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18話 まぁ……なるようになるか

今回は短め

「はぁ……結局、こうなるのか……」


真夏日のくそ熱い部屋の中。

俺は筆記用具を握りながらうなだれていた。


「ほら、手を止めないの。

早く書く!」


「へいへい、わかってるっての……」


俺は現在、テーラに助けてもらいながら、目の前にある大量の課題の山と戦っていた。

なぜこんなことになったかと言えば……その理由はかなり単純だ。


ヒラカから帰って来た俺は、事情徴収やら何やらで……あちこち連れまわされて、しばらくの間は兎に角忙しかった。

……そうして、気が付けば試験期間は終わっていて。

マール先生が「シムル君は試験の代わりにこの課題を終わらせてください。勿論、この夏休みが明けるまでに」と笑顔で言ってきて、紙の束をどっさりと俺の前に置いて行った、と言うわけだ。


お陰で俺は他の生徒達が実家に帰ったり遊んでいる中、こうして延々と課題を処理している。


「……こうなるんだったら、試験勉強とかやった意味無かったな……」


「何を言っているのよ。

試験があってもなくても、授業でやった所はちゃんと復習しなきゃダメでしょ」


ため息と共に愚痴を呟くと、むすっとした顔のテーラの横やりが入って来た。


「はあ……クラス1位はいう事が違えや」


「ふふん、そうでしょ!

シムルももう少し私を見習って……」


「いや、褒めてねえし」


そんなこんなで課題を進めていく俺達だったが、ふとテーラが顔を上げる。


「そういえば、この前話に出てきたカレンちゃんだけど……。

結局、その子はどうなったの?」


テーラが放ったその一言に、俺も課題から顔を上げ、顔をしかめた。


「あー、あいつ……なんだけどさ。

大人連中に事情を詳しく……ソラヒメが話した後で。

……学園長やら王様やらが出した結論がだな……」


どう言ったらいいかと頭を搔きながら悩んでいた時、俺の部屋のドアがすっと、小さく開いた。


「あ、おにーちゃん!

本当にこのお部屋でお勉強してるんだねー」


『シムル、テーラ。

失礼しますよ』


この話と最近の悩みの原因が、ソラヒメと一緒にひょこっと顔を覗かせる。


「ソラヒメ様、どうしてここに……と言うか、おにーちゃん!?

アンタ、妹が居たの!?」


「そんなわけねーだろ。

と言うかそれ、また聞いた気がするな……まあいいや。

あいつがカレンだ」


「おねーちゃん、こんにちはー」


子供ガキ特有のかわいい声を出しながら、カレンはソラヒメと部屋へと入って来る。


「こんにちはー。

そうよね、こんなかわいい子がシムルの妹な訳が無いわよねー……え?」


カレンを見たテーラはニコニコしていたが、次の瞬間にはいきなり目を丸くし始めた。

忙しい奴だな。


「シムル!?

この子、ヒラカを襲ったって話だったわよね!?」


「そうだな」


「そうだな、じゃないわよ!!

何でこんな所にいるのよ!?」


……まあ、テーラの反応は至極真っ当だ。

戦争相手の国の概念干渉ノーネーム使いにして……どうも今までもユグドラシルの各地で、被害を多かれ少なかれ出していたらしい奴が、目の前に居るんだし。


「でもまあ落ち着けって。

こいつ、戦ってた時はバーリッシュの連中に……暗示? みたいなのかけられてたらしいぜ?

こうしてる分にはただのガキだって学園長も言ってたし、大丈夫だって……多分な」


カレンの体を調べた後で、暗示うんぬん、戦闘意欲を煽ってうんぬん……って学園長が言っていたよく分からない説明を、頭の中で思い出す。


「でもだからって……よく学園長や王様も、この子を自由にさせてるわね」


「……ああ、それがなんだけどよ……」


「おにーちゃん♪」


俺は張り付いてきたカレンを横目で見ながら、大きなため息を吐いた。


「学園長曰く、俺とソラヒメで見張っとけってさ」


すると理解の早いテーラは、「ああ、そういうことね」と理解を示した。


「つまり……カレンちゃんは下手に幽閉したりするよりも、アンタやソラヒメ様の近くに居させる方が安全だって、そう判断したのね」


「……まあ、そういう事だ」


口ではそう言ってみるが、この話に関しては、俺は未だに「本当にそれでいいのか学園長!? 流石に適当すぎねえか!?」と突っ込みたくなる。


それに……「バーリッシュの手練れが再びあの子を攫おうとした時や……あの子が万が一にも暴れた場合には、シムル君、君が何とかしなさい」と学園長に言われた後。

そんな面倒は御免だと、俺は学園長に抗議はしたのだが。

「君が連れてきたのだろう?」と、にっこりとした顔で言われて終わりだった。


ぐうの音も出ねえとはまさにあのことだろう。


「うんうん、だからねー。

おねーちゃん、これからよろしくー」


警戒をしていたテーラは、カレンの舌足らずな声に「……うーん……はあ」と俺と同じようにため息をついてから、困ったような笑顔を浮かべた。


「うん……分かったわ、カレンちゃん。

私はテーラよ。

これからよろしくね」


「うん!」


……本当に、この光景だけ見てると、ヒラカでカレンに会った時の光景が嘘みたいだな。

カレンからはあれだけヤバい匂いがしてたのに……バーリッシュの暗示が切れた途端にこれかぁ。

まあ、戦ってた時の様子からして、ソラヒメの背中にカレンを乗せた時にはもう暗示の効果が薄くなってた、とか学園長と話してる時にソラヒメが言ってたけど。


「これからどうなるんだか……」


あの長身の男のことも気になる。

正直、俺はとんでもない厄介ごとに首を突っ込んだ……いや、突っ込まされたのかもしれねえ。


「……」


戦争に巻き込まれるとか御免だ。


「シムルー?」


「…………」


とは言え……拾っちまったものは責任があるだろうしな。

カレンを適当に放り出すのも無責任だ。


『シムル?』


「………………」


うーん、これからどうなることやら……。


「おに―ちゃん?」


「……………………うん?

何だよ?」


気が付けば、三人が目の前まで迫っていた。


「ううん、なんだかシムルが珍しく悩んでるなーって」


『何か悩みがあれば聞きますよ?』


「おにーちゃん、悩まない方がいいよ?」


「お前が言うのかよ……でもまあ、いっか」


考えたって仕方がねえや。

なるようにしかならないし。

また何か面倒なことになれば……ソラヒメと一緒に片付けるだけだ。


「さて、まずは課題を終わらせるか」


『それはいい心がけですね』


「そうね、まずこの問題は……」


「んー、この紙に書いてあること、難しいねー」


そんなこんなで、俺はこれから夏休みを満喫すべく、課題を終わらせにかかるのだった。

次から3章です^^

それと、この時間帯に次から投稿しようかなと考えています

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