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2018正月SP

読者の皆様、あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願い致します!

「シムル、ソラヒメ様!

あけましておめでとうございます!」

「……んぁ?」

『……何ですか?』


俺とソラヒメが気持ちよく寝ていた中、部屋のドアを破らんばかりの勢いで開けてきたのは、誰あろうテーラだ。

それにしても、元気よくテーラが言ってた言葉……あけましておめでとう……あぁ、そうか。


「今日から新年か……寝よ」

「何でよ!?

ほら、一年の初めくらいシャキッとしなさいよ!!」

「やめろテーラ毛布を返せッ!」


惰眠を貪ろうとした途端、テーラに毛布を剥がれて冷たい空気が肌を刺す。

ちなみに……テーラは上手い具合に俺の被っていた毛布だけをはぎ取り、ソラヒメが被っていた範囲の毛布はそのままだった。


「さぁ、行くわよ!」

「行くってどこにだよ……食堂とかか?

つーか、昨日の夜はソラヒメと一緒に部屋の大掃除してたから今凄ぇ眠いんだが……」


目を擦る俺の前で、テーラは高らかにこう宣言した。


「王都の街に行くに決まっているじゃない!!!」

「……は?」


ちなみにだが、テーラの大きな声でソラヒメもばっちり目を覚ました。


***


「寒ッ!

それにやっぱ眠い……毛布が恋しいぜ……!」


寮の外に出たら、当たり前だがかなり寒かった。

王都はセプト村よりも寒暖の差が激しい気がするな。


「もう、そろそろ頭をはっきりさせてよ!

今からお参りに行くんだから」


ぼんやりとしていたらしい俺の様子を見たテーラが、妙に不機嫌になり始めた。

いやいや、だから俺は昨日の夜は遅かったんだっての……というかそれにしても、なんだが。


「……お参り?」


確か、前に親父から新年の始めはお参りとかいうやつをすることがあるって聞いたことがあった気がするな……。

ただ、親父の生まれ故郷じゃ誰しもやってたって話だったが、この国だと……王都の中心だけでやってるって話もされたっけ。

俺は色々と思い出していくうちに、自然と目が覚めていった。


「それで、お参りってやつは具体的に何をするんだよ?」

「うーんとね。

家族や仲のいい友達と一緒に、今年も一年上手くいきますようにとか、健康でいられますようにとか、そういうことをお祈りしに行くの」

「お祈りって……神様にか?」

「それは多分……そうじゃない?」


--テーラにしちゃあやけにぼんやりとした答え方だったが……まぁそもそも神様ってのはいるのかいねーのかすらはっきりしないものだし、そんなもんか。


と、なんやかんやで正門まで歩いていたところ。


「あ!

おにーちゃん達、おはよー!」


カレンが門の影からひょこっと顔を覗かせていた。

どうやら俺達を待ってたらしい。


『おはようございますカレン。

今日も元気ですね』


カレンはソラヒメのもとに駆けてきて、たまにやるように一気に飛びついた。

ソラヒメもソラヒメで満更でもなさそうに、カレンの頭を撫でている。


「それで、この四人でお参りってやつに行くのか?」

「うん。

他の皆は実家に帰ったり、他の人と行くみたいだから」


ならマックス達クラスの連中とも、行く途中で会うかもなーとか考えてたら、カレンが張り付く先をソラヒメから俺に変えながら、笑顔でこう言った。


「お参りって私聞いたこともなかったから、とっても楽しみー!」

「なぁ、バーリッシュには新年に何かをするとかっていうのはねーのか?」


俺がそう聞くと、カレンはうーん、どうだっけ……と軽く悩んでから。


「多分なかったと思うし……あったとしても忘れちゃった!」


--自分の住んでた地元の話だろ……。


適当と言うか、いつも通り元気がいいと言うか。

多分今年もまたカレンはこんな感じなんだろうな、と思う俺であった。


***


「おーいシムル-!」


がやがやとしている王都の人混みの中を、はぐれないよう四人で固まって進んでいたら、ふと聞き覚えのある声が飛んできた。


「……ん?

おう、マックスじゃねーか!

お前もお参りってやつに行くのか?」


「そうそう!

