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16話 竜紛いをぶっ飛ばす

2章の終わりが見えてきました。

早い所3章入りてEEEEEE

「ッ!? 何だよこれ!?」


カレンが放つ規格外とも言える魔力を感じ、さしものシムルも多少たじろぐ。


ーーこれから何を始めようってんだよ!?


ただ魔量の量が膨大なだけなら、シムルはこれ程まで驚愕を露わにしなかっただろう。

魔力量そのもの以上に……その質が異常だとシムルは感じていた。


例えるならば。


『これ程までに濃い魔力……!

何をしようと言うのでしょうか……!?』


この魔力の質は、最早星竜のブレスのそれに近い。

だが、その魔力はブレスの様にただ「破壊する」と言う指向性であるようにはソラヒメには思えなかった。

……と、するならば。


「まさか、またデカブツを作ろうって言うんじゃないだろうな!?

流石にこれ以上作られちゃ、たまったもんじゃねえぞ!?」


カレンが再びmachine craftで何かを造ろうとしていることに気が付いたシムルは、その凶行を止めるべくカレンへと駆け寄るのだが。

カレンは魔法陣を展開し、魔法の詠唱を終えていた。


「machine craft:双頭混沌竜ツインヘッドカオスドラゴン!」


「くっそ!遅かったか!」


魔法陣の展開と共に、更に膨張した魔力量にシムルが目を見開く中。

魔法陣を二重に展開するカレンの周囲へと鉄くずが引かれ合うようにして集まり、更なる異形を形成する。


胴体、双頭の頭の次に四肢が形成され、背からは二対四枚の翼が生える。

赤く光る双眸と思しき空洞は、シムルとソラヒメを不気味に見つめている。


『『ギュォォォォォォォォォォォォォ!!!』』


「竜まで作れるのかよ!?」


『ワイバーン……と言うよりは、星竜に近い姿ですね。

まだ許せます』


「お前はそこまでワイバーンが嫌いかッ!」


ソラヒメの冷静な分析を聞きながらシムルが呆れる中。

混沌竜カオスドラゴンとカレンが呼んだその竜型の異形は、主人を背に乗せ、夜空へと飛びあがった。


「鉄のくせに飛ぶのか……。

本当に他の奴の概念干渉ノーネームってのは、訳が分からねえな」


飛行する竜型の異形から放たれる甲高い回転音に、シムルは顔をしかめながらぼやく。


「ワイバーンの姿ならきっと飛びませんでしたね」


「だからもうそこはいいっての!」


シムルとは別の意味で顔をしかめているソラヒメのワイバーン嫌いが極まるが、そんな彼らの声をかき消すようにして、カレンの声が響き渡る。


「私は……負けない!

死んじゃえ、数字のおに―ちゃん!」


「おいコラ!

ガキが人に死ねとか言うんじゃねえ!」


数字のおに―ちゃん、と言う言い方に引っ掛かりを覚えたものの、シムルはすぐにカレンへと攻撃を仕掛けようと構えるのだが。


『『グァァァァァァァ!!』』


竜型の異形がその双頭から、シムルとソラヒメそれぞれに光線状のブレスを放つ。

それらを回避したシムルは、ソラヒメに声をかける。


「くっそ!

このままじゃジリ貧だ……!

飛ばれちゃ攻撃だって当たりづらい。

……なあソラヒメ、この際だ。

ヒラカからもだいぶ離れたし、近場には誰も居ないはずだ。

ここで一発、やっちまわないか!?」


『……そうですね。

ここまで相手が厄介であるなら、仕方が無いと言えるでしょう!』


ソラヒメの顔は彼女が発した言葉とは裏腹に、とても生き生きとしていた。

遂に自らの本領を発揮できると、ソラヒメは魔力を開放する。


「な、何この光!?」


その魔力の解放と共に輝きだしたソラヒメを見て、カレンが竜型の異形の上で、まばゆい閃光に怯んで目を塞ぐ。

竜型の異形は輝きだしたソラヒメに対し、ブレスを二発放つ。


「させるか!」


ソラヒメに迫るブレスに対し、シムルはソラヒメの手前に飛び出す。


「nearly equal!」


放たれたブレスを二発纏めて、nearly equalで完全に相殺しきる。

その直後、光が収束し、シムルの背後で白く輝く竜の姿が顕現する。


『シムル、ありがとうございます』


「おうよ。さあ、一丁やろうぜ!」





「な、何が……」


光が収まり、竜型の異形上でシムル達を見下ろしていたカレンが、その姿を確認して目を見開く。


「せ……星竜!?どうしてこんなところに!?」


バーリッシュ帝国においても伝説上の存在として語り継がれる星竜が、絵本で見た姿のままで、カレンを見上げていた。


ソラヒメはシムルが飛び乗ったことを確認すると、その翼を広げ、天高く飛翔する。


「嘘……もうあんなに高いの!?」


瞬くうちに自らの頭上まで飛翔したソラヒメに対し、カレンは驚愕を漏らす。


カレンが駆る竜型は金属の塊でありながら、確かにユグドラシルのドラゴンライダ―の駆る竜と同じように飛行することが可能だ。

また、カレンはバーリッシュでそのような異形を造り出すよう「教育」されていた。


……だがそれはつまり。

所詮、竜型の異形の飛行性能はワイバーンと同一規格か、それを少し上回る程度のものであり。

竜の王である星竜ソラヒメには遠く及ばないということである。





『シムル!

