2話 飯を食わせよう
作者がリアル定期試験編につき、昨日も間が空いてしまいました……しかし!
取り敢えず明日は必ず投稿しますので、よろしくお願いします!
「てなわけでソラヒメ。
お前、欲しいものとかあったりするのか?」
テーラと部屋に戻った俺は、早速ソラヒメに聞きたかったことを聞いてみる。
寝起きのソラヒメは眠そうに目をこすりながら、一緒に寝ていた毛布の中のカレンを起こさないように、ゆっくりとベッドから起き上がる。
……と言うか、今の今までずっと寝てたのかよ。
もう日が沈んでるんだが。
「起き抜けに何なのですか……私の欲しいもの?
そうですね……」
『うーむ』とソラヒメは唸った後、キリッとした顔で。
「やはり、空を覆うあの目障りな雲全てを消し飛ばす手段ですね。
あれだけは許せません」
「そう来るのか……」
それは物と言うか、どちらかと言えば周りの環境を変えろって話だ。
やっぱりソラヒメには物欲ってものが無いらしいな。
何というか……張り合いのない話だ。
「ソラヒメ様って、本当に欲しいものが無いんですね……」
『ええ。
こうして人間の姿にはなれるものの、そもそも私は竜です。
寧ろ、竜が物を欲しがると言うのもおかしな話だと思うのですが……どうでしょう?』
テーラの言葉に、ソラヒメは真顔……もとい、普通の顔で返事をする。
ソラヒメ……そこはきっぱり言う所じゃねーよ。
おい、何かテーラが微妙そうな顔してるじゃねーか。
「そういうものなの?」って、テーラの困惑した目が語ってるように見えるぞ。
「んむぅ……おにーちゃん達、少し声が大きいよ……」
『カレン、起こしてしまいましたか」
「悪いな」
カレンが布団からもそもそと起き上がって、大きくあくびをする。
んー。
最近この光景にも慣れて来たな。
いや、最初に会った時がアレだったし……こういう年相応のガキっぽい仕草が見れるのは、まあ良いことか。
「うん……。
ソラヒメおねーちゃん、本当に欲しい物はないのー?」
会話を聞いていたらしいカレンも俺達の話題が気になったのか、カレンはテーラに続くようにして、あくび交じりにソラヒメに聞いた。
それに対して、ソラヒメはやはり真顔で答える。
『ええ。
そうなのですが……どうかしたのですか?」
するとカレンは、何となく不満げな顔になった。
「ソラヒメおねーちゃん、そう言うの良くないよー」
『そうですか?』
目を丸くして聞き返すソラヒメに、カレンは珍しく難しい顔をしながら、両腕を組む。
「そうだよー。
欲しい物があるから、人は頑張れるんだよー?
ソラヒメおねーちゃんも、何か欲しい物を見つけた方が良いよー」
『うむ……しかし……』
カレンの舌足らずなアドバイスを、ソラヒメは全力で考え始める。
ソラヒメ、そこはそんなに真面目になる所じゃねーって。
欲しい物ってのはそもそも考えるものじゃねーし。
んー……何かソラヒメ、こういう所はずれてる気がするな。
何でだろ。
「……やっぱ、ソラヒメは飯があれば文句は言わなさそうだなぁ」
「それよ!」
俺のぼんやりとした呟きに対して、テーラが声を大きくして反応した。
何だよ、どうかしたのか?
「シムル。
例えばだけど……アンタ、ソラヒメ様に人間の食事をさせたことはあるの?」
「何だいきなり。
でもそれは……そう言えば、無いな」
言われてみれば、確かにソラヒメは普通の飯は食って無かった筈だ。
……筈ではあるんだけどさ。
「それがどうかしたのか?」
「ううん、ただソラヒメ様がそう言う人間的な活動をあまりしてないから、人間の欲みたいなものに疎いのかなぁって思ったの。
……ソラヒメ様、どうですか?」
テーラの冷静な推察に、ソラヒメは再び『うーむ』と唸り始めた。
『確かに……そう言ったことは、あまりしたことがありませんね。
ただ私自身、そのようなことについて、あまり必要性を感じませんので……』
「いやいや、勿体ないですよ!
せっかく人間の姿でいるんですから、人間の姿じゃないとできないことをやるべきですって!!」
後ろ向きっぽいソラヒメの言葉に、テーラが食って掛かった。
テーラの言う事も尤もだと思った俺は、テーラに加勢することにした。
「ソラヒメも美味い物食ったり、遊んだりすればいいじゃねーかよ。
少し楽しいこともしたらどうだ?。
そうだな……今晩はソラヒメを食堂に連れて行くってのはどうだ?」
「良いと思うわ!
