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3話 嫌な予感も蹴散らしてやるさ

何とか2日連続投稿が出来て良かったです……それでは下の方に発表もあるので、どうぞ!!


「ふむ。

まずこの茶色の肉が……ハンバーグ、ですね?」


初めてナイフとフォークを使う割に、ソラヒメは形を揃えて小さめにハンバーグを切り分けていく。

やっぱり器用なやつだなぁ。

俺だったら大きくザックリ切って、ガッツリ食ってるし。


『はむ』


ソラヒメは目を閉じながらもしゃもしゃとハンバーグを味わっている。

ソラヒメの反応が気になるのか、俺だけじゃなく、テーラやカレンも自分の食事に手をつけず、じーっとソラヒメを見つめている。


『ごくん』


「……どうだ?」


ソラヒメがハンバーグを飲み込んだ後、感想を聞いてみると、ソラヒメはニコニコしながら言葉を続けた。


『そうですね。

まず食感はとても柔らかくて、臭みがありませんね。

シムルと一緒にセプト村付近にいた時に狩っていた大猪の肉とは大違いです。

癖がなく、深い肉汁の旨味が好印象ですね。

また、肉そのものの味は塩の味がします。

これがしょっぱい、と言う味覚なのでしょうか。

しかしながら、このしょっぱさは程よいものがあります。

海の水の様に塩辛くもないこの塩加減が肉と調和して、食欲をそそりますね。

これ程までに美味しいと感じる肉は初めてです』


「……おう、そっか。

それは……良かった」


ソラヒメの長い解説に、正直俺は「お、おう」としか形容出来ない何かを感じていた。

まぁ、こう言うのもソラヒメらしいと言えばソラヒメらしいんだが、こうもすらすらと感想を言えるのは、ある意味すげーや……。


「「……」」


もっと言えば、視界の端でテーラやカレンまで目を丸くしている。

多分、さっきまで俺もあんな顔をしていただろう。


『三人とも、どうしたのですか?

