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15話 纏めて片付ける

投稿を休止している間、少し執筆に関して勉強する機会がありました。

そこで「戦う時は主人公の視点よりも、3人称の客観的な視点の方が良いこともある」と言う事も知りました。


と、言う訳で、今回は3人称(客観)視点です!

「いきますよ!」


ソラヒメは鉄の異形たちの主人である幼女……カレンへと、両腕に溜めた雷撃を二発放つ。

閃光が夜の闇を切り裂いて進む。


『ギュルルルルルル!!』


その二発の閃光から身を挺してカレンを守るのは、当然カレンの作り出した異形の内の一体である。

魚のような体から、不揃いな鉄の脚を4本伸ばしたその異形は、その非生物的とも言える素早い動きで、一瞬でソラヒメとカレンの間へと躍り出たのだ。

それを見たソラヒメと言えば。


『……気持ちが悪い動きですね……。

体も鉄でできているとシムルは言っていましたし、本当に生物ではないのですね……!』


その鉄の異形への嫌悪感を露わにしていた。

ただし、このソラヒメの嫌悪感は、十人中十人が魚の異形の動きに対して抱くものであっただろうと記しておく。

それだけその魚の異形の動きには……見た者の背筋をぞくりとさせるようなものがあった。


「もう、早くそこの青いのを潰してよ!

そこの青いのが居るせいでおにーちゃんとも話せないし……本当に邪魔!!!」


『キュイイイイイ!』


鉄と鉄がこすれる音を咆哮として、魚の異形が主の癇癪に答えようと、ソラヒメへと突進を始める。

法則性の感じられないその脚の動きは、見た目からは考えられないほどの速度を叩き出し、自らより数周りも小さい人間の姿をしたソラヒメを押し潰さんとする。


『その程度!』


ソラヒメはその突進を横に飛んで回避する……しかし。


『ギュイイイイイイイ!』


『なっ!?』


突進を躱された魚の異形は、ソラヒメを追おうと、その足をもつれさせながらも方向転換をし、先ほどの突進を躱し終えたソラヒメへと再度突進を仕掛ける。

だが、ソラヒメもそれをただ見ているというわけではなかった。


『ならば、そのおかしな動きをする足を止めるまでです!』


自身へと向かう異形の脚を、ソラヒメは雷撃にて狙い撃つ。

ソラヒメの細腕から一直線に伸びたその雷撃は、狙い過たずに異形の脚へと吸い込まれるようにして炸裂した。


『ギュイイイアアアア!!!』


脚を爆砕された異形はその場に倒れ込み、暫くの間はその勢いのまま体を地面にこすらせ、その後でぴたりと動きを止めた。


『さて、次はあの少女ですね……ッ!?』


「machine craft:混沌獣(カオスキマイラ)!」


魚の異形を倒した後で、少女へと向き直ろうとしたソラヒメは、風を切る音が自身へと向かってくることを感じて大きく跳躍する。

跳び退りながらも、ソラヒメは自身へと攻撃を仕掛けたものの正体……巨大な鉄の鎌を4本持ったカマキリのような異形と、それに跨る幼女の姿を見た。


「もー。今の避けちゃうのー?」


『次々に鉄の異形を作り出すとは。……本当の姿にさえなれれば……!』


不満げなカレンを見据えながら、ソラヒメは口惜しそうにそう呟く。

ソラヒメの本来の姿はドラゴンである。

よって、ソラヒメは人間の姿での戦闘に不慣れなのだ。


――爪や尾を振るえたならば、ここまで雷撃に頼りきった戦闘をしなくてもいいものを……!


ソラヒメは再び夜空から星の光を吸収しながら、雷撃を腕にため込み……カマキリのような異形からカレンを引きずり下ろす算段を始めるのだった。


***


一つ目の人型、三つ目の熊型の戦闘において、ソラヒメとは逆に……シムルは全くと言っていいほどに苦戦をしていなかった。

二対一の不利を容易に覆すだけの力が、今のシムルにはあった。


――星竜骨格……やっぱ凄ェや!俺の体が、ソラヒメと飛んだ時に掴んだ雲みたいだぜ!


飛び跳ね、潜り抜け、回避し尽くし。

弾き飛ばし、受け止め、いなし切る。


それらの後に生まれた隙に……鉄の異形達の体を確実に削っていく。


自身の肉体技とソラヒメから受け継いだ雷撃を十全に発揮し、シムルは二体の異形を押していた。


『ギュイイイイン!』


「効くかこの野郎が!

nearly equal:鋼星竜拳スターライトメタルクラッシャー! 」


一つ目の人型の剛腕から金切り音と共に繰り出された、振り下ろすような一撃を、シムルはアッパーの要領で迎え撃つ。

シムルに攻撃をするその一つ目の人型は、シムルの数倍の体躯を持ち、その質量もシムルの数倍から十倍に差しかかろうと言うものだ。

だが、星竜骨格で強化されたシムルの体は、その一つ目の人型の一撃を難なく受け止める。

……その直後。


『ギイイイイイン!』


三つ目の熊型が、隙を見せたシムルの脇腹を穿とうと爪を振るう。

短く鋭いその一撃には、一切の無駄がない。

例えるなら……感情のない、ただ獲物を仕留める為だけの攻撃だ。

それでいて、こん棒のような腕から繰り出されたその鋼の一撃は、風を切るほどに素早い。

しかし、それに対応できないシムルではない。


「おらよッッッ!」


シムルは全身の筋力を隆起させ……あろうことか、アッパーで競り合っていた一つ目の異形の腕をつかみ、そのまま一つ目の体を迫りくる三つ目の一撃へと叩き込んだ。


ワイバーンに匹敵する重量を誇る二体の鉄の異形は、鋼の爪と甲高い音を立てながらかち合う。

シムルに振り回された一つ目を盾、三つ目の爪を矛とするならば。


この場に起こった矛盾において、敗れるものは必然的にただ一方。


『ギュルルル!?』


「ぶっ飛べェェェェェェ!」


シムルの振り回す一つ目の勢いに負け、三つ目の熊型はその自慢の爪をひしゃげさせながら、あらぬ方向へと飛んで行った。

そして、シムルは勢いのまま、一つ目の人型も天高く打ち上げる。


「テメエもぶっ飛べ!

