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16話 やっぱ厄ネタじゃねーか!?

本作【王都の学園に強制連行された最強のドラゴンライダーは超が付くほど田舎者】の重版分が書店にて販売されているようです!

書店にて是非ご覧になってください!

【カウスサタニルクス】

セプト村での通称は光爆弾。

歴史上での通称は、「急襲用閃光弾」

300年ほど前にユグドラシル王国軍で使われていたものの、その素材の希少性故にやがて使われなくなり、いつしか素材や使用方法、そしてその形すら忘れ去られた古魔道具。

現在では魔法石由来の対人用閃光弾の台頭によってその存在は廃れていった、と言われている。


***


「……って言う事よ。

シムルが作った光爆弾は恐らくその威力からして、間違いなくカウスサタニルクスよ。

本当に、何でそんな物がセプト村に……ううん、寧ろきっと、外との交流がほとんどない上に素材が豊富なセプト村だからこそ伝わっていたのね」


テーラに腕を引かれながら一目散に部屋に戻った俺達は、テーラから光爆弾の正体について、詳しい説明を受けていた。


「ほーん……光爆弾って実はとんでもない物だったんだな」


――作るのは簡単なくせにな。

それにしても、聞けば聞くほど面倒極まりなさそうな身の上だな、光爆弾。

ただピカッと光って便利な苔団子……くらいの感覚で今までは使っていたが、もう認識を改めなきゃいけねーな。


「とんでもない物って……本当にとんでもないわよ!!

アンタはなんでいつもいつも何かやらかさないと気が済まないのよ!?」


「いや今回に限っては不可抗力だっての!

そんなに騒ぐなって。

それに作っちまったもんもセプト村で使われてる事実も、どうしようもねーって。

……まぁ、もう王都では積極的に使おうと思わねーけどな」


――だってもう、こんなもん使ったら一発でまた周りが騒ぎ出すに決まってるからな!

さっきみたくテーラみたいな頭の良い奴が光爆弾を見れば、速攻で正体がばれるだろう。

悪目立ちする事間違いなしだ。


『……シムル、その……光爆弾は……』


「……あぁ、使わねーに越したことはねーな」


「おにーちゃん、やっぱり凄いんだね……」


「カレン、こんなふうに凄くってもどうしようもねーからな……」


結局、今回の光爆弾作成計画は「光爆弾そのものがとんでもない厄ネタだった」という事で断念された。

苦労して作ったにも拘らず圧倒的な徒労に終わったという事で、その場の雰囲気はしらけたものになったのはもう仕方がねーことだったと思う。


***


テーラとカレンが部屋から出た後、俺は光爆弾の材料を紙袋に入れて片付けながら大きくため息をついて脱力した。


「はぁー、今回の光爆弾に関する一連の流れは完全に無駄だったなー。

カレンは襲われるし生徒代表パツキンには出くわすし……ロクなことにならなかったぜ」


『そうでしょうか?

王都の街中に行けただけでも私にとっては大きな収穫でしたし、何より貴方が誰かの為を思って行った行為であると言うことに関しては、とても良いことであったと思いますが』


「まぁ、ソラヒメと王都の街中に行けたのは良かったけどよ。

……って言うかさ、このあまりに余った材料ってどうすんだよ……」


買った時の値段が値段なだけに、ポイッと捨てるのは勿体なさ過ぎてはばかられる。

そうかと言ってこんな厄ネタ、材料だけとは言え誰かに見つかった時がまた面倒だ。

言い訳としちゃあ……実習に使おうと思いました、ってか?

……いや、俺がそう言うには明らかに無理があるような……。


『燃やしますか?』


手のひらにバチバチと電撃を流しながら、ソラヒメが俺の隣にしゃがみ込む。


「燃やすってお前……いや、実際問題燃やした方が良いのかもしれねーけどさ。

だからってなぁー」


セプト村で狩猟生活をしていたこともあって金自体あんまり使ったこともなかったから、金を出したものを捨てるのは少しばかり気が引けるっつーか……。


『ふむ。

では隠すとしましょう』


雷撃を引っ込めたソラヒメが、俺の持っていた紙袋を取り上げる。


「隠すって、いい場所でも知ってんのか?」


『ええ。

グラウンドの各所で昼寝をしていた時に、良い樹洞をいくつか見つけたので。

明日の朝、そこに入れておきます』


「分かった。

なら任せる」


夕飯まで少し時間もあるし、どうすっかなーなんて考えながらベッドに転がったところ、丁度そのタイミングで部屋のドアがノックされた。

最近訪問者が多い気がするのは気のせいか。


「へいへい、どちらさんー?」


「シムル君、居ますか?」


「ん?

