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7話 実はお前らムッツリだろ

皆さんのお陰で日間総合ランキング、日間ハイファンタジーランキングにそれぞれランクインしています、ありがとうございます!!!

感謝感激ですm(_ _)m

「はぁぁ、眠ぃな」


大きな欠伸をしながら食堂に入る。

昨日の夜の、テーラの魔法陣展開作戦のお陰で若干睡眠不足気味だ。

ついでに魔力も割と食っててヤケにダルい。

昨日の件は状況が状況なだけに仕方がなかったが、慣れない事はしない方が良いと起きた時から体がうるさい。


食堂内はいつもと同じで美味そうな匂いが立ち込めている。

今日の朝飯はなんだろうな。

そんな事をふと考えながら欠伸明けの目を擦りながら開く。


「...ん?」


何故か食堂中の連中がこっちを見ている。

いや、正確には男連中はこっちをガン見してて、女連中はモジモジしながらこっちをチラチラ見てやがる。

何だこいつら...っと、マックスの奴と目があった。


「オイ、マック...」


呼ぼうとした瞬間にマックスがガバッと顔を机に伏せる。

心なしか震えてる様に見えるんだが...どうしたあいつ。

また調子に乗ってポカやったのか?


「まぁいいや。

別の奴に聞くか」


食券を取ってカウンターまで持っていく。

...オイ、給仕の婆さんや。

何でアンタまで俺を見てニヤニヤしてやがんだ。


「昨日は良かったかい?」


昨日?

...あぁ、この婆さん、実は昨日の夜の事をどっからか見てた的な感じか?


それなら俺が答えてやる事は1つだ。


「当然。

俺がやってやったんだ、バッチリだったぜ!」


直後、食堂中からドッと笑いが沸き起こる。


「...何だ?」


カウンターから振り返れば俺を見てクスクス笑ってる連中と目が合う。

オイコラ何が面白ぇんだよ、そうメンチを切るが今の連中には丸で通用せず只管笑ってやがる。

...意味が分からねぇな。


とっとと事情を誰かから聞かねーと、って、お。

委員長の横が空いてるじゃねーか。


「委員長。

隣、邪魔するぜ」


「し、シムル君!

えっと...ど、どうぞ」


「オイオイ、委員長もかよ。

今朝からヤケにここの連中がおかしいんだけどよ、何でだ?」


そう尋ねると委員長が困った様に視線を泳がせる。


「その...えっと...おかしいのは、シムル君と言いますか、何と言いますか.....」


「は?

俺か?」


どう言う事だ、全く分からねぇ。

思い返してみても心当たりが一切ない。


「委員長、悪いけど俺が何をしちまったのか見当がつかねーや。

ちょっと教えてくれねーか?」


「お、教えて!?

あの...その...あまり言葉にするのが恥ずかしいんだけど......!」


委員長の顔がますます赤くなる。

そして俺達を面白そうに見つめるギャラリー。

だから一体何なんだよお前ら。

そう一声かけようとした時、おもむろに委員長が口を開いた。


「シムル君。

その...昨日の夜のはテーラさんと...上手く、いったのよね?」


はぁ?

またその話かよ。


「おう、だからそうだってさっきオバちゃんと話してる時にも言っただろ。

ちゃんとテーラが満足するまでやってやったぜ?

安心しろって!」


そう言うと食堂中から聞こえる男連中の「「「おぉ...!」」」と言う声。

それに次いで


「流石シムルさんだ!」


「アンタを見習いたい!」


「男だぜシムル!」


そんな声がチラホラと上がっていた。

逆に女連中は顔を赤くしてる連中が多い。


「...マジでさ、何でお前ら昨日の夜の話でそんなに盛り上がってるんだよ?」


「それは...その...ね。

昨日はお楽しみだったみたいだし、仕方ないと言いますか...」


...は?

どこがだ。

俺がどれだけ苦労したと思ってやがんだこの野郎。


「んな訳ねーだろ。

つまらねー事だったぜ?」


すると今度は女子連中が騒ぎ出す。


「どう言うことよ!」


「昨日の事は遊びだったの!?

