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王都の町で初デート2

王立ローナス学園を出て暫く。


「はぁー、やっぱ王都は人がすげーや」


見渡す限り人人人人。

見渡す限り山川森空の田舎とは大違いだ。

露店には食べ物からアクセサリー、よく分からん魔道具っぽい物まで色々と並んでいて、露店の後ろには所狭しと建物が建っている。


「シムル、何ぼんやりしてるのよ。

ここはまだ王都の端の方だから換金所はもっと先よ」


「あいよ、りょーかい」


それにしてもここが王都の端...ねぇ。

なら中心はどんだけ人でごった返してるんだか。


「それとシムル、一応言っておくけど。

王都はスリが多いから気をつけるのよ?

アレ、盗まれて無いわよね?」


「おう、この通り無事だぜ」


制服のポケットから取り出してテーラに見せる。


「わあぁ!

シムル隠して、隠して!!

私がわざわざ名称呼びせずにアレって例えた意味分かってないでしょ!?」


「あ、悪いそう言うことか」


周りの連中の一部がコッチを丸い目で見てる。

少し目立っちまったか。

要するに盗まれ無いようにちゃんと隠せって事だったらしい。


「全く、これだからシムルは...」


「次からは気をつけてやんよ」


テーラの頭をポンポンと軽く叩く。

テーラは少し「むぅ...」とむくれていた。

可愛いなオイ。



「あれは...」


その時、物陰に隠れて2人を見つめている者が居た。


(あれを、手に入れれば...!)



「なぁ、そう言えばさ」


いきなりではあるが、思い出したことがあったので聞いてみる。


「どうしたの?」


「テーラってさ、リスフィーアって名字があるって事は貴族になったんだよな?」


「そうよ。

お父さんの事業が成功してね。

それでセプト村から一家で王都に引っ越してきたのよ」


「それで貴族になった、か」


「うん」


噂で聞いた通りだ。

事業が国に有益だと認められれば平民でも貴族になれるらしい。


「なら、テーラの親父さんってあんな片田舎で何の事業で成功したんだ?」


「それは...」


テーラの顔が暗くなる。

アリス先生の事といい、テーラの家についての事は禁句だったか。


「いや、やっぱ何でもねぇ。

しょーもねー事聞いちまったな」


「...ううん、私こそゴメンね?」


雰囲気が悪い。

しょーがねーか。


「そうだテーラ!

クラスの奴の事を教えてくれよ!!

面白そうな奴が居たら仲良くなりてーんだけど、誰か良い奴はいねーか!?」


無理矢理まくし立てる。

するとテーラは目を丸くした。


「...そうね、皆んな話すと面白いわよ。

その中でも私のオススメを何人か教えるわね」


少し笑って話すテーラ。

そうそう、笑ってくれや。


「それとシムル」


「ん?」


「ありがとね」


気恥ずかしくなってそっぽを向く。

...慣れない事はするもんじゃねーや。


そうしてそっぽを向いた次の瞬間。


「フッ!」 「キャッ」


テーラを抱えて飛び退る。


「ちょっとシムル、いきなり何を.....っ!」


俺に文句を言いかけていたテーラが黙る。

さっきまで俺たちのいた所で剣が空を切る。

見れば顔をローブで隠し、体をマントで覆った奴が剣を構えてコッチを見据えていた。

周りのガヤが俺らを中心にどよめく。

チッ、また面倒かよ。


「誰だテメェ。

坊ちゃん絡みでグランハートがまた仕掛けてきやがったのか?

あぁ???」


ドスを効かせた声で聞く。

俺の彼女に危険が及びかけた今、俺の怒りは有頂天だ。


「答えてやる義理は無い!

大人しく、さっき持っていた宝石を渡せ!」


高い声、って事はこいつ女か。

いやそれより、宝石だと?

...この事態は完全に俺の責任(せい)じゃねーか。


「はぁ...ったく」


「どうした!

さぁとっとと渡せ!!

でなければ貴様を今ここで斬り捨てる!」


いやー、何つーかね。


「王都ってのは相手を選ばず突っかかって来る奴が多いなーって思っただけだ。

それと、今お前俺を斬り捨てるとか言ったか?」


「そうだが?」


「おう、やれるもんならやってみろ。

俺はお前みてーに顔をコソコソ隠さなきゃ人前に出れねー雑魚とは違うんでな。

...テーラ、下がってろ」


「...分かったわ」


抱えていたテーラを後ろへ逃す。


「お前、私を馬鹿にするのか?

お前みたいな綺麗な制服を着て宝石まで見せびらかせる様な、何の苦労も知らない様な奴が私を、私を!!!」


「何言ってやがるんだよ、お前人の事を...」


人の話も聞かずにそいつは大振りで斬りかかってくる。

ご丁寧に俺の体の中心を狙って来るとか素人かコイツ。


「よっ」


体を軽く逸らす。

ブンッ!と空を切ったその剣は地面へと向かう。


「ほっ」


地面スレスレに振り下ろされたその剣を踏む。


「えっ!?」


えっ、じゃねーよ。

避けられると思ってなかったのか?