nearly equal:加速星竜咆哮ブースター・スターライトバーストォ!」


『キュイイイイイ!!』


シムルが打ちあがった人型に対してとどめの一撃を打ち込もうとしたその刹那、一つ目もその胸部に膨大な魔力を充てんする。


「ハァッ!」


『キュオオオオオ!!』


加速星竜咆哮と魔法光線の発射は同時であった。

衝突する二つの光。

しかしながら、その両者は決して拮抗しない。

何故なら……既に勝敗は決しているからだ。


「ハァァァァァァァァ!!!」


シムルの放った、夜空を埋め尽くした光は。


『ギュァァァァァァァ!』


魔力光線共々、一つ目の人型をことごとく飲み込み、破壊尽し。

その体を、元の鉄くずへと還したのだった。


***


『フッ……!』


振り下ろされ、横なぎにし、自身を縦か横の真っ二つにしようとする神速の4本の鎌を、ソラヒメは次々に避ける。

その動作を繰り返しながらも、雷撃を矢継ぎ早に放ち続ける。


だが、それらの雷撃はカマキリの異形に当たった瞬間、霧散するようにして弾けてしまう。


「もーぉ、そんな攻撃、効かないよー。何回やるのー?」


『クッ……!』


ソラヒメは自身の雷撃が、あまり効果がないことに対して、焦りを感じ始めていた。

シムルの星竜咆哮(スターライトバースト)の様に、雷撃を一点に集中させる事が出来るならあのカマキリの異形を貫くことはできるだろう。

それはソラヒメにもよく分かっているのだが。


――回避に手いっぱいで、上手いこと雷撃を集中させる事が出来ませんね……!


慣れない人間の体での戦闘を続けた結果として、大きな外傷こそ未だにないものの、ソラヒメの疲労はピークに達しようとしていた。


元々が人間の体のシムルとは違い、ソラヒメは竜から人間の体へと姿を変えているのだ。

魔力的には元の星竜と同等の力が出せると言えども……身体的な問題は仕方がないと言える。


『ですが……シムルが戦っている以上、私も……!』


疲労のたまった体をおして、ソラヒメが再び仕掛けようとしたその時。


「さあ、そろそろ青いのを潰しちゃって!カマキラ……キャッ!?」


『ギュァァァァァァァ!?』


ソラヒメの目の前で、カレンとカレンの駆るカマキリの異形が悲鳴を上げる。

カレンはカマキリの異形の背から放り出され、「むぎゅっ!」と言う声と共に大きく投げ出される。


と言うのも。


『これは、シムルが戦っていた熊……ですか』


ソラヒメはカマキリの異形の上に降って来た三つ目の熊型と、その直後に天へと放たれた膨大な光量を見て、『シムルの方は上手くいったようですね』と頷いた。


『『ギュルルル……』』


そんなソラヒメの横で、カマキリの異形と熊型は主人を助けようと、重なり合いながらも再度活動を始めようとする。


そんな二体を見て、ソラヒメが声を上げる。


『動きが止まれば、私の……いえ、私たちのものです!

ですね、シムル!!』


「おうとも!

いくぞ、ソラヒメ!!

nearly equal:星竜刃スターライトカッター! 」


ソラヒメに加勢するべく走り寄って来たシムルは、右腕に魔法陣を展開し、そこから刃状に電撃を発生させる。

それと同じように、ソラヒメも雷撃の刀を自身の腕に発生させた。

そして二人は、一息で二体の異形へと飛び掛かり。


「『ハァッ!!』」


交差させるようにして、高密度魔力の刃を以ってして、異形を切り裂き。

一つ目の人型と同様に、それらの体を鉄くずに還した。


***


「そ、そんな……!」


machine craftによって自らが生み出した混沌獣カオスキメラが倒されたことに、カレンは愕然としていた。

今までカレンが経験してきた戦闘において、彼女は一方的に踏みつぶす側であった。

ただひたすらに薙ぎ払い、決して破壊されることのない鋼の従僕を従え、戦場を蹂躙するだけの存在だった。


だからこそ……自らが敗北しようとしているこの瞬間を、状況を、「正しく」理解することができない。


「オイガキ。……もう終わりだ」


『観念しなさい』


そう言い、自分の方へと近づいてくるシムルとソラヒメを見て、カレンは久ぶりに体験する恐怖に襲われていた。


シムルとソラヒメは、決してカレンをいたぶろうとして近づいているのではない。

ただ、カレンから事情を聞き、その行いを正そうとしているだけだ。


しかし……カレンにはそんなことを「正しく」察する余裕がない。

眼前の二人は、自分の命を刈り取ろうとしているようにしか見えない。

そしてまた……カレンがバーリッシュ帝国で聞いた「敗北者には死あるのみ」と言う言葉が、彼女自身に強くのしかかっていた。


――このままじゃ……死んじゃう!


そう感じたカレンは。


「うううっ……わァァァァァァァ!!!」


死への恐怖から、限界を超えた魔力を開放するのであった。

3人称視点って書くの難しいですね……

それでも読者の皆さんにも伝わりやすい方が八茶橋としても良い事なので、3人称の書き方についてはまだまだ精進致します!

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