最低!!」


「この変態!!」


 だから何なんだよお前らッ!


「うるせぇ!

どう言うことだよお前ら!

朝っぱらから何なんだよ!!!

俺が昨日どんだけ苦労したと思ってやがる!!

テーラは痛そうに泣いちまうし、全くとんだ災難だったぜ!!!」


「テーラさん泣いちゃったの!?

と言う事はテーラさん初めてだったのに、シムル君無理矢理したの!!??」


次は委員長が目を丸くしてまくしたてて来た。

初めて...ってそりゃテーラが魔法陣組むのは初めてだったけどよ。


「確かにテーラには初めての経験だったさ。

けど、無理矢理じゃねーよ。

テーラも望んでやった事だ」


「それでも...それでもつまらない事だなんて!

シムル君、貴方最低な事言ってる自覚あるの!?」


「はぁ!?

何いきなりキレてやがる!!!

なら逆に、俺が楽しめた要素を教えやがれ!!」


あの時の俺は至って真面目だった。

楽しむだけの余裕なんざある訳ねぇだろ!


双方ともに食い下がらない怒鳴り合いの応酬。

そこに決着をつけたのは委員長の、謂わば不意打ちだった。


「だって、シムル君!

テーラさんと、え...えっちしたんでしょ!?

初めてまで貰ったのにそれがつまらない事だなんて、最低じゃない!!!」


ハァハァと肩で息をする委員長に、シーンと静まり返る食堂。

.....は?


「待てぇぇぇぇぇぇッ!!!!

どっからそんな話になりやがった!?

確かに頼みはしたけどまだ早えって断られたぞ!?」


「「「.....は?」」」


いや、何驚いてやがんだお前ら。

驚いてるのは俺だっつーの!

...ついでに、要らねー事も教えちまった感があって地味に虚しいな。


「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」


「てめえら!

少し!!

黙ってろ!!!」


1拍置いて大声の巣窟と化した食堂内に喝を叩き込む。

周りが騒いでちゃ話にならねぇ。


「...委員長。

どう言う事だ?

何でそんな話になってやがる」


「...いや、だってシムル君。

昨日あんなに情熱的に激しくテーラさんと呼び合ってたじゃない!

寮にまで聞こえてきたわよ。

アレって...本当は違うの!?」


いや、だから俺を差し置いて驚くんじゃねーよ委員長。

と言うか、激しく呼び合うだと?

そんな事は...



『テェェェェェラァァァァァ!!!』


『シムルゥゥゥゥゥ!!!!』



大アリじゃねぇかチクショウ!!!!!

何だよ、つまりこの状況ってアレが原因かよ!?


いや落ち着け。

まだ早い。

流石に声だけで昨日の夜に何があったのか、ここの連中が決めつけるには早計過ぎやしねぇか。

寝起きの頭をうーむとひねる。


寝不足の俺の頭に...思い当たる節は案外早く見つかった。

まさかとは思うが一応聞いてやろう。

冤罪の可能性もあるしな。


「...委員長よぉ、さっきからあそこに突っ伏してる馬鹿(マックス)から俺とテーラの事、昨日どう言う風に聞いた?」


「えぇと、

『皆んな、シムルとテーラの所には行ってやるな。

あいつらは大人の階段を登ってるんだよ。

誰しも経験する大人の階段を俺らよりちょっぴり早く登ってるのさ。

...だから、今はそっとしておいてやって欲しい...』

って昨日の夜、食堂で...」


あぁ、そうか。

そう言うことかよ。


目の前の委員長の顔がどんどん真っ青になっていく。

ついでに視界の端に映る食堂の連中全員の顔もだ。

ま、今の俺の顔を見りゃ仕方ねぇかもしれねぇけどなぁ。


「...なぁ、マックス。

ちょいと俺とお話ししねぇか?」


「ひ、ヒィッ!?」


マックスが椅子から飛び退く。

彼我の差は机を挟んで10メートル前後。

今の俺なら余裕で詰められる距離だ。


「...お前、何してくれてんの?」


「し、シムル!

悪かった!!

言い方が悪かったのは認める!!

