん?」


 ソラヒメにも言われたことのない表現に、何事かと一瞬思うが……その時には火竜(カエデ)はもう、空の中を滑っていた。

 翼を広げて、ほぼ羽ばたかずにすーっと移動していく。


「風に乗るってのは……こういうことか!」


 ソラヒメの飛び方は、どちらかといえば風を切り裂いてぐんぐんと押し進む印象だ。

 だけど、火竜(カエデ)の飛び方は風を切り裂かず、文字通りその上に乗っている感覚だ。


「お前、いつもこんなふうに飛んでるのか?」


 そうやって聞きながら、会話を念話に切り替える。

 風の中だと、普通に話しても声が散って伝わらないからだ。


『それは勿論ですよ! 

 ……それとも、もしかして竜王様は違うんですか?』


「あぁ。

 あいつは風に乗ることはあまりなくて、逆に風とか関係なしにもっと速く飛ぶ感じだな」


 火竜(カエデ)は『ひえーっ』と慄いた


『流石は竜王様、とんでもないスタミナですね。

 ワイバーンがそんなことをしたら、すぐに疲れ果てて墜落してしまいますよ!』


「……そうなのか?」


 いつもソラヒメがそんな飛び方だから、そう言われてもあまりよく分からない。


『そうですよ!

 竜王様は他にも魔力量とか……そもそも翼竜(カマイタチ)を上から一方的に押さえつけられる力とか、ともかく色々と反則級ですって!!』


 火竜(カエデ)にそう熱弁されるが……やっぱりピンとこない俺であった。

 ──そういえば、生徒代表(パツキン)はどこに行った……?

 付いて来ているのかと思い、後ろを振り向こうとしたその刹那。


『シムルさん! 

 掴まっていてください!!』


「うおぉ!?」


 火竜(カエデ)が大きく羽ばたき、風の流れに逆らってその場で急停止する。

 振り落とされないよう火竜(カエデ)の首元にしがみつくのと同時に、全身を風圧に襲われる。

 何事かと思い薄く目を開ければ……斜め上から飛来した何かが、火竜(カエデ)を擦過しかけていた。

 思わず真下を向けば、そこには急降下をやめ、雲の上すれすれで再浮上する生徒代表(パツキン)翼竜(カマイタチ)の姿があった。


「なっ……何すんだよお前ら!?」


 思わず声を上げれば、生徒代表(パツキン)もまた声を大にしながらこちらへと迫る。

「言っただろう……本格的に訓練を始めると!!」


「ちっ……唐突な奴だな! 火竜(カエデ)!!」


『承知しています!』


 火竜(カエデ)は一旦雲の中に入り、翼竜(カマイタチ)を撒こうとする。

 それには俺も賛成だ。

 何せ、相手はあの飛行能力に関してはソラヒメにも匹敵しかねない翼竜の真竜だ。

 空中で馬鹿正直に狙いながらブレスを見舞おうとしても、軽く躱されるのがオチだ。

 それなら……雲の中からの不意打ちしかねぇ!


「させるかっ!」


 眼前の雲めがけて飛び込もうとしていた俺達を先回りするかのように、下から翼竜(カマイタチ)が突進して来た。


 そのまま突っ込む訳にもいかず、俺達は再度の急停止を余儀なくされた。


「クソッ、埒があかねぇ!」


「どうした、火竜(カエデ)の力はそんなものではないぞ!」


 生徒代表(パツキン)はすれ違いざまにそう告げ、一瞬で頭上にまで飛翔した。

 ──よく目で追え、その上でこう飛べばいいと火竜(カエデ)に指示を出せ!

 俺は翼竜(カマイタチ)の動きを見切るべく、火竜(カエデ)がよく見えないだろう後方上部に回り込んだ生徒代表(パツキン)達を目で追う。

 だが、生徒代表(パツキン)が不敵に笑ったその直後……俺はその狙いを理解して思わず舌打ちした。


「眩しい……ッ!

 あいつら、太陽の中に入りやがった!」


 天然の目くらましにまんまと引っ掛けられ、一瞬だけ視線を生徒代表(パツキン)達から外す。

 しかしながら、あいつらは当然そんな隙を逃しはしない。

 翼竜(カマイタチ)がブレスを放つのを、辛うじて視界の端に捉える!


