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17話 バーリッシュの斥候部隊……か

3章突入まで待ったなし!

……やっぱりシムル視点の一人称が書きたいですね……

「あー、やっと終わったな」


空中でソラヒメに受け止められたシムルは、空中戦を終え……無事大地に不時着した。

シムルは背筋を伸ばしつつ、nearly equalの魔法を解除する。


『そうですね……ただ、貴方の戦い方はもう少し考えるべきですね。

見ているこちらがはらはらとしました」


そんなシムルをじーっと見ながら、ソラヒメは文句を言う。


「いや、なら他にどうするんだ……って言いたいところだけどな。

お前にもけがをさせちまったし、もう少し考えなきゃな……」


ソラヒメは軽い火傷だと言っていたが、それでも痛いものは痛かっただろう。

そういったことを思いつつ、シムルは頭をかきながら珍しく反省するのだった。


『私の傷は先ほども言った通り、大したことはないので一旦置いておきましょう。

問題は……彼女ではないでしょうか』


そう言ってソラヒメが目を向ける先には、ソラヒメの背から降りて、地面へとへたり込むカレンの姿があった。


「それもそうだな。

オイガキ……じゃなくてカレン、だったか?

お前、バーリッシュがうんぬんって言ってたけど、その辺詳しく聞かせろよ」


するとカレンは、目を伏せながらシムルへと質問をする。


「ならおに―ちゃんは……バーリッシュの皆について教えたら、私に乱暴なことしない?」


乱暴なこと、と聞いて、シムルはばつの悪そうな顔をする。

確かに戦闘中は何度かカレンへと攻撃を放ったシムルだったが……それはカレンを止める為であり。

自らの攻撃が阻まれ、カレンに届かないことが前提の攻撃であったのだ。

……ただし。


――やられた方からしてみれば、殺されかかったと思っても仕方がねーか。


事実、シムルはカレンへと、金属を融解させるだけの威力のある攻撃を何度も放っていた。


「……あぁ、もう乱暴なことはしねーよ。

幾ら警備隊の連中を殺したのがお前だからって、無抵抗のガキに手を上げるほどバカじゃねえつもりだ」


ただ、と付け足し、シムルはカレンに対する視線を強める。


「お前がやったことに対しては、まあ……俺だけじゃなくて、他の連中も気分を悪くするだろうよ。

そこについては、お前が反省するところだし、反省しとけ」


「……うん」


口調を強めたシムルを見て、カレンも自分の行いを省みたのか、カレンは語尾を細めながら答えた。

また、そんなシムルを見たソラヒメは、目を丸くしていた。


「何だよソラヒメ、俺が説教をする所、そんなに不思議かよ?」


『ええ。

……貴方のことですから、そう言った話はきっと、私に丸投げするのかと思っていたのですが……』


ソラヒメからそんな一言を聞いたシムルは、「オイオイ、そりゃ酷い良い様だな」と続ける。


「けど……そうだな。

俺もガキの頃はよく親父に怒られてたな、って思ってな。

……こいつほどの悪ガキでもなかったけど」


そうだなー、何て言えばいいか……とシムルが首をひねっていると。


『なら貴方は、警備隊を殺した彼女を……表現は悪いですが、倒すのではなく、諭すことによって行動を正させよう、と?』


「まあ、そんな所だ。

流石にここまでやっちまったもんは取り返しがつかないけどよ。

でも……だからって、ガキを殴るのは、それも何か違うだろ?」


『そうですね。

この少女の処遇がどうなるのかは分かりませんが、確かに子供を殴るのは良いことではありませんね』


シムルの言葉に賛同するソラヒメを見て、カレンは目を丸くする。


「えーっと、だから……。

おに―ちゃんたちは、私に痛いことを……」


「だからもうしないっての。

……殴ったりしないから、まずはお前の事情を聞かせろ」


カレンはこくんと頷き、口を開こうとした……その瞬間。


『……シムル!!!』


「……nearly equal!!!」


――次から次へと、何なんだかな!


ソラヒメの叫びと共に、シムルはnearly equalの魔法を発動する。

魔力を惜しげなく使い、自分やカレンを中心にした直径30メートルほどの巨大な魔法陣を発生させる。

同時に解析スキャンも発動させ、魔法陣内に飛来した異物……火炎の魔法弾の、向かってくる方向やその威力を読み取る。


「おらァッ!」


シムルは身体を反転させ、背後から迫る魔法弾を回し蹴りの要領で、力いっぱい右脚で蹴り上げる。

その直前で右脚にnearly equalの魔法陣を展開させ、その魔法弾を相殺し……爆砕する。


「くっそ!

またどこのどいつだ!?」


爆炎の煙が立ち込める中、シムルはあたりを伺うが、それと同時にソラヒメは行動を起こしていた。


『ハァッ!』


ブレスを稲妻状に拡散しながら、魔法弾の飛んできた方向を薙ぎ払ったのだ。

その直後、何かがソラヒメのブレスの射程上へと飛び退いた。


「いやはや、今の攻撃もやはり止められてしまったか……」


「誰だ!?」


地面に着地した影を見て、シムルが声を荒げる。

辺りは薄暗く、シムルからはその影の姿は良くは見えない。

だが、その声の質は男で、なかなかの長身であることは、シムルにも見てとれた。


「いやはや。

誰と言われても……ね。

名乗るのなら……そうだね。

その子の言っていた『バーリッシュのせっこーぶたい』と言うのが正しいかな?」


ーー新手か。


シムルは油断なく構えを取りながら、男へと向かい合う。


「またバーリッシュかよ……それで、俺に何の用だ?