あの竜型を落とすことは容易いですが……あの少女が竜型に乗っている以上、攻撃は出来ませんよ!』


「分かってるっての!

俺だって、ガキ相手にそこまでやるつもりはねぇよ!」


『ならどうやって……』


「こうするんだよ!」


ソラヒメが竜型の真上に飛翔したことを確認したシムルは、一息でソラヒメの背から飛び降りた。

目標は勿論、真下を飛ぶ竜型だ。


『なッ……!

シムル!!』


超高度からの飛び降り自殺とも言える行動をとった相棒に対し、ソラヒメが声を上げる。

すぐにシムルを追いかけようとするソラヒメであったが。


「大丈夫だっての!

ソラヒメはあの竜もどきの周りを飛んでいてくれ!」


飛行中に使う念話を通して聞こえたいつも通りの声に、ソラヒメは肩を……前脚を落とす。


『全く、貴方はいつも私に心配させてばかりですね……』


そうぼやきつつも、ソラヒメはいつでもシムルの援護ができるよう、シムルの落下高度に合わせながら飛ぶのだった。




双頭混沌竜ツインヘッドカオスドラゴン!」


真上のソラヒメを見上げていた最中、唐突に落下してきたシムルを見て、カレンは竜型に回避指示を出す。


「遅い!」


だが、竜型の異形は、シムルの不意打ちとも言える自由落下を回避しきることができず。


「おらよっと!」


シムルは、何とか竜型の尻尾の先に捕まるのだった。


「危ねえ、もう少しで落ちるところだった……うお!?」


尻尾の先で宙ぶらりんになったシムルが声を上げる。

尻尾を掴んだシムルを振り落とそうと、竜型の異形が空中で体をよじっていたからだ。


「もう!何で掴まるのー?落ちーちゃーえー!!」


「馬鹿野郎!

ここで落ちたら流石にヤバい……オイオイ、そんなのありか!?」


シムルが必死に掴まる尻尾に対し、竜型の異形は……その長い二本の首を伸ばし、シムルへと嚙みつこうと迫って来たのだ。


『『ギュァァァァァァァァ!!!』』


「舐めんな!この程度で……落ちるか!!」


そう啖呵を切ったシムルは必死に抵抗しようとするが、足場がない空中ではシムルと言え、踏ん張ることができない。

だからと言って、星竜咆哮で二本の首を焼き切れば、竜型そのものが地面へと落下しかねない。

進退窮まったシムルが、「それでも……ただやられはしねぇ!」二本の首へと特攻を仕掛けようとしたその時。


『シムルから離れなさい!』


ソラヒメが、竜型の異形の二本の首へと掴みかかった。

空中でもつれ合うようにして、白い竜と異形が絡み合う。


『シムル、早く彼女を抱えて下さ……クッ!』


首を抑えられた双頭から光が迸る。

至近距離から腹にブレスを浴びせられたソラヒメから、苦悶の声が上がる。


「ソラヒメ!」


『問題は……ありません。早く、彼女を!』


確かに星竜であるソラヒメの皮膚を覆う甲殻は、超高密度の魔力の塊であり、そうやすやすと攻撃を通さない。

だが……このままではいずれ、ソラヒメはブレスによるダメージを受けるだろう。

それを感じたシムルは、暴れ狂う竜型の尻尾から這うようにして、胴体部分へと移動する。


「さあ、やっとここまで来た……!

もう逃げられねえぞ、観念しろ!」


「嫌!

まだ負けないわ!

まだ……」


「何言ってやがる!

お前の体にはもうガラクタ共を造る魔力なんか、残ってねえだろ!!」


シムルはnearly equalの解析スキャン能力で、カレンの体内にほとんど魔力がないこと……つまり、完全にカレンの戦闘能力がなくなったことを確認すると、カレンを抱えて竜型の異形から飛び降りた。


「キャッ!?

何するの……おに―ちゃん、この高さから落ちたら私達どっちも死んじゃうよ!?」


「大丈夫だ!俺には頼れる相棒が居るからな!