冷めないうちに食べるのでは無かったのですか?』


ソラヒメがあっけらかんとした顔で、俺達も食べる様に勧めてくる。

俺は我に返って、すぐにソラヒメへと返事を返す。


「あ、ああ。

そうだな。

冷めないうちに食うのが一番だな」


「そうね、早く食べましょ!」


「うんうん、お腹ぺこぺこー!」


俺達はそれぞれの反応をして、料理に手をつけ始めた。

うん、やっぱり食堂のハンバーグは美味い。

それにパンも一緒に食べると、これまた美味みが増す気がする。

時々付け合わせのサラダを食べると口の中がさっぱりして、とても良い組み合わせだって感じるな。


……それと、思ったんだが。


「……さっきのソラヒメの解説思い出しながらそれっぽい事考えると、いつものハンバーグの旨さが倍増しになる様な気がする……」


「……同感よ。

ソラヒメ様、やっぱり凄いわね」


凄いと言うか何と言うか……。

また不思議な話だとは思うけどな。


『二人とも、どうかしたのですか?』


こそこそと話をする俺達を見て、ソラヒメは再び不思議そうな顔になった。


「いや、何でもない。

やっぱりハンバーグは美味いって話をしてたんだ」


「うんうん。

そうですよ、ソラヒメ様」


何となく急いでごまかした風になってしまったが、その後、俺達は色々と喋りながら食事を進めていくのだった。


その時のソラヒメの顔は、とても楽しんでいるように見えた。

ソラヒメが楽しんで笑う顔って珍しいし、結構印象に残ったな。

もちろん、良い意味で、だ。




『さて。

三人とも食べていなかったものがあって気になったのですが……』


ハンバーグやパン、サラダを食べ終わった後。

ソラヒメは、お盆の端に乗るガラスの器に盛られた、黄色い物体を指差す。


『これは、何なのですか?』


ほお、ソラヒメ。

遂にここにたどり着いたか。

そう、それが俺やテーラがさっき献立表を見ながら言ってた……アレだ。


「ソラヒメ様、それはプリンって名前のデザートですよ。

食事の最後に食べるものです。

出る事は珍しいものなんですよ!」


テーラが目を輝かせながらソラヒメに解説する。


「月一のプリンが出るタイミングに食堂に来るとか、ソラヒメも中々運が良いよなぁ」


とか言う俺も、初日にプリンが出たんだけどな。

あの時食った味が、未だに忘れられねぇや。


『ええ。

自分で言うのもなんですが、私は運がとても良い方ですから』


「それって、例の星座占い的な意味か?」


ソラヒメが運って言うと……他に思いつかないな。

あの占いはソラヒメのよく分からない小難しい理論も混ざってるし、実は未だによく理解ができてねぇんだけども。


『そうです。

私は星の光と一緒に、運も集める体質の様です』


へー、と俺が返事をする中、ソラヒメがスプーンでプリンを掬って口に運ぶ。

つるりとソラヒメの口に入ったプリンは、直ぐにソラヒメの喉に通ったみたいだ。


『これは、美味しい……ですね』


ソラヒメは口を押さえながら、小さくそう言った。


「おう、皆の好物だからな。

最高だろ?」


俺が笑いながらぐっと親指を立てると、ソラヒメはさっきハンバーグを食べた時みたいに、笑顔で語り始めた。


『確かにとても美味しいです。

このプリンという食べ物が、皆の好物となる理由が分かります。

山になる熟れた果実以上の甘み。

ひやりと冷たく、程よい喉越し。

黄色い部分の甘みと茶色い部分のかすかな苦味が、口の中でふわりと広がって新しい甘味が作られます。

匂いも微かに甘い香りがして、正しく人を愉しませる為に生み出された、至高の食べ物ですね』


「あ、あぁ……そうだな!」


ソラヒメの長い解説は途中から頭の中に入らなくなったが、言いたい事は分かった。


プリンは超が付くほど美味いって事だよな!


「それじゃあ私も……うん、美味しい!」


ソラヒメの解説を聞いているうちに食べたくなってきたのか、テーラもスプーンを握ってプリンを食べ始める。


「私も私もー。

……甘いもの、久しぶりに食べたなぁ」


カレンもプリンをぱくつき始めるが……何か、顔が暗いな。

多分バーリッシュの事とか思い出してるんだろうと思うんだが……今はそっとしておいた方が良いのかもな。

そんな気がする。


「さて、そんじゃ俺もプリン食うかな」


俺も他の三人と同じように、プリンをスプーンで掬って食べ始める。

味だけじゃなく、ソラヒメの言う通りでつるんとした喉越しが最高だ。


「ただ……最近みたく冷えた日が続いてなきゃ、この冷たいプリンももっと美味かったんだろうなぁ」


「シムル、何か言った?」


「いや、何でもねーや」


テーラにそう言いつつ、俺は食堂の窓から夜空を見上げる。

雲ひとつない星空も珍しく無かったローナスの空は、今や月明かりも通さない位にどんよりとしている。

冷えた気温も相まって、少しきみが悪い。

こう言う雰囲気だと、ただ気分が下がるだけってだけじゃなく……嫌な予感がするな。

丸で、セプト村にいた時に感じた、デカいモンスターが襲って来る前の静けさみたいだ。


本当に、この胸騒ぎが胸騒ぎのまま終わってくれれば良い。

……けどな。


ーーまた何かよく分からねぇ厄介ごとが俺を襲うなら、纏めてぶっ飛ばして解決してやるよ!!


俺は決意を新たに、不穏な予感を蹴散らすのだった。

この度、「王都の学園に強制連行された最強クラスのドラゴンライダーは超が付くほど田舎者」の書籍化が決定致しました!

いつも見てくださっている方や応援してくださっている方、本当にありがとうございます!!

活動報告にも載せようと思うので、そちらもよろしくお願い致します。

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