……そっちから手を出してきたんだ、俺にぶん殴られても、文句は無いよな?」


「いやはや……私が用事があるのは君ではなく、そこに居るカレンちゃんだ。

……カレンちゃん、どうして撃たれたのか、わかっているね?」


男がカレンの名前を出してきたことに反応したシムルが、ちらりと後ろのカレンを見る。


――震えていやがるな。それに、カレンを狙った……だと?仲間じゃないのか?


不可解な点について、シムルが男に問いただそうとするが、シムルが口を開こうとした時、カレンが口を開いていた。


「……うん。

おに―ちゃんに、バーリッシュのことを教えようとしたから……?」


「そうだよ、分かっているじゃないか。

……いいかい?

幼いながらも、君は私と同じ軍人なんだ。

それなのに、君は我が国の機密について、敵国の人間に……それも概念干渉ノーネーム使いに漏らそうとした。

それは許されざる重罪だ。

それに、君は敗れ、敵国の人間に捕まった。

知っての通り、我々はそうやすやすと敵国に、概念干渉ノーネーム使いを奪われるわけにはいかない。

君の監視役として、こうなってしまった以上、私は今ここで君を殺さないといけな……」


『させると思いますか?』


長々しい男の声に割り込んだのは、ピリピリとしたソラヒメの声だ。

万人が震え上がるであろうその声音に対し、男は軽い口調で話を続ける。


「いやはや……これは伝説に名高き星竜殿。

なにゆえに貴方はその子を庇うのです?

貴方がたにとっても、その子は脅威であるはず。

それに、そんな子供からバーリッシュについての正確な情報など、聞き出しようがありませんぞ。

それでも、私としては万が一に備えてその子を消さないと……」


『黙りなさい』


怒りすら感じさせるソラヒメの声音はナンセンスだと言わんばかりの男の声を、ソラヒメが再び遮る。


『名も知らぬ男よ、貴方の言い分からは、仲間である筈の彼女を救うという気概が感じられません。

聞いていて不快です。

それに……私の相棒は、貴方のような手合いが大嫌いですので」


男がソラヒメの言い分に対し、何か反応をしようとした次の瞬間。


「ああ、全く……テメエの言い分は、聞いてて反吐が出るぜ!」


夜の闇と、先ほど発生した爆炎に紛れたシムルが、既に男のすぐそばまで走り寄っていた。


「食らいやがれ!」


シムルは男を殴りつけようとするが、男はシムルをすり抜けるようにして、シムルの間合いから離れる。


――こいつ、ソラヒメの雷撃を躱すだけあって速えな。

近寄ったのに顔も見えなかった。


シムルは再び構えるが、それを見た男は両腕を上げた。

唐突な男の降参のサインを、シムルは訝しむようにして睨みつける。


「……どういうこった?」


「いやはや。

その子を救え、と言われても。

……ユグドラシル王国最高峰のドラゴンライダ―とその相棒を相手に、どうカレンちゃんを取り返せと言うのかね?

どういうわけか……敵のあらゆる攻撃を反射し、自在に扱う概念干渉ノーネーム使いに、本物の星竜が相手など……どちらか片方だけですら、一軍を相手どれるだけの戦力だよ?

それを私のような斥候の魔法使いが戦おうなど……君は、自分が何を言っているのか分かっているのかね?」


「知るか!!

と言うかお前、言ってて情けなくないのかよ?」


シムルの尤もな言葉に、男は両腕と共に肩を落とす。


「いやはや……確かに今の私は情けない。

だが……私は負けの決まった戦をするほど、能無しでもない。

だから……」


シムルは、言葉を続けようとする男の顔が……ニヤリと笑ったように感じた。


「ここは一旦、引かせてもらうよ。

……また会おう、ユグドラシル王国最強のドラゴンライダ―よ」


「なっ、おい待て……グッ!?」


――閃光か!?


男が投げた目くらましに、シムルは怯んだ。


『逃がしませんよ!!!』


ソラヒメが逃がすまいと雷撃を放つが……シムルが目を開いたときには、男の姿は無かった。


「追いたいけど……追った所で無駄か」


『ええ……私のブレスを二度も避けるような手合いです。

……既に遠く離れているでしょう』


ブレスを二度も避けられたソラヒメは悔しそうだったが、シムルもソラヒメも、今は男を追うべきではないと分かっていた。

それ以上に、やることがあったからだ。


「さて……帰るか。

……オイ、けがはねえな?」


「うん……でも、どうして助けてくれたの?」


自分へと振り返ったシムルに、カレンは心底不思議そうな顔をする。

それを見たシムルの答えは、一つだった。


「それは勿論、俺が助けたかったからだ。

俺はいつでも、やりたい様にやるだけだ。

それに、目の前でガキを殺されるのも、寝覚めが悪いだろうしな」


『それでこそシムルですね……さて、帰りましょうか』


「ああ、そうだな」


シムルはカレンを抱え、ソラヒメに飛び乗った。

カレンは「これからどこに行くのだろう」と暫く目を丸くしていたが、暫くしたら目を閉じ、魔法を使い続けた疲労感からか、シムルの腕の中で眠ってしまった。


――この寝顔だけ見れば、少しかわいいただのガキ……なんだけどなあ。

……どうしたもんかなぁ。


そんなことを思いながら、シムルは学園長にカレンのことをどう説明するのかについて、頭をひねるのだった。




ソラヒメは人目につかないよう、王都の街を大回りで飛行して、ローナスへと向かった。

その途中で夜が明けはじめ、シムルは目を細める。


「あー、もう朝か。

……帰ったらゆっくり寝るか」


『ええ、私もゆっくりしたいです』


群青色の空の中を、彼らは駆けゆくのだった。

プロットは出来てるので早く3章あげます()

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