ほら、あっちにいる皆と一緒にさ!」


近寄ってきたマックスの指さす方向を見れば、クラスの男連中数人がこっちに手を振っていた。


「ちなみにシムルは……まぁいつもの三人と一緒だよなぁ……はぁ」


マックスは俺の後ろにいるテーラ達を視界に入れると、何故か肩を落とした。


「……オイオイ、なんでいきなり元気がなくなっちまうんだよ?」


一体何がどうしたんだか。

俺がそう聞いてみれば、マックスはクワッ! と目を見開いて俺に詰め寄ってきた。

--な、何だ!?


「なんで元気がなくなったかだって!?

それは勿論!

男だけで来てるこっちとテーラちゃん達と一緒に来てるお前!!

その差に愕然としただけだよ!!!

どうしてお前の周りだけそんなに華やかなんだよ!!!

おかしい理不尽だっ!!!」


食って掛かってきたマックスの言いたいことが分かった俺は、そう言うことか、と理解をするが……でもだなマックス。


「テーラから聞いたんだが、お参りってやつは仲のいい連中で一緒になって行くもんなんだろ?

俺がいつも一緒にいる三人とお参りに行っても、何もおかしくねーじゃねぇかよ」


それに暮らし始めてから日の浅い王都で仲がいい奴ってのも、結構限られてるしな。

仲のいい奴らと言えば、この面子になるのも必然と言うか何と言うかだ。


「でもまぁ、お前やクラスの男連中にお参りに誘われてたら、一緒に行ってただろうが……あれっ?」


「ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉ!

シムルの馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉぉ!!」


気付いた時には、マックスは謎の叫びと共に走り去っていた


「……なぁテーラ。

あいつ、結局なんだったんだ?」


「うーんと……シムルを誘いたかったんだと思うわよ……?」


「……そっか」


今度マックス達と一緒に遊びにでも行くか、と考える俺であった。


***


「へぇ、ここで……お参りすんのか?」


「なのかなー?

おかしな建物ー。

まるで他の国の建物みたい」


王都の外れまでやって来てそこにあったのは、カレンの言う通り……どうもこの国のものじゃないような、不思議な感じのする木の建物だった。

建物の屋根の形やら……大きな門? みたいなも不思議な形をしてる。

もっと言えば……何で門に続く階段がこんなに長いんだかな。


「うん、そうよ。

少し風変わりな建物だけど、ここでお参りをするの。

初代国王様がこの建物を建てたみたいなんだけど……確かに不思議な形よね。

本当に外国の建物みたい」


テーラの呟きに対し、ソラヒメがふむ、と相槌を打つ。


『そうですね。

初代国王の相棒であった当時の竜王……私の親から聞いたのですが、どうも初代国王は不思議な技能や知識をいくつも身につけていたようですよ?

それはもう、この辺りとは文化がまるで違う場所で育ったかのような、そんな人物だったそうです。

ですから、テーラが言う通りあの建物は外国のものを真似ている可能性も十分にあります』


「へぇ、そっか」


「成る程ー」


と、俺とカレンはなんとなく納得してみるのだが。


「へぇそっか、じゃないわよ!?

今の話って、この国の歴史上結構重要だった気が……!?」


テーラから激しい突っ込みが入った。

そしてテーラがそのまま難しい顔で話を進めようとしたところ、カレンがテーラの袖を引っ張り始めた。


「テーラおねーちゃん、早く行こーよー!

考えててもつまらないよー!」


カレンの年相応な駄々のこね方に、テーラだけでなく俺達も笑ったのだった。


***


「ここに立ってあの箱に小銭を投げてから、手を叩いてお願い事をするの」


中々に長かった階段登りを終えた俺達は、いよいよお参りの最後に差し掛かっていた。

テーラから小銭を1枚ずつ渡された俺達は、テーラの言う通り木の箱に小銭を投げ入れてから手を叩き、お祈りを始めた。


***


(今年はシムルが静かにしていますように……)


(我が相棒の粗暴な面が丸くなりますように……)


(おにーちゃんが落ち着きますように……)


三人がそれぞれシムルについて願っているその最中。


(プリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリン」


「ダダ漏れね……」


『今年もシムルはシムルみたいですね……』


「おにーちゃんは年が変わってもおにーちゃんだね〜」


シムルの頭の中はいつも通りであった。

本作1巻の3刷目の重版分が発売中ですので、そちらもどうぞよろしくお願い致します!

また、現在2巻の作業が進んでおります!

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