気がつけば噂がすごい勢いで広まっててどうする事も...分かった分かった、謝る!

額を地に擦り付けて謝るからそんな凶悪な笑顔でこっちに来るなよォォォォ!!!」


今更泣いて謝っても遅ぇ。

俺は朝っぱらから学園中のウマい飯のネタにされてたと思うとよ、ハラワタが煮えくりかえりそうなんだわ。

テーラの分も含めて、このお礼はキッチリしねーとなぁ。


「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」


野郎、飯と男のプライドを置いて逃げやがった。


「さ、流石のシムルでもテーブルを挟んでこの距離ならっていつの間に後ろにぃ!?」


マックスの肩をガシッと掴む。


「オイオイ、肩がブルブル震えてやがるぜ?

まぁ今は朝だもんなぁ。

寝起きの冷え性ってやつか?」


「は、ハハハハハ。

そ、そうなんだよ......!」


おう、イイ(えがお)になったじゃねーか。

でもちょっと目が閉じ過ぎちゃいねーか?


「お前、まだ頭がはっきりしてねぇみたいだからこの俺が直々に起こしてやんよ。

感謝しやがれ」


そう言ってマックスの肩に置いてあった手を俺の体側に引く。

抗う間も無くぐるりと1回転するマックス。


「わぁぁぁぁ!シムル一体何を「ーーーマックス君!

おっはよーう!!!!」


朝の爽やかな挨拶と同時に、回転するマックスの横顔にカウンターの要領で右拳を叩き込んで壁までぶっ飛ばす。

グェェとか言うカエルが潰れたような声を出しながらマックスは壁にぶつかり、ピクリとも動かなくなった。


この野郎が、俺は寛容だから今回はこの辺で勘弁してやんよ。


ついでに食堂中の連中に振り返って笑顔で一言。


「お前らさ...全員、目は覚めてるよな?」


「「「おはようございます、シムルさん!」」」


「昨日の夜、あの馬鹿が言ったことは?」


「「「全て夢です!」」」


よろしい。

それじゃあ朝飯を頂こうじゃねーか。


「あ、シムルおはよー!

昨日は寝るのが遅くて起きるのが遅れちゃったわ」


俺が席に戻った時、少し遅めにテーラが食堂に入ってきた。


「おう、テーラ。

おはよ」


俺の挨拶の後、食堂中にガタゴトと音が響いた。


「「「おはようございます、テーラさん!!!」」」


生徒達が起立して、テーラに一糸乱れぬ挨拶をし始める。


「は、はい。

おはよう...ございます......?」


テーラは状況が飲み込めなくて目をパチクリさせてるが...まぁ良いか。


俺はマックスの所為で冷めちまった朝飯に手を伸ばした。


「ほぉ、冷めてても中々美味いじゃねーか」





ーーーその後暫くして、この話の全貌を知ったテーラが顔を赤くしてシムルにポカポカ殴りかかった日が来たとか来なかったとか。


「何が『まだ早いって断られた』よ!

後になったら私がオーケーする様な言い方じゃない!!」


「...え、違えの?

つーか噂流された事よりそっちなのか?」


「解決した噂よりもアンタの爆弾発言の方が問題よ!

いや、でも違わないと言えば違わない......ってそうじゃないわ!!

うるさいうるさいうるさーい!!!

何で皆んなの前で堂々と言っちゃうのよ!!

!」


「それは悪かったっての!

あいつらからの誤解を解くために必要だと思...って、何そんなもん持ち出してるんだよ。

今までどこに隠してやがった!?

おい待てよ人間の体はそんなモンでぶん殴られたらやべぇっての!!!」


「シ〜ム〜ル〜!!」


「ちょっ、オイコラ話聞け!

ーーーnearly equal!!!」


その日、シムルの部屋から大声の痴話喧嘩と共に鉄と鉄がぶつかるゴーンという鈍い音が男子寮中に響いたとか何とかで。

翌日、「この学園で怒らせてはいけないのはシムル以上にテーラ・リスフィーアだ」と言う噂が立つのはまた別の話。




評価、ブックマーク等頂けますと飛び跳ねて喜びますので是非ともお願いします!


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