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10話 学園長、実は俺の事大好きか?

日間総合ランキング2位になりました!

まさか3位から1つ上に行けるとは……!

読者の皆様、本当にありがとうございます!!

感謝しかありません!!!

試験勉強を始めてから数日後。

俺は目の前の光景に大分参っていた。


「何てこった……」


流石にこれは予想外だ。

目を背けたくなる惨状だ。


「シムル、勉強はこう言うものよ?

だからちゃんとコツコツやらなきゃダメなのよ」


この前の数学の時とは打って変わって、今のテーラはフフンと笑ってご満悦だ。

クソッ、まさかこんな事になろうとは……!



話は遡る事1時間前。

テーラの部屋で最近の日課と化した勉強会をしている時の事だ。


「シムル、ノートはちゃんと纏められたわね?」


「あぁ、バッチリだな。

テーラのお陰でいい感じになった」


テーラから魔法概論の解説を受け、ようやく試験対策ノートを作り終えた俺は意気揚々と答えた。

魔法概論と操竜術概論は竜生態学に比べて授業内容が丸で頭に入っていなくて、ノート作りに無駄に時間が掛かったが……終わったから問題はない。

図、表共に見栄えが良く、単語もその意味が分かりやすく纏められたノートを見ながら俺は満足する。

我ながら完璧な出来だ。

まさかここまで授業でやった内容への理解が深まるとは思っていなかった。

テーラ様様だ。


「さて、これで試験は完璧だな。

後は試験前に適当にノート見とけばいけんだろ。

あー、やっと勉強から解放されたぜ」


「シムル、何言ってるのよ。

まだ勉強は終わらないわよ」


テーラがやれやれと言った風に答える。


「ん?

いやいや、どう言う事だよ」


もうノートを纏め終わったって事は勉強が粗方片付いたって事だろ。

数学はやる意味ねーし。


「アンタ、まだ暗記してないでしょ?」


「暗記?

テーラこそ何言ってるんだよ。

あの分かりやすい解説のお陰で全範囲理解できたっての」


あれだけ分かりやすい説明を聞いて分かるなって方が難しい話だ。

自分で説明をしておきながらテーラは何を言っているのか。


「理解する事と覚える事は別なのよ?

でもそこまで自信があるなら、今ここで抜き打ちテストするわよ」


ニヤッと笑いながらそう提案するテーラ。


「えぇ……マジかよ」


何でそんなダルいことを。


「文句言わないの。

私について来るって言ったじゃない。

ホラ、今から軽く問題を書いていくからちゃんと解きなさい」


「へいへい。

分かったっての」


テーラのやり方について行くと約束した以上、そこは守らなけりゃいけないな。

面倒だがやむなしだ、男に二言はねぇ。


テーラは鞄から白紙を出すと、そこにスラスラと問題を書いていった。


「うん、出来たわ。

取り敢えず5問作ったから解いてみて」


「はいよ、まぁ楽勝だろうけどな」


テーラがお手製の問題用紙を渡して来る。


「それじゃ、今から15分で解いてね」


大袈裟だな。

たかだか5問程度。

それもあれだけ軽く作ってた問題なんか1問1分で5分もあれば解けるっての。

鉛筆を取って問題用紙とご対面する。


《問1.ワイバーン4種が巣を作る場所について、2点以上の特徴を書きなさい》


「ーーは?」


何故か頭が真っ白になった。

オイなんだよこれ。

1問につき解答1つじゃないのかよ。


少し困惑した。

しかし、その困惑の波は次第に大きくなり。

ハッキリしてた頭の中が、急にモヤが掛かった様に感じられる。


(えぇと、火竜は体温が高いから大体どこにでも巣を作れた筈だ。

ついでに体内のコロナを維持するために大量の食料が必要だった筈だから、餌が多い場所も巣作りの条件か。)


ここまでは思い出せるのだが。


(体が細いから洞窟に巣を作るのは水竜と翼竜、どっちだ?

それに地竜は穴を掘って生活してるって話だったが、確かどんな地盤を好むかって話もあった筈だ。)


ハッキリ分かる所以上に思い出せない事が多すぎる。

一体どう言う事だ、確かにテーラの解説で理論的な所は理解しきった。

なのに何で思い出せない!?


一旦深呼吸しろ。

……よし。

1問目が分からないなら、2問目から解くべきだな。

気持ちを切り替えて次の問題へと目を移す。


《問2.ワイバーンを操竜する時、ワイバーンの体に魔力を流し過ぎると暴走状態に陥る。

このことについて、ワイバーンを暴走させずに操竜するにはどの様な手順で操竜すれば良いか。

全ての手順について1つずつ簡単に説明せよ》


何だこの俺を殺しに来てる様な問題は。

普段ソラヒメに乗ってる俺は操竜術なんてものは使わない。

だからこの範囲は軽く見て「成る程そう言うことか」と思った程度だったのだが......テーラめ、それが分かっててこの問題を出したのか?


テーラの方を見ると、涼しげな顔で教科書を眺めていた。


「……?

シムル、どうかしたの?