「素人なら素人らしく路地裏でお友達とチャンバラでもしてろや」


そのまま手刀でそいつの手から剣を叩き落とす。

怯んだそいつの腕を掴んで後ろ手にして押さえ、地面に伏せる。


「は、離せ!

離せ!!」


「離さねーよ。

で、お前の素顔はっと」


右腕で襲ってきたそいつを押さえ、空いた左手でローブを解く。


「...へぇ」


髪の色は赤、中々可愛い(ツラ)した女の子じゃん。


「何がへぇ、だ!

離せ!!

今すぐ離せ!!!!」


「人を斬りつけといて何が離せだバーカ」


さてこいつどうするか。


「シムル!

衛兵さんを呼んで来たわよ!」


声がしたので振り返ればテーラがいつの間にか衛兵を引き連れていた。


「おう、ナイスだテーラ!」


「失礼します!

...あ、貴方はローナスの生徒ですか!?」


駆けつけてきた衛兵に聞かれる。

ん?何で分かったんだ...ってあぁ、制服か。

身分を示してくれる服ってのはこういう時便利だな。


「まぁ、一応は。

それとコイツ、斬りつけて来たんで縛って欲しいんすけど」


「えぇ、只今。

...そうか、またお前か」


納得するそぶりを見せた衛兵は手早く手錠を取り出すと、俺が押さえつけている女の子に手錠をかけた。


「お前、覚えていろよ!

いつか必ず殺してやる!!」


「黙れこのクズ!

この国の未来を担うローナスの生徒さんに向かってなんて口を聞くんだ!」


衛兵が俺を睨んできた女の子を殴って黙らせる。


「さぁ来い、来るんだこのクズめ!

...すいませんね、生徒さん。

こいつはこの辺でよく問題を起こす常習犯でして。

ご迷惑をお掛けして申し訳ありません、今度こそムショに入れておきます。

それと、役場の方まで来て貰えれば軽くお礼を出しますが...」


「いやぁ、良いっすよ。

別に金が欲しくてやった訳でもないんで。

俺は周りに要らない被害が出ない様に押さえただけっすよ」


「おぉ、流石はローナスの生徒。

素晴らしい心構えですね」


適当な事を言って感心させておく。

尤も、星結晶が売れれば金には当面困らないだろうからお礼とか言う小遣いが要らないだけなんだが。

役場に行くのも面倒くせぇ。


「では、失礼しますよ。

...とその前に生徒さん、最後にお名前だけ聞いても良いですか?

上に報告したいので」


「あー、シムルって言いますんで、よろしくっす」


「分かりました。

今回の件、ご協力感謝です。

では」


「クソッ、クソッ、クソーーーッ!」


衛兵に引きずられていく女の子。

何だったんだアイツ。


「シムル、大丈夫?

怪我はない?」


衛兵と入れ替わりでテーラが駆け寄って来る。


「あぁ、怪我はねーよ。

それよりすまねぇな。

俺が要らないことしたばっかりにあんなのを寄せちまった」


「ううん、お互い怪我もなかったし良いわよ。

それにしても、よくシムルは衛兵さんにあの子を引き渡す気になれたわね」


「...どう言うこった?」


「あの子、昔の私や少し前の貴方と同じで、ひもじい思いをしてるんだと思う。

ボロボロの服装で分かったわ。

だから貴方からアレを盗もうとしたんじゃないかしら」


「あー、そーゆーことか」


「...分かってなかったの?」


「あぁ。

何かいきなり襲って来たわ〜何だあいつ〜って位にしか思ってなかった」


「...衛兵さんに引き渡した事、後悔してない?

もし今シムルがあの子を助けたいって思うなら私、余計な事しちゃったかもって...」


「オイオイ、何言ってんだよ?

余計な事なもんか。

良いことは良い、悪いことは悪いんだぜ?

どんな理由であれ襲ってきたあいつは悪い事をしたから捕まった、ただそれだけだ」


それに金がないから泥棒をする、その考えは正しくないと断言できる。

金がないなら体を鍛えて山で獣を狩って食えば良いのだ。

少なくとも俺はそうして生きてきた。

テーラに言ったら顰蹙を買いそうだが、人間やりようでいくらでも生きていける。


それに、実力行使に出たのはアッチだ。

どうなろうと知った事じゃねぇ。

そもそも人に助けて欲しけりゃそう言う時は...いや、今更考えても仕方ねぇか。


「そう...なら良いわね!

換金所はすぐそこよ、早く行きましょ!」


「あぁ、行こうぜ!」


テーラに手を引かれるまま、俺達は気分転換だと言わんばかりに換金所へと走って行った。













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