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14話 machine craft(改)

皆さんお久しぶりです!

活動報告にも書きましたが、3章を投稿する前に、まずはパパッと2章の手直しをしようと思います。

3章はちゃんとプロットを考えてあるので、近々……と言いますか、この際ですから2章の終わりから3章まで、これからバンバン上げていこうと思います!


またお願い致します!

星の光に貫かれた鉄の体の各所から爆発が上がる。

デカブツ体内の魔力と俺の加速星竜咆哮(ブースター・スターライトバースト)の魔力、更にソラヒメの雷撃の魔力がデカブツの体の中で混ざった結果、デカブツの体内の魔力バランスが崩れたらしい。

魔力容量(キャパシティー)を超えた魔力が爆発という形で次々に大気中に放出される。


「ソラヒメ!」


『ええ、爆発に巻き込まれないよう離れましょう!』


俺は苦しむ様にのたうち回るデカブツの背中から飛び降り、爆発の影響を受けない距離まで移動する。


『ギ、ギ、ギィィィィィィィィ!!!』


鉄と鉄が擦れる音や破断する音が辺り一帯に響く。

デカブツはその体を爆発と共に急速に崩壊させていき、やがてその体を支える足が折れると砂煙を盛大に上げながら地面へと横たわった。


『これで、終わりましたね……?』


「あぁ、多分な」


あれだけ体をボロボロにされればどんなモノでも活動は止まるだろう。

何よりデカブツの体内の魔力が急速に小さくなっていくのを感じる。

もうあの巨体を維持する事は不可能だろう。


「ううん、まだだよ♪

おにーちゃん♪」


「『へっ?』」


場違いな程に軽い鈴の様な声がどこからか聞こえ、俺とソラヒメは浮いた声を出してしまった。

声の質的には幼い少女の声だ。

と言うか、おにーちゃんだと?


「いや、俺の事じゃねぇよな」


「ううん、おにーちゃんはおにーちゃんだよ?」


俺の声を肯定する少女の声。

オイオイ、マジかよ。


『……シムル、貴方妹が居たのですか?』


ソラヒメが意外そうな顔で俺を見る。

そんな顔をされても困るのだが。


「そんな訳ねぇだろ」


俺の肉親は知る限り親父だけだ。

お袋は顔を知らないから何とも言えないのだが。


「そもそもどっから話しかけて来てんだ。

正体を現しやがれ!」


「もー、そんなに大声出さなくても出るもん!

怒らないの〜」


すると先程倒したデカブツの頭が左右にパカッと開いた。


「うおっ、マジかよ」


デカブツの頭から幼女が出て来やがった。

年は10歳位で、灰色が掛かった髪が月明かりに反射して妖精の様だった。


「……いやそうじゃねぇよ。

誰だお前?」


デカブツの頭が開いた事に驚いたり、少女に見とれたのもつかの間の事で、すぐに我に帰る。

本格的に誰だか分からねぇ。

見た目も似てねぇし、兄妹だなんて事は100%あり得ない。

かと言ってあんな幼女の知り合いは居ねぇ。


「うん、分からないよね〜。

だからまずは自己紹介をしなくっちゃ!」


オイ、やっぱ知り合いですらねーのかよ。

俺の内心の突っ込みを知ってか知らずか、幼女は涼しい顔をしながらスカートの両端を摘んで軽くお辞儀する。


「私はカレン。

カレン・シロエ。

バーリッシュ帝国の……せっこーぶたい?に入ってるんだ!

すーごいーでしょー?」


唐突に目の前の幼女がとんでもないカミングアウトを始めた。

話してる内容と見た目がここまで噛み合ってない事はそうそう無いだろう。


「バーリッシュだと……?」


あの幼女がバーリッシュの斥候など、冗談もいい所だが……現にあいつは王都を襲いに来たデカブツの中から現れた。

それに、デカブツと戦う前に脳裏にチラついた黒い翼、キマイラを思い出す。

どうにもおかしいと思ったが、あのデカブツはキマイラみてーな生体兵器だったって事か?

いや、それを聞く前に知らなきゃいけない事がある。


「お前、デカブツの中から出て来たけどよ。

警備隊が潰される所、見てたか?」


「デカブツ?

……あ!

グレアドゴランの事ね!

それは勿論だよ、だって私がグレアドゴランを操ってたんだもん」


やっぱあのデカブツを操ってたのはコイツか。

正直ここから先の話は聞かなくても分かるし、聞きたくもないのだが。

それでもここまで踏み入ったからには聞かなきゃいけないだろう。


「お前、人を殺して何とも思わない訳?」


「……人?

えーっと、それはココだと私やおにーちゃんの事を言うんだよね?

私、人なんて殺してないよ?」


口に手を当てながらうーんと唸る幼女。

会話が噛み合って居ない事が歯痒い。


「なら、質問を変える。

お前は自分が踏み潰した警備隊について、悪いと思ってるか?」


すると幼女はふふんと笑って俺に答える。


「もう、おにーちゃんは何を言ってるの?

人を殺して無いんだから悪いと思う訳ないじゃない。

人って言うのは私やおにーちゃん、それにバーリッシュの皆んなの事を言うのよ?」


幼女の目を睨みつける様にして見つめる。

それでもその瞳は臆する所が無く、ただ笑っていた。

純粋に面白いものを見る目だ。

そう、幼さ故の残酷さ、などと言う気休め程度のモノではない。

狂人以上のタチの悪さだ。

あの幼女は……ガキは。

自分が何をしたかを本当に分かっていない。


「……そうか、よく分かった。

ソラヒメ」


『はい、シムル』


「あのガキをとっ捕まえて説教するぞ!」


『当然ですね!』


俺達はガキに向かって飛びかかる。


「おにーちゃん!