マール先生??」


また何で……いや、もう分かる。

わざわざマール先生が来るときは……大体何かあった時だ。


「シムル君、失礼しますよ……あら、こんばんはソラヒメさん」


『ええ、こんばんは。

シムルに何か用事ですか?』


「はい。

これを渡しに来ました」


「紙……っすか?」


ベッドまで歩いてきたマール先生から紙を手渡される。

内容は……討伐戦の概要かよ。


「詳しいことは大体そこに書いてあるから、質問があったら適宜聞いてね。

それと……シムル君」


真面目な顔になったマール先生に、俺は何となく身構えた。

……何か嫌な予感がする。


「さっき、テーラさんが【カウスサタニルクス】と大声で言っていたような気がしたのだけれど……何か知らない?」


――ほらやっぱりバリッバリの厄ネタじゃねーか!!

俺は内心で悲鳴を上げつつも、必死に平静を装う。


「な、何の話っすかね……。

そんな単語見たことも聞いたことも……。

ついでに、テーラとはさっきまで一緒だったんすけど、そんなの一言も言っちゃいなかったっすよ?」


「そう、ならいいのだけど。

……その……ね。

シムル君、今から話すことは内緒にして欲しいのだけど、良い?

ソラヒメさんも、お願いします」


いつになく真面目な顔をするマール先生に、俺とソラヒメはコクコクと頷いた。


「なら話すのだけど、さっき言ったそのカウスサタニルクスは、昔使われていた魔道具と言う風に今は言われているけど……その実態は、一級危険物として扱われていた魔道具よ。

その強力かつ他に類を見ない効力から、今は製造方法を秘匿されているの」


――秘匿って、ぶっちゃけ作り方はただの苔団子だろッ!?

セプト村で普通に作られてるし秘匿もクソもあったもんじゃないのでは、と俺は内心で突っ込んだ。


「なら、その……何でそんなことをマール先生が知ってるんすか?」


俺がそう聞くと、マール先生はばつの悪そうな顔になった。


「その……家柄の都合でそう言う事には敏感なの。

だから……ね?」


「……そうっすか」


また詮索すれば明らかに面倒が爆発しそうな雰囲気の会話になりかけてるから、俺はもうそれ以上聞かなかった。

と言うより、聞きたくなかった。

――これ以上の厄ネタは増えるな、頼むからよ!!


「それじゃあ、紙も渡したから私はもう行くわ。

シムル君、ソラヒメさん。

今の話は内緒でお願いします」


「……りょーかいっす」


『分かりました』


俺達の返事を聞いたマール先生は次の用事があるのか、やや急ぎ気味で部屋から出て行った。

行先は……いや、まさか……な。


「……なぁ、ソラヒメ」


『ええ、貴方の言いたいことは分かります』


「……これ、急いでテーラと口裏を合わせた方がいいんじゃね!?」


もし仮にだが……マール先生がテーラの所に言ったらかなり揉めそうだし。


「ソラヒメ、ちょっと行ってくる!」


『ええ、分かりました』


俺は部屋の窓を開け放って、そこから飛び降りた。


***


「テーラの部屋は……この辺だったか!」


窓からちらりと部屋の中を覗くと。


「カレンちゃん、何を作っているの?」


「電話だよ~。

だけど……うーん、難しいよー。

おかーさんみたいにはいかないなぁ」


「……でんわ?

シムルのnearly equalと言い、概念干渉ノーネームの魔法って本当によく分からないわね……」


machine craftの魔法陣を展開しながら、カレンが鉄くずから何かを作っていた。


「何やってんだあいつら……じゃねえ。

今はそうじゃなかった」


要件を思い出した俺は、窓をゴンゴンと叩いた。


「あ、おにーちゃん、どうしたの?」


「ひゃうっ!?

……ってシムル、アンタなんでそんな所から……」


「いいから早く窓を開けてくれ!

話がある!!」


眉をひそめつつも窓を開けてくれたテーラに、俺は事情を説明し終えた……その直後。


「テーラさん、良いですか?」


案の定と言うかで、ノックの音がした!

テーラの部屋の前に誰が居るかは、もう言うまでもないだろう。


「よしお前ら、上手く隠せよな!」


「えっ、ちょっと!?」


俺はテーラとの会話を切って、急いで窓の下に隠れた。

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