何か問題に不備があった?」


俺の視線に気がついたテーラが話しかけてくる。

案外あっけらかんとした顔をしている。


「いや、大丈夫だ。

何でもねーや」


テーラがあの問題を引っ掛けとして作ったなら、今頃俺の方をニヤニヤ見ているだろう。

少し神経質になり過ぎてたか。

まぁ、何にせよ解けないのは俺の実力だ。

テーラに文句を言うのも筋違いだろう。


……とは言え。


(理解するのと暗記するのは別、か。

全くもってその通りだなオイ)


暗記したつもりになっていた範囲の問題が丸で解けない現実に、俺は大きくため息を吐くのだった。

そして15分が経過し、答え合わせをした所。

バツ印で埋め尽くされた解答が帰って来た、と言う訳だ。



そうして今に至る。


「何てこった……」


試験まで後3日なのに、話にならねぇ。


「シムル、勉強って言うのは理解した後暗記するって作業が必要なのよ。

教科書やノートを見ながら内容を理解するだけなら誰にでも出来るわ。

ただ、理解しただけになってるから皆んな所々で点数を落とすのよ。

最悪今のシムルみたいになるわ」


「……そうみてーだな、こりゃ。」


入試筆記1位がそう言うと説得力があるな。

今回ばかりは反論の余地がねぇ。


「それに、シムルは問題を解いてる時に手が止まったでしょ?

あれって多分、頭の中が真っ白になったからだと思うんだけど、どうだった?」


「あぁ、その通りだ。

何で分かった?」


「それはだって、皆んなそうだもん。

私だってそうよ?

覚えきれてない事を思い出そうとすると手が止まるもの」


「そうか。

……ハァ」


大きくため息を吐きながら両手を椅子から投げ出す。

世の中そう簡単にいく訳ねーか。

数式を理解すれば1発で解ける数学とは大違いだ。

勉強方法のベクトルが丸で違えや。

それによく考えればここの勉強が難しい事は最初から分かってたのに、何を短絡的に考えてたんだかな。


「ま、ここまで来たら最後までやるんだが。

テーラ、良い暗記方法があったら教えてくれよ」


彼女(テーラ)にここまでしてもらって途中リタイア?

それとも試験失敗?

冗談じゃねぇ、俺はそんなに甘くないっての。


気合いを入れ直してテーラの瞳をグッと見つめる。

俺の気持ちが伝わったのか、テーラも真面目な顔になる。


「分かったわ。

シムル、頑張りましょ!」


「おう、当然!」


「なら……」


そうテーラが言って鞄から何かを取り出そうとした時、学園中に《ピィー!》という甲高い笛の音が鳴り響いた。


「何だこの音?」


お勉強の邪魔だっての。


「これ、非常呼び出し用の笛の音よ。

滅多に鳴らないんだけど、何かあったのかしら?」


「へぇそうかこれが……

尾段(びだん)生シムル!

至急学園長室まで来なさい!』

は?

俺かよ!?」


この短期間にまた呼び出しか。

学園長、実は俺の事大好きだろ?


『繰り返す!

尾段(びだん)生シムル!

至急学園長室まで来なさい!』


「だから聞こえてるっての!」


学園内の至る所に配置された通信用魔法石から大声で発される呼び出し声。

噂には聞いていたが、ここまでうるさいと迷惑もいい所だ。

ついでに俺が学園中の晒し者じゃねーか。


てかそもそもなんだよ学園長。

また俺が何したってんだよ。


「シムル、アンタまた……」


「いやだから今回も何もしてねーよ!?」


何とも言えない視線を送ってくるテーラに全力で訴えかける。

と言うか、未だに自分の彼女からの信頼度が何でこんなにも低いのかさっぱりだ。

俺だってそうそう暴力なんざ振るわねーって。


「マジでさ、俺は自分からは無駄に喧嘩とかしねぇよ?

大体襲われた時だけだって」


例外(マックス)は除くけどな。


「いや、そんな事……あるわね」


即答されなかった事が地味に悲しい。

また、やはりと言うかでテーラの中でも例外(マックス)例外(マックス)だったらしい。


「もう、なら早く行って来なさい。

そうしたらすぐに帰って来てね。

暗記にも時間がかかるんだから」


「分かってる。

俺だって学園長の部屋なんぞに長居したくねーし、とっとと戻ってくるさ」


毎度の事ながら面倒は避けたいのだが。

行かなきゃ行かないで何かしらありそうだし、面倒は早めに片付けるのが吉だな。


「よっこらせっと」


ダルいと嫌がる足に指示を送って無理矢理立ち上がる。


「シムル、いってらっしゃい」


ドアの方まで歩いて行くと、後ろからテーラがそう言って送り出してくれた。


何か、こう言うのってスゲェ良いな。

温かみがあるわ。


ふとそう思うと気恥ずかしくなってきた俺は、取り敢えず右手を上げて返事の代わりにしておくのだった。



さて、学園長や。

彼女との貴重な時間と集中力を奪って呼び出しとか上等だ。

くだらねぇ用事だったらまた学園長室のドアに回し蹴りの刑確定だな。


俺はとっとと面倒を済ませるべく、学園長室へと向かうのだった。







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