私はガキじゃなくてカレンよ!

名前で呼んでよ〜」


「うるせぇ!

お前はとんだ悪ガキだ!」


一体どんな教育を受けてきたのかは知らないが、あのガキは今ここで価値観と倫理観を叩き直さないととんでもない化け物になる。

今ここで止めないと間違いなく後々の禍根になると俺の勘が警鐘を鳴らしている。


「悪ガキじゃないもん!

おにーちゃんなら、ちゃんと私とお話ししてくれるって聞いたから1人で頑張って来たのに……!

もう知らない!

横の青いのとばっかりお話しして……酷い酷い酷い!」


「お前が何言ってるか全然分からねーよ!

オラッ!!」


ガキの目の前に着地し、そのまま摑みかかる。

しかし、俺の腕は下からせり出した鉄の壁に阻まれた。


「チッ!?」


バックステップ1回で5歩分下がる。

このデカブツ、まだ生きてやがんのか……!


「もういいもういい!

来なきゃ良かった!

つまらなーーーーい!!」


鉄の壁から顔をひょっこり出しながら駄々をこねるガキ。

おう、間違いなく昔の俺以上の問題児だな、コイツ。


「だ・か・ら♪

横の青いのと一緒におにーちゃんも潰してあげる!

machine craft:混沌獣(カオスキメラ)!」


ガキがしなを作りながら魔法陣を展開し、鉄クズの山に魔力を送っていく。


『シムル!

離れてください!!』


「おうよッ!」


俺の足元の鉄クズにもガキの魔力が流れ込んだ事を確認した俺は、ソラヒメの注意と共に退避する。

すると次の瞬間、俺の居た場所に『鉄の手が生えた』。


「んだこりゃ!?」


それだけではない。

デカブツの亡骸を元に、次から次へと異形の形が産まれていく。


『ギュォォォォォォ!』


『キュィィィィィィ!』


『ブォォォォォォォ!』


そしてガキを囲む様にして3体の化け物が現れた。

姿形はめちゃくちゃの、不思議の国からやって来た鉄の怪物だ。


「どう?

びっくりした〜?」


「あぁ、中々愉快な面子じゃねーか」


ここで大凡の謎が繋がった。

何故、王都近くに来るまであのデカブツは誰にも見つからなかったのか?

ーーーーそれは王都に来るまではただの鉄クズだったからだろう。

王都に攻め込むその直前まで、ヒラカ近くの森の中にでも鉄クズを隠していたのかもしれない。


何故、複数体暴れていたって話のモンスターがデカブツ1体だったのか?

ーーーー詰まる所、目の前の3体、もしくはそれ以上をデカブツ1体に合体でもさせていたのだろう。

そうでなければ他に説明がつかない。


「ーーーーnearly equal!」


目の前で起こった現象がどんなモノかを探るべく、ガキを解析する。

特にあの魔法陣、まさかとは思うが。


【カレン・シロエ】

要素:解析不能

属性:解析不能

魔法:不明 NO NAME

総合評価:解析不能


ーーーーやっぱあのガキ、概念干渉(ノーネーム)使いか!

物理(フィジカル)系魔法も流石に鉄クズをモンスターに変える何て芸当はできねーし、あらかた検討はついていたのだが。

ついでに、これでデカブツの魔力光線の解析結果があんな曖昧なモノになってた説明もつく訳だ。


それでも自分以外の概念干渉使いに会うのは初めてだからか、こうして判明すると不思議な気分になる。

本当に自分以外の概念干渉の能力ってのは何が起きてるのか見てても分からねぇもんなんだな。


「それじゃあおにーちゃん……覚悟は良い?」


勝ち誇った様な笑みを浮かべたガキは、俺に向かって微笑みかける。

その微笑みは捉えようによっては、天使に見えなくもないだろうが。

すぐそばに転がる警備隊の死体を見れば、その笑みは少なくとも……この地獄絵図を生んだ、悪魔の笑みそのものにしか見えねぇな。


「お前こそ、これから説教される準備は出来たかよッ!

nearly equal:星竜咆哮(スターライトバースト)!!!」


うすら笑いを浮かべるガキに対し、俺は問答無用で星竜咆哮を叩き込む。

だが、その光は。


『ギチィィィィィ!』


目の前に飛び出る様にして現れた、一つ目の巨人に遮られた。

それは勿論、ガキが作り出した鉄の怪物の一体だ。


「舐めんな!テメェなんか、さっきのデカブツに比べたら屁でもねぇ!とっとと溶かしてやるよ!」


『ギュィィィィィィ!』


一つ目の巨人は俺を押し返そうとするが、全く力が足りない。

その体は最早星竜咆哮に溶かされるだけだ……そう思っていたのだが。


「えいっ!」


『キィィィィィン!』


ガキの掛け声とともに、今度は三つ目のクマ型が俺へと飛びかかる。

圧倒的な質量を持つその一撃に対し、俺は星竜咆哮を停止して、回避に専念する。


『……シムル!』


潰されかかる俺を見て、ソラヒメが加勢しようと雷撃を溜めるが。


「ソラヒメ、こっちはいい!

それよりあのガキを止めてくれ!!

あれだけ鉄の山があるんじゃ、後何体このガラクタ共を作られるか分かったもんじゃねぇ!」


『クッ……分かりました!』


ソラヒメは悔しそうに顔を歪めながらも、ガキに向かって突撃して行った。


「さて、あっちはソラヒメに任せて、っと。

お前ら二体とも、とっとと退きやがれ!!」


『『ギャォォォ!!!!』』


俺の煽りに対し、異形たちは掠れた咆哮をもって答える。


さぁ、かかって来いよ!

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