せっかくだし、四人で食べましょ!」
「さんせー!」
俺達が話を纏めている間、ソラヒメは終始困惑した顔をしていたが、暫くするとため息をついて。
『全く……仕方がありませんね。
良いでしょう、今晩はこの姿で食事をします』
観念したような、困ったような微笑みを浮かべるのだった。
『ほう、意外にも人が少ないのですね。
これだけ大きな建物なら、中にもっと人がいるものだと思っていました』
食堂に入ったソラヒメが発した一言目がそれだった。
確かにこのだだっ広い食堂の中には、ぽつりぽつりとしか人は居ない。
「今は夏休みのど真ん中だからな。
大体の生徒は帰っちまってるから、最近の食堂はずっとこうだ。
まあ普通の日に来れば、あまりに人がごった返してて、お前もびっくりすると思うぜ?」
『成る程、そういう事ですか』
さて……それはそうと、ソラヒメの食券が必要な訳だが。
……まあ、適当に持っていくか。
流石にローナスの全生徒数からして、コックも全員の顔は把握できてないだろうし。
多少ちょろまかしても大丈夫だろう。
「ちなみにテーラ。
今日の晩飯は何が出るんだ?」
カレンと一緒に献立表をじーっと見るテーラに声をかける。
するとテーラは、瞳を輝かせながらニヤリとした顔になった。
「今日はハンバーグと……アレね」
「そうか……アレか」
俺もテーラにつられてニヤリとした顔になる。
そうか……随分といいタイミングだな。
ちなみに、カレンも献立表の字面から何が出るのか分かったらしく、瞳を輝かせていた。
『アレとは……何なのですか?』
俺達の反応を見たソラヒメが、不思議そうに首を傾げる。
「まあ、食えば分かる」
『?』
俺の一言に、ますます首を傾げるソラヒメであった。
『……これが人間の食事……ですか』
「ああ、そうだ。
いい匂いだろ?」
ソラヒメは、お盆に乗った食事を受け取ってからこうして席に着くまで、目を丸くして見つめていた。
そんなソラヒメの様子が珍しいのか、テーラやカレンはソラヒメを見ながらニコニコとしている。
『ええ、本当にいい匂いです。
遠く離れたところや、空から地上で何かを食べる人間を見ていた時には、何故あの人達はあぁも嬉しそうな顔をするのでしょう? と思っていたのですが……。
こうして食事を目の前にすると、彼らの気持ちがよく分かります。
これは……思わずとも、笑ってしまいますね』
ソラヒメはニコニコしながら食事に手を付けようとする。
だが、そんなソラヒメにテーラが待ったをかけようとした。
「待って下さい。
まだ食前の祈りが……」
「……テーラ、空気読めよ」
「……おねーちゃん」
テーラの待ったに困惑するソラヒメをちらり見た後、俺とカレンでテーラをじーっと見てやる。
すると、テーラはそんな俺達にたじろぎ、「うっ……!」と声を出す。
「わ、悪かったわよ……。
……ソラヒメ様、何でもないです。
冷めないうちに、頂きましょう」
『……?
そうですか。
それでは……えっと、確か食事にはフォークとスプーン、それにナイフを好きなように使うのですよね?』
「ああ、それは勿論。
……って、そうか。
いつもみたいな竜の姿の時はお前、前脚で抑えて丸かじり……とかだったよな」
『ええ。
ただ、この姿でそれはやらない方が良いのか、と思いまして』
「……そうだな」
ソラヒメが人間の姿でそれをやったら、まずハンバーグを素手で掴んで……ダメだな。
ああ、ダメだ。
幾ら俺でも、何かこればっかりは考えたくねえ!!
ソラヒメの外見がカレンくらいだったらまあ、ガキのやることとして見られたかもしれないが……いや、それでも怪しいな?
何にせよ、兎に角、何故か。
ソラヒメについて、そんな光景は考えたくねえ。
『何ですかシムル?
妙に消極的な答え方ですが……まさか、素手の方が』
「いやそうじゃない!
ソラヒメ、頼むから食器を使ってくれよな!!」
凶行に及ぼうとしたソラヒメに、俺は人間的な食事をするように促すのだった。
……いきなり素手で食おうとしなかった辺り、竜なのに」人間の常識があるソラヒメにある意味感謝だな、こりゃ。
最近小分けの投稿が多くなってしまって申し訳ないです……
リアルが落ち着くまで、もうしばらくお待ち下さいませm(_ _)m




