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5話 やっぱり相棒は規格外だった

書籍化決定しております、皆様ありがとうございます!

「うおお……」


――またすげえ勢いでソラヒメの魔力が戻っていくなぁ。


ソラヒメが星の光に含まれる魔力を吸収し始めて、数分が経過した。

辺り一面の光が魔力と一緒にソラヒメに集まって、ソラヒメの輝きは秒読みで強まる。

それに伴って、光を失う周囲一帯の空間は、より暗くなっていく。

ソラヒメが星の光から魔力を吸収するのはもう何度も見てるが……こんなに凄まじい勢いで魔力を集めるソラヒメを見るのは初めてだ。


莫大な量の魔力が凄まじい勢いで、ソラヒメに吸収されていくこの光景を例えるなら……枯れた湖に、川の水を一気に流し込むイメージだ。

一切の滞りなく、ソラヒメの体内の魔力は膨れ上がっていく。


「さて、俺もそろそろnearly equalの準備を……ん?」


ソラヒメの体内に溜められる魔力量はそろそろ限界の筈なんだが……何でまだこんなハイペースで魔力を集めてるんだ?

普段とはまるで違う風に見える魔力吸収について聞くために、俺はソラヒメに声をかけた。


「ソラヒメ、お前これ以上の魔力は体に入らないだろ?

これ以上集めても無駄じゃねーの?」


前にテーラの魔法陣をこじ開けた時は、ソラヒメ本人が、一度集めた星の魔力は使い切れないと簡単に霧散する……とか何とか言ってなかったっけ。

なのにまたどうして、こんなに無駄なことをするんだか。


『いえ、まだまだ魔力は必要です。

今回は、魔力はいくらあっても足りないくらいですから。

だからこそ……限界を超えて、魔力を集められるだけ集めます』


「いやいや、話聞いてるか!?

だからこれ以上はお前の体に魔力が入りきらないだろって!?」


話を一切聞いていないようなソラヒメの返事に、俺は声を荒げて突っ込む。

魔力を保持できる量に限界突破なんて概念はねーって。

しかし、ソラヒメは俺の反応を予想していたのか、ふふんと鼻を鳴らした。


『入りきらないならば……こうすればいいのですよ!』


ソラヒメが上げるのと共に、ソラヒメの角と翼が、一層輝きを強めた。


「うわ眩しっ!」


眼を思わず腕で覆うほどの光量が、俺の目の前で炸裂する。

俺は目を瞑ったまま、しばらく目を慣らしてから……目を開く。


「お前、どうしたこれ!?」


『ええ。

満天の夜空限定の大技、と言った筈ですよ?

