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3.5話 ソラヒメの引っ掛かり

カドカワBOOKS様HPにて、3巻の表紙イラストが公開されました!

3巻も典樹先生のイラストが最高ですので、発売したら書店でチェックしてみてください!^^

 部屋に戻ってから暫く。

 ベッドでごろ寝しつつ、上手くいけばそろそろソラヒメの腹の鱗も抜き終わった頃合いじゃねーかなとか思ってたら、疲れた顔をしたテーラが俺の部屋に顔を出した。


「あ、テーラおねーちゃん!」


 俺の腹の上で本の続きを読んでたカレンが、ふと顔を上げる。


「おうテーラ。

 終わったのか?」


 テーラはフラフラと部屋の中に入って来たかと思えば、どさりと椅子に座り込んだ。


「……どうした? 

 おっ、ソラヒメ。

 どうだすっきりした……か?」


 それに次いで、顔をテーラ以上に赤くしたソラヒメがゆっくりと現れて……俺の横に丸めてあった毛布にくるまる。


「そ……ソラヒメおねーちゃん?」


 ──何だこの状況。

 二人とも明らかに話しかけにくい雰囲気を漂わせている。

 けど……おう、何があったのかを聞かない訳にもいかないだろうよ。


「なぁテーラ、そのだな……」


 とりあえず毛布に閉じこもったソラヒメよりも話ができそうな、テーラに声を掛けみたところ。


「……シムル。

 アンタ……よくいつもソラヒメ様のあんな声を聞きながら、鱗を引き抜けたわね……いやでも、ソラヒメ様が人間の姿になったのって、ローナスに来てからなんだっけ……? 

 それだったら人間姿のソラヒメ様の……あらぬ姿を想像することもなかっただろうし……ああっ、もー!」


 テーラはぶつくさと何かを、しかもほんの一部しか聞き取れないくらいに小さく言った後、頭を抱え出した。

 ……本当に話が見えなくなってきたな。


「ってか、声だと……? 

 あぁ、あのくすぐったいんだか痛がってるんだか分かりにくい、ソラヒメの声か? 

 ……でもよ、古い鱗をそのままにしていてもソラヒメが辛そうだし、おかしな声を出しててもそこはきっちり抜いてやるのが相棒の役目ってもんだろ」


 するとテーラは、何かを責めるかのような目で見てきた後……どういう訳か、大きく肩を落とした。


「……はぁ。

 もうこの際だから、アンタにも教えてあげるけど……その前にソラヒメ様、オブラートに包んで言えば……問題ないですよね?」


『……』


 ソラヒメは無言ではあったけれど、その毛布の一部が小さく動いたことで、頷いたらしいことが分かった。

 テーラは何とも話しにくそうな感じではあったものの、途切れ途切れになりながらも語った。


「その……竜のお腹に生えている鱗の下には……薄い皮膚しかないのよね。

 そこは、凄く敏感というか……神経が集まっているというか。

 つまり……」


「……つまり?」


 テーラは「えーっと、その……」と、若干あわあわとした後。


「……そう、弱いのよ! 

 弱点なのよ!! 

 だからシムルは、ソラヒメ様のお腹の鱗は極力抜かないこと! 

 今度から私がやるから!!

 ……いいわね?」


「……お、おう……」


 強引に捲し立ててきたテーラの勢いに負けて、気がついたら頷いていた。


『……シムル。

 私からもお願いします。

 正直、もう貴方の前であんなにも気弱な姿は晒したくないので……』


 毛布の中から、くぐもった声が聞こえてくる。

 ……何だ、要するに恥ずかしいってことか?

 俺は気にしてなくても、ソラヒメは意外と気にしちまっているらしかった。


「まぁ……それなら以後気をつける」


『……お願いします』


 ソラヒメは毛布からぴょこっと顔だけを覗かせるが、その顔はソラヒメにしては珍しく微妙そうで、思わず苦笑する。


「それよりソラヒメ、鱗は全部生え変わったのか?」


『はい、貴方とテーラのお陰です。

 これで今晩もゆっくりと眠れます』


 ソラヒメのすっきりとした顔を見て「そりゃあよかった」と返してやる。

 ……うん?


『……シムル。

 少し失礼します』


 ソラヒメが何やら毛布の中からもそもそと這い出てきて、俺に顔を近づける。

 すんすんと鼻を動かして、俺の匂いを嗅いでいるらしかった。


「どうかしたのか? 

 まさか……臭い、なんて言うなよ?」


 当然のことだが、毎日風呂には入ってるし服も洗濯してる。

 それなのにもしソラヒメに『臭いです』とか真顔で言われようものなら……普通にショックだから勘弁してほしい。

 ……しかしながら。


『ええ、確かに少し臭いですね』


 俺の相棒は、中々に無情だった。

 ──嘘だろオイ……。

 俺がうなだれた途端、カレンが流れるかのような動きで、俺の膝の上からいなくなった。

 そしてカレンを掠め取って行ったテーラが、その小さな体を抱きしめながら一言。


「大丈夫! 

 カレンちゃんにシムルの匂いは移っていないわ!」


 全く酷い言い様だ。

 ちなみに、当のカレンは気がついたらテーラに抱かれている状態だったのか、目をぱちくりとさせている。

 そんな光景を眺めながら、恐る恐る自分の服の匂いを嗅いでみる。

 ……別に、臭くなくね?

 それとも俺の鼻がおかしいのか。


『シムル、安心してください。

 少しと言ったではありませんか。人間には分かりませんよ。

 それと……カレンからも、似たような匂いがしますね。

 それにこの匂いは……。

 二人は私とテーラから離れた後、もしかして誰かに会いましたか?』


 ソラヒメに言われて、今日の記憶を掘り返す。

 あの後会ったのは……一人だけだな。


「実を言うと、昨日も来ていたメルニウスのメイドに会ったんだ。

 ローナスに姉さんがいるとか何とかで、偶然出くわしたって感じだ。

 ……もしかしたら、そいつの匂いじゃねーか?」


「あ、そういえばおにーちゃん、私が寝ている間に女の人が来たって、言っていたよねー」


 ソラヒメにそう伝えてみると、小さく唸り出した。


『そう……ですか。

 いやしかし、この匂いは寧ろ……』


 考え事に没頭するソラヒメに代わり、今度はテーラが心配そうに聞いてくる。


「シムル、大丈夫だった? 

 おかしなこととか……されていない?」


「問題ねーよ。

 この通りに、俺もカレンも無事だ。

 ……どうにもおかしな匂いがついたらしいこと以外はな」


 それにしても……あのメイド。

 ……今度会ったら「匂うらしいから風呂入れよ」とか言ってやろうか。


 ちなみにソラヒメはこの後、一晩中考え込んでから翌朝になって。

『あまり深く考えるようなことでもなかったかもしれません。判断材料も少ないですし、杞憂に終わる可能性の方が高いですね』と言っていた。


 ただし……何を考えていたかは、よく教えてくれなかった。


今回は前後の調整で少し短めです

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