「ブレスだ!」


『はい!』


 火竜(カエデ)は体を逸らし、すんでのところで避け切った。

 俺の体も掠めて過ぎた風の一撃に、生徒代表(パツキン)もそこそこ本気になっていることを感じる。

 ──それなら……こっちもやらせてもらうぜ!!


火竜(カエデ)。俺の言った通りに飛んで欲しいんだけど、いいか?」


『勿論です』


 火竜(カエデ)の了承を得た俺は、火竜(カエデ)に考えを伝えた。

 正直かなり強引な方法だったが……火竜(カエデ)は『承知しました。竜王様の乗り手の策を信じます!』と二つ返事をしてくれた。


「よし……いくかァ!」


 火竜(カエデ)はダメ元でブレスを放出し、翼竜(カマイタチ)を狙う。

 だがやっぱり、あまりにも素早く動く翼竜(カマイタチ)にはその攻撃はまるで当たらない。

 上下左右に自由自在に動く翼竜(カマイタチ)を、一直線に進むブレスで狙うのはあまりに無謀だった。


「……火竜(カエデ)、さっき言ったように頼む!」


『しっかり掴まってください!』


 火竜(カエデ)翼竜(カマイタチ)から繰り出される攻撃を、紙一重で避けていく。

 ブレスと鉤爪の嵐を何度も避けながら、火竜(カエデ)も負けじとブレスを放つ。

 すると生徒代表(パツキン)火竜(カエデ)の後方について。俺達を追いかけようとする。

 乱射されるブレスが当たらないように、万全を期したんだろう。

 用心深い生徒代表(パツキン)らしい行動だ。

 そしてそれは……俺達の待ってたチャンスでもある!


「今だ!」


『はい!!』


 火竜(カエデ)は少しだけ上昇し、それに続いて生徒代表(パツキン)達も俺達を追って上昇する……すると。


「なっ!?」


 生徒代表(パツキン)翼竜(カマイタチ)の背にぴったりと掴まった。

 それもその筈だ。

 何せ……今俺達がいるのは、強い向かい風の中だからだ。

 まさか俺達が、自ら不利になる向かい風の中に飛び込むとは思ってもみなかっただろう。

 そしてこうなれば、風に乗らずに空を切り裂くように自由自在に飛んでいた翼竜(カマイタチ)といえども、向かい風からの脱出には少しばかり時間がかかるだろう。


 ──火竜(カエデ)に、強い風の層に生徒代表(パツキン)達を誘い込めって言った時にはちょっと無理があるかと思ったけど……意外と正解か!


 勿論俺には風の流れなんか見えないから、そこは火竜(カエデ)頼みだが。

 ……ともかく、俺と火竜(カエデ)が会話できるからこそ可能になった作戦に、生徒代表(パツキン)はまんまと引っかかった。

 そして生徒代表(パツキン)は驚いていることで、操竜がこの瞬間だけは鈍っていることが見て取れる。

 その隙を……俺達は逃さない!

 火竜(カエデ)はあらかじめ頼んでおいたように、風に対して飛膜を立てる。

 それによって火竜(カエデ)の体は凧のように向かい風の影響をもろに受け……後方の翼竜(カマイタチ)に向かって一気に加速する!


「撃て!」


『いきます!!』


 火竜(カエデ)はその後、間髪入れずにでんぐり返しの要領で反転し、頭を地の方向に向けながら……生徒代表(パツキン)達にブレスを放つ!

 連携が取れていない生徒代表(パツキン)達には、この急襲紛いのブレスは躱すことはできないだろう。

 だが、そのブレスは……ギリギリのところで外れた。


「……まぁ、流石に訓練だしな」


『上手くギリギリを狙えて良かったです!』


 初めての連携にしちゃあ上出来だろう。

 あっけに取られたかのような生徒代表(パツキン)にグッ! と親指を立てて「してやったぜ」と笑いかければ、あちらも片手を上げて「今回は降参だ」と言ったのだった。


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