これが大技の正体です』


自信ありげにそう語るソラヒメの容姿には、多少の変化があった。

俺が「これ」と言ったのは、ソラヒメの角と翼だ。

ソラヒメの額から生える一角と、俺の真横の翼が、集めた光によって巨大化していたのだ。

そして、周りの光を吸って、それらはまだまだ大きくなっていく。


それを見て、いろいろと俺は合点がいった。


「成る程な。

これで魔力を大量に蓄えられるって訳だ!」


基本的に、生き物は自分の体の中にしか魔力を溜めることができない。

体の外にある魔力は、使わないと簡単に逃げるからだ。


――けど、星の光を自由自在に操るソラヒメには、そんな常識は通用しないらしい。

試しに解析スキャンしてみると……ソラヒメは一角と翼を軸にして、魔力を固定していた。

あまりに高度な技術すぎて、それ以外の詳しいことはさっぱりだけどな。


何にせよ、確かにこれならソラヒメの魔力容量の限界を超えた魔力が保持できる。


『さあ、シムル。

そろそろお願いします!』


「おう、任せろ!」


俺はnearly equalの魔法陣を開放し、本格的にソラヒメに溜まる魔力の解析スキャンを開始する。

まずは魔力量……ソラヒメの通常限界の、三倍くらいの魔力量が集まっていることを確認。

……山三つを吹き飛ばせる魔力が溜まってるだけで、もうめちゃくちゃなんだが……何かもう慣れた。

ソラヒメが魔法とか魔力に関して常識外れなのは、もういつもの話だしな。


次にタイミングだ。

ソラヒメがブレスを溜めるタイミングで、一気にnearly equalの魔法でソラヒメに魔力を流し込む。

この魔力を流し込む作業は前にテーラの時に似たようなことをしたから、どうにかなるだろう。


後は……そうだな。

このままだと、ソラヒメの魔力を近似した瞬間に俺の体が魔力で潰されそうだから、まずは俺の体の強化だな。


「nearly equal:星竜骨格スターライトドラゴスケルトン!」


魔法陣から読み取ったソラヒメの体の魔力耐性を俺の体に組み込んで、そのまま魔法陣でソラヒメの全魔力を近似して溜め込み……準備完了だ。


「いつでもいいぞソラヒメ!」


ソラヒメの限界の三倍の魔力ってだけあって、俺の背中からも翼のように光が生えている。

……案外形の維持が難しいな。

こりゃ気を抜いたら、魔力が爆発しそうだ。


『分かりました……では!』


ソラヒメが口を大きく開け、口元に青い魔法陣を展開する。

その魔法陣はソラヒメの魔力を吸収して次第に大きくなる。

それに合わせ、俺は自分の魔法陣をソラヒメの背に当て、ソラヒメに魔力を送っていく。


――オイオイソラヒメ、魔法陣に魔力を送りながら、まだ魔力を吸収してんのかよ!?


ソラヒメの生み出した魔法陣には、既に山六つを吹き飛ばしても余りあるくらいの魔力が溜まりつつある。

だが、それでもソラヒメの魔力吸収は止まらない。


ーーそろそろ危ねぇだろ!


「ソラヒメッ!

流石にこれ以上はお前の体が保たねえぞ!

俺のnearly equalも含めて、お前の体とお前が維持する魔法陣に、とんでもない勢いで魔力が集まってるの、分かってるか!!」


その上、ソラヒメが保持してる魔力量を考えると……もうこれ以上は無理だ!


『そうですね……!

もう少し魔力が欲しいところではありますが……ここで放ちます!!』


ソラヒメは惜しげにそう呟き、ソラヒメがさっきブレスで壁雲に開けた、大穴の中心まで降下した。

そしてそのまま、魔法陣の魔力を。


『いきます!』


文字通り、暴発させる勢いで解放した。


「うおォォォォォォォ!!!」


体が引きちぎられるかのような衝撃が俺を襲う。

吹き飛ばされない様、俺はソラヒメの背にしがみ付く。


だが、ソラヒメは止まらない。

地平線へ一直線に放った雷撃……ではなく、最早巨大な光の柱となったブレスを維持したまま、水平方向に一回転した。


当然、その光の柱の射線上にあるものなど……物質である以上、その破滅の光に耐えることなど出来る訳がなく。


壁雲は跡形もなく、完全に薙ぎ払われた。


「……終わったか?」


ソラヒメの背中から俺が起き上がった時には、どの方角にも雲など存在しなかった。

満月の目立つ、広くて大きな空だけがあった。


――本当に天気が変わっちまったよ。


脱帽って言い方が一番良いんだろうな、こういう時って。

流石っつーか、なんつーかだ。


『……ふう。

これは私の父から教わった、竜王の家系秘伝の荒業なのですが……成功して良かったです』


ちなみに、あれだけの大魔力を消費した当のソラヒメは、息切れ一つしていなかった。

それと父って……もしかして伝説の竜王か?

……今とんでもないことを聞いた気がするが……今はそうじゃないな。


「お前、疲れてねーの?」


これだこれ。

俺の目には、ソラヒメがここ暫く寝込んでた様には見えない。


『ええ。

星の魔力は消費しても、絶え間なく空から降り注ぐものですから。

私は夜空がある限り、息切れなど起こしません』


ソラヒメは本当に何事もなかったかのように、そう答えた。


「……つまり、ソラヒメがその気になればあれだけの大魔力を幾らでも放出できる、と」


『ただし、良く晴れた夜限定ですが』


「そんなの差し引いてもインチキみたいだなお前!?」


俺の叫びを聞いたソラヒメは、目を細めてじーっと俺を見つめて来た。

何だよ本当のことだろ!?


『そんなことを言えば……ほとんど制約も無しに、あらゆる攻撃や魔力を読み取って自身に加えることのできる貴方は何なのですか?

使用すれば負け知らずの魔法ではありませんか』


「知らねーよ!

お前の無尽蔵なスタミナに比べたら、まだ些細だろ!!

と言うか俺には一応、魔法陣を展開する魔力が切れたら何もできなくなるって制約があるからな?」


『貴方の魔力量なら、魔法陣を百回展開してもまだ余裕があるでしょう。

何を馬鹿なことを言っているのですか』


「余裕とかお前に言われたくねえ!」


俺達のいたちごっこみたいな話は、次第に熱を増していった。

――後で思い返しても、正直……お互いにしょうもなかったと思う。


……結局。


「いやいや、だとしてもお前の方がやべーよ!

絶対に!」


『いえいえ、貴方の方がおかしいです。

こればかりは譲れませんね』


お互いに、褒めてるんだか馬鹿にしてるんだか分からないこの会話は、夜が明けるまで、空の中で続いていた。

ブクマと評価にポイントをポチーってして頂けると泣いて喜びます。


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