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13話 王都の街で更に問題発生

投稿が遅れて申し訳ございませんでした!

風邪で寝込んでおりました……m(_ _)m


また、特典情報の方を活動報告に書き込んでおきましたので、もしよろしければご覧くださいませ!

憲兵から解放された俺達は、ソラヒメから事情を聞きながら王都の街中を移動していた。


「……で、ソラヒメが露店の食い物を見てたら、腕相撲で勝ったらただでくれてやるって挑発されて……お前はそれにのった、と」


成る程な、と珍しく小さくなるソラヒメを見ながら納得する。

負けず嫌いな所もまぁまぁあるソラヒメなら、確かにその手の挑発にはのるかもしれない。


「ただ、だからってやり過ぎだお前。

店員全員叩きのめすことはねーだろ」


『……そうですね、反省しています』


「おにーちゃん、あんまりソラヒメおねーちゃんを怒らないであげて。

きっと……そう、ソラヒメおねーちゃんは、力の加減がうまくできなかっただけだよー」


少しおどおどしながらも、ソラヒメにちゃんとフォローを入れるカレン。


「あぁ、勝負に熱くなりすぎて、って事か。

……ソラヒメ、どうなんだ?」


『えぇ、カレンの言う通りです。

まさか普通の人間の体があんなに脆いとは……シムルとは違うのですね』


シュンとした顔でソラヒメはそう弁明した。

これもこれで成る程な、って思える話だ。

ソラヒメが本気で戦った人間は、契約前の俺だけだろう。

だからこそ、普通の人間の強度が分からな……と言うか。


「ソラヒメ、お前サラッと俺を人外認定してねーか?」


主に普通じゃないって意味で。


「シムル、もうその辺りにしなさい。

ソラヒメ様も反省しているんだからいいじゃない。

それと、ワイバーンを素手で殴り倒すアンタを普通の人間にしちゃったら、もう色々とめちゃくちゃよ」


「おに―ちゃん、そんなことまでやってたの……?」


俺に向かって目を細めつつ謎の視線を向けてくるテーラに、目を丸くするカレン。


「山でモンスターを狩って生活してた俺としちゃあ、ぶっちゃけモンスターもワイバーンも変わらねーんだが……まぁいいや。

テーラ、最初の目的地にはまだ着かないのか?」


「ううん、そろそろよ。

ほら、あそこに大きな塔が見えるでしょ?

あれはオリフィー塔っていうんだけど。

あの下が第一の目的地、オリフィー市よ!」


「塔?

……あぁ、あのばかでかいやつか。

あんなの、どうやって建てたんだかな」


視線を街中から上にずらすと、他の建物よりもずっと高い、文字通り空にも届きそうな塔が見えてきた。

王都の建物はどれも大きく、セプト村の家が小屋にでも見えるような勢いだったが、あの塔は最早人工物なのかと疑うほどに巨大だ。

高さだけでも一山……いやもっとか?


「あの塔はね、五十年前に王都の腕利きの物理フィジカル系魔法使い達が物質強化魔法を使って建てたものなの。

職人さんの間では、あの塔を建てた人達は伝説になっているみたいよ」


「そっか、魔法を使ったのか。

それにしても、物理フィジカル系、それも物質強化魔法……ねえ」


がっつり生徒代表パツキンが使ってた魔法と被っていて、俺は何となく顔をしかめちまった。

ただしその反面、ワイバーンを強化した上に俺の竜骨格ドラゴスケルトンと張り合ったあいつの魔法を思い出せば、ランクA相当の使い手なら塔くらいなら簡単に強化できるのだろうとも思った。

例えそれが天にも届くほどの高さだとしても、だ。




「さて、着いたわよ。

この辺りは魔道具の材料や原料が沢山あるから、もしかしたらシムルの探すものもあるかもしれないわよ」


「そいつは結構、それじゃあ早速探しに行こう……とその前に。

一応言っておくぞ?

……ソラヒメ、カレン、お前ら今にも好き勝手に歩きだしそうだけどよ。

頼むからさっきみたいなことはするなよ?」


二人を両手で指さしながら言ってやると、あちこちに視線を泳がせていた二人はすぐさま頷いた。

うーん、物珍しくて色々手が出ちまうのは分かるんだけど、加減ってものがなぁ。


「シムル―、こことかどう?」


「ん?

おぉ、ここ良さそうだな」


テーラに呼ばれてそちらに駆けていけば、乾燥した動植物を扱っている露店があった。

多分俗にいう乾物を扱っている店だと思う。

干し肉、薬草、香草……などなどが数多く置いてある店だった。


「ちなみにだけど、ヒカリムシと太陽苔って、乾燥していても使えるの?」


「まぁな。

ちょっと弄って合わせればいいだけだし」


俺は店の中をぐるりと回ってみるが……目当ての品は見当たらねぇな。

山の中にあるものを扱う店だからか、ちらほらと見覚えがあるものは置いてあるんだが、それでもだ。

予め探す物の特徴を教えてあるソラヒメやテーラに目をくれるが、二人とも首を横に振るだけだった。


「うーん、じゃあ次か……」


「そこの若いの。

困っているようじゃが、何かお探しかな?」


店の奥から現れたのは、この店の主らしい婆さんだった。


「ウッス。

ヒカリムシと太陽苔って言うやつを探しているんすけど、無いっすかね?」


すると婆さんは、少し待てと言って店の奥にある棚をガサゴソと漁り始めた。

……埃凄ッ!