だろ、ソラヒメ!」


『本当に貴方は人使いの荒い人です……ねッ!』


ソラヒメは落下する二人を追うために、絡み付きながらブレスを放つ双頭に、回転して尻尾を叩きつける。


『この……ふんっ!』


ソラヒメは双頭の内の片方を前脚で抑えつつ、後ろ足でその胴体を蹴り。


『ギャォォォォォォォ!?』


その結果……その抑えた片方の首を、引きちぎるのだった。


『シムル!!』


ソラヒメは引きちぎった首を投げ捨て、シムルとカレンへと急降下し、2人を背に乗せる。


「悪いなソラヒメ、大丈夫か!?」


『軽い火傷程度です。私の治癒能力なら、半日もしない内に治ります』


「つ、双頭混沌竜ツインヘッドカオスドラゴンのブレスを至近距離で受けて、半日もしない内に治るの……!?」


カレンがソラヒメの耐久性や回復能力に驚くが、まだ事態は収束したわけではなかった。


『グオォォォォォォ!!!』


「チッ、まだ追ってくるのかよ!」


連れ去られた主を追おうと、竜型の異形は残った一本の首でブレスを放つ。


「ハァ!?

このガキに当たっても良いっていうのかよ!?

……nearly equal!!」


シムルはカレンを抱えながらもソラヒメの背の上で光線を向かい打ち、見事に相殺する。


「数字のおにーちゃんの能力、やっぱり凄いねー」


「言ってる場合か!

あの竜のガラクタ、お前ごと俺達を狙って来たじゃねーか!

あいつ止めろよ!!」


抱えているカレンに対し、シムルがそう怒鳴るのだが。


「うぇぇ……怒らないでよ……」


涙目になったカレンを見て、シムルはカレンを抱えていない左腕をあたふたとさせ始めた。


「お、おぉ……悪い。

ついカッとなっちまって……」


『シムル、女性にはもっと優しくしてください』


――それわざわざ念話で送ってくることか!?


「お前はどっちの味方だよ!?

……また撃って来るぞ、ソラヒメ!」


『分かっています!』




ソラヒメを追いかけ続ける竜型の異形に対し、シムルは中々反撃できず、nearly equalによる反射以外では、ソラヒメの回避に頼りきっていた。

シムル自身、そんな状況には不服であったのだが……それは仕方が無いと言える。

何故なら……子供とは言え、人を一人抱えつつ、立ち上がる足場としては不安定な、回避行動をとり続けるソラヒメの上では。

……後方から自由自在に攻めてくる竜型の異形へと攻撃を当てることは、不可能に近かったからだ。




「それで……結局、お前からじゃ、本当にあのガラクタを止められないんだな?」


「お前じゃなくて、カレン!

……うん、敵だけを追うようにプログラムしたし、そうしろってバーリッシュの皆に言われていたから……」


『プロ……何だって?

まあいいや、兎に角、お前が止められないんじゃ……仕方がねえな。

……少しの間、ソラヒメに掴まっとけ」


「え……うん」


カレンはシムルに言われた通り、ソラヒメの背にぴたりと張り付く。

それを確認したシムルは、ソラヒメへと声をかける。


「ソラヒメ!

もう一回行ってくるぜ!」


『……ええ、この状況では……そうするしか、ない様ですからね!』


ソラヒメは回避に手いっぱいであり、シムルもnearly equalによる反射が手いっぱいである。

……とするなら。

シムルがとるべき迎撃手段は、たった一つだ。


「さあいくぜ!」


掛け声と共に、シムルはソラヒメの背から大きく跳躍し。

何事かと目を見開くカレンをソラヒメの背に残し、シムル自身は背後に迫る竜型の異形と空中で相対する。


「この追いかけっこにも飽きたし、終わりにしようぜ!」


シムルが突然眼前に現れた形となった竜型の異形は、シムルを迎撃するべくブレスを放たんとする。

しかし、シムルは既に、両腕に魔法陣を展開し終えていた。


「nearly equal:双星竜咆哮ツイン・スターライトバーストォ!!」


両拳を突き出すようにして放たれた光は、螺旋を描くようにして竜型の異形へと向かう。

そして、シムルはソラヒメから解析スキャンした星竜骨格が、星竜の能力が……自身にこう語りかけているように感じた。


――あの空を駆ける竜のまがい物を墜とせ。

――その体に、世界で最も高貴なる者の力が宿るのであれば。

――ここに、空の王たる星竜の威厳を見せつけよ!


「分かってらぁぁぁぁぁ!」


『グァァァァァァァ!!!』


竜型の異形は、シムルの放った双星竜咆哮ツイン・スターライトバーストが当たる寸前に、ブレスを放つことに成功するが。


『グェェェェェェェァァァァァァァ!!』


その様な小細工は、空の王の力の前には通用しない。

ブレスは何事もなかったかのように、光に呑まれるだけだ。

そうして竜型の異形は、鋼鉄の翼を溶解され、体のあちこちを衝撃によって空中分解されながら、大地へと墜落した。

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