カレンがゴホゴホと咳をしながら店から飛び出すのがちらりと見える。


「……すまんが若いの、今は在庫が無い様じゃ。

別を当たってくれ」


「あぁ……ゴホッ、こっちこそわざわざ探してもらって悪かったっすね」


「そうじゃ、この通りの先にモアブル魔道具店と言う店がある。

そこは魔道具だけでなく、魔道具の材料も数が揃っておる。

そちらに行かれてはどうかの?」


「ゲホッ……あぁ、どうもっす」


婆さんに手を振りながらテーラと共に店を出る。

ソラヒメは軽く咳をしながらも、律義に一礼をしていた。


この光景だけ見てると、本当に真顔で男の腕を折らんばかりに叩きつけていた奴には見えねえな……。

まぁ、ソラヒメにもそういう日があるっつーことでいっか。


「あれ、カレンちゃんは?」


テーラふとが辺りを見回しながら俺に聞いてくるが、俺もそう言えばと辺りを見回すことしかできない。


「……まさか迷子か!?」


さっき店から飛び出して、どっかに行っちまった、とか。

クソッ、まさかこんなにも早くまた問題発生とは、一難去ってまた一難とはよく言ったもんだぜチクショウ!

こんな事ならカレンを引き留めておけばよかった!


『土地勘のないカレンなら十分にあり得ますね……。

しかし、まだ遠くには行ってはいない筈ですから、今すぐに探せば問題はないかと』


「でも、こんな人ごみの中をどうやって探すの!?」


若干顔を青くするテーラに、俺は意気揚々と答えてやる。


「こうするんだよ!!!」


俺は一跳びで背の低い露店の屋根へと跳び、そのまま奥の建物の屋根に跳び移る。

そしてそこそこ高めの建物の上まで一気に移動してから、目を凝らす。


セプト村に居た時には、高い木の上から目を皿にして野兎みたいな獲物を探していた。

その時の要領で、じーっと人の海の中からカレンだけを正確に……見つけた!


「また何でカレンは追われてるんだ!?」


近くの路地裏を駆けるカレンと、それを追うローブを纏った三人。


「こうしちゃいられねーや。

ソラヒメ、テーラと一緒に後から来てくれ!」


ソラヒメと飛んでいる時のように、俺はソラヒメに念話を送る。

大声を出しても王都の喧騒が邪魔をして、上手く声が届かないと思ったからだ。


『分かりました!!』


ソラヒメの返事を念話で聞いた俺は、一気に屋根の上を駆ける。

ソラヒメにはルーンを通して俺の位置が分かるようになっている。

俺が先行しても何の問題もないと言う訳だ。


「行くぞッ!」


屋根と屋根の間を駆け抜け、煙突に手を掛けながら方向転換、勢いを殺さず空中に躍り出て……最短距離でカレンのもとを目指す!

空中で一回転しながらバランスを取り、俺は上からカレンとローブの三人衆の間に割り込もうとした……その刹那。


「ハァッ!」


見覚えがあるようでないような……中途半端に違和感のある影が横の路地から現れ、カレンを追う三人衆と対峙する。

そいつは瞬く間に剣を引き抜き、一筋で真ん中の一人を地に伏せた。

更に返す刃で左の一人を沈め、最後の一人が魔法を使おうとした瞬間。


「フッ!!」


そいつは魔法陣を展開して自らの体を強化し……最後の一人を発動中の魔法諸共叩き切った。

それと同時に、俺の体は浮遊感から解放され、ストンと地面に着地する。


「お、おにーちゃん……?」


カレンは急に目の前に現れた俺に、目を白黒させている。

俺はカレンの前に立って、たった今三人を伏せたそいつとの間に入る。


「悪いな……助かった」


若干警戒しながらそう言うと、そいつは剣を納めながらゆっくりと振り返って俺に歩み寄って来る。


「全くだ。

貴様、ちゃんとそこの彼女を守ったらどうだ?

追手がかかる事くらいは分かっていただろう」


そいつは「彼女を」の所でカレンを指しながらそう言った。

――追手とか言ってたしこいつ、内情を知っている奴か?


「あぁ、そいつはま……ぁ……?」


そいつの顔をよく見た途端、違和感の正体……もとい目の前の人物の正体に気が付いた俺は、盛大にブッハっと噴き出した。


「おっ、お前……クッ!

制服着てないと、本当にイメージ変わるなオイ!」


ーーダメだ、堪えきれねぇ!

普段との差があまりにもあり過ぎるッ!!!


「シムル、貴様……!

笑うんじゃない!!」


腹を抱える俺に赤面しながら詰め寄って来たのは、誰あろう生徒代表パツキンだ。

それも今日は貴族のご令嬢っぽいドレスで、髪も降ろしていた。

制服を着ていた時の硬い雰囲気がなくなっていたから、本当に誰だか分からなかったが……こうして改めて見ると……。


「お前、本当にお嬢様みたいだな!

と言うか、王都のお嬢様ってドレスで剣振るのか?」


「ええい、貴族の娘で悪かったな!

だから笑うのをやめろっ!!」


この後俺はソラヒメ達が到着するまで、生徒代表パツキンが突っかかって来た事とかが何かもうどうでも良くなるくらい笑い転げた。

その間生徒代表パツキンがずっと赤面していて、より面白かったのは言うまでもない。




ーーちなみにこれは後で聞いた話だが、さっき生徒代表(パツキン)が振っていた剣は模擬戦闘(デュエル)用に幾らか切れ味を落としたものだったらしく、生徒代表(パツキン)の技量もあって切られた三人は打撲程度で済んだとかなんとか。

カレンの手前、あまり過激な事にならなくて良かったと思う俺であった。

本作の書籍は10/10発売です!

よろしくお願い致します!!

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