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17話 新しい朝に

1章エピローグです。

ちゃんと目標の10万字いって良かったです

模擬戦(デュエル)翌日。


「良い朝だなぁ」


本日快晴。

俺は朝早くから竜者近くの丘の上に来ていた。

冷んやりとした朝の冷気が心地いい。

面倒が片付いた事もあってスッキリした気分だ。

生徒代表(パツキン)に当然と言うか何と言うかで無事勝利した俺は現在、学園最強の肩書きを手に入れていた。

それに加えて...これは正直予想外だったが、学園の人気者と言う確固たる地位も手に入れることができていた。

理由は間違いなくアリーナで生徒をみんな纏めて仲間(パリピ)にした事だろうな。

夕飯を食おうとして食堂に行った時は本当に大変だったぜ。

昨日まで俺を毛嫌いしてた連中まで寄ってたかって


「シムルさん凄いっす!」

「ファンにしてください!」

「学園の喧嘩番長、カッコいいね!」


何て言い始める始末だ。

飯くらいゆっくり食わせろよ。

また、その時ついでに


「てかさ、生徒代表をボコボコにしちまったんだけどお前らこんなに俺に群がって良いのか?」


と聞いてみた。

すると色々な奴が異口同音に


「アルス代表はやってやり過ぎるところがあるんですよ...。

気に入らない人はシムルさんが来た時みたいにボコボコ言っちゃうんです。

最悪実力行使、とかもありました。

今回の模擬戦(デュエル)はアルス代表には良い薬になったでしょう」


と答えた。

なんと言うか、まぁ。


ざまぁねぇぜあの生徒代表(パツキン)


生徒の未来を守るとかほざいてやがったが、結局アレだけボコされた挙句学園の連中に見放されてるじゃねーか。

機械的な事やってるからこうなるんだよ。

生徒の未来だ?

そんなもん、一人一人が切り開いていけば良いんだよ。

生徒代表(パツキン)に学園内の生徒の身を守る義務は有っても、その先の未来までも保証する筋合いはねーだろ。

生徒の方も生徒代表(パツキン)に未来まで保証される筋合いはねーだろうし。


...まぁいい。

あっちの話は終わった。

今俺が片付けるべきなのは目の前の事だ。


「むぅ...いい朝だなぁ、じゃないわよ!

シムル、どうして模擬戦(デュエル)が終わった後その...こ、告白してくれなかったのよ!?」


目の前でプンスカと怒るテーラ。

この事については流石に申し訳ねぇとしか言いようがない。



昨日は模擬戦(デュエル)が終わった直後のアリーナ内の熱気が凄かったんで、後でテーラを呼び出して告白しようと考えていた。

だが、結局テーラに会いに行こうとしても食堂の時のように次から次へと生徒に囲まれちまって昨日は全く身動きが取れなかった。

それで今朝、乱暴に部屋のドアを叩く音が聞こえてきたんで開けてみるとそこには仁王立ちした幼馴染様(テーラ)が立っていて、開幕一言。


「竜舎近くの丘まで来なさい」


絶対零度に冷えきった声で脅された俺は有無を言わずに連行された。

横で寝ていたソラヒメは空気を読んで親指を立ててグッ!としているだけだった。

ありがてぇんだかそうじゃねぇんだか。



「シムル!

聞いてるの!!」


おっとこれ以上考えてる暇は無いか。


「昨日は本当に悪かったっての。

アリーナで告白しても周りのガヤがうるさすぎて聞こえなかっただろうしよ。

それにあの後会いに行こうとしても何度もガヤ共に捕まっちまって動けなかったんだ。

本当に昨日はお前に会いに行こうとしたんだよ、信じてくれ!」


この通り!

そう下げる俺の頭はそう安いものではないのだが、愛する女の為ならなんのその。

これで許してくれるなら安いものだ。


「...分かったわ。

なら、顔を上げて。

お願いがあるの」


「おっ、そうか!

俺は何をすりゃ」


いいんだ、と言う声は続かなかった。

視界がテーラの綺麗な顔で覆われ、唇に柔らかい感覚。


キスだ。


「ふふっ、これで許してあげる。

ソラヒメ様とキスした事もチャラにしてあげるわ♪」


唇を重ね終えてから可愛くはにかむテーラ。

圧倒的な不意打ちに言葉を失う。

...いや、喋れ俺。

テーラにここまでやらせたんだ、何も言わなきゃ男が廃る。

そう自分に言い聞かせてテーラの両肩を優しく掴む。


「なぁ、テーラ」


「何?シムル」


目と目が合い、視線が絡む。


「俺は、お前が好きだ。

お前が田舎にいた頃から、ずっとずっと好きだった」


嘘偽りなく飾りっ気のない告白。


「うん」


それは、とてもシムルらしい言葉だとテーラは思った。


「俺は言葉遣いが荒れぇ」


「知ってる」


「作法もあんまし分からねぇ」


「そうね」


「でもな...お前を守るって気持ちは誰にも負けねぇ!

いつかお前に一緒にいて良かったって思わせられる程の男になる事をここで約束してやる!!

...だからよ」


「...うん」


テーラのその大きな両目には大粒の涙が浮かんでいた。


「俺と付き合ってくれ!

テーラ・リスフィーア!!」


「こちらこそよろしくお願いします!

シムル!!」


俺たちは思わず抱きしめ合う。

こうして俺とテーラは相思相愛のカップルになった。


想いを伝え合う2人を朝日が優しく包み込む。

朝日だけが、ただ静かに2人を祝福していた。



「...所で、アルス代表の事だけど...」


暫く抱き合ってから、テーラがそういきなり切り出す。


「なんだよ、あの生徒代表(パツキン)がどうした」


ケッ、良い所だってのに。

あの生徒代表(パツキン)は至る所で俺の邪魔をしなきゃ気が済まねーのか。


「シムル、生徒代表(パツキン)はやめなさい。

私の彼氏になったなら人の呼び方位キチンとしてよ。

私に一緒に居てよかった、って思わせるんでしょ?」


ウッ、と黙り込む。

チクショウ、今のは究極の殺し文句だ。


「ふふっ」


「何だよ、そんなに可愛く笑っても何も出ねーぞ」


「ううん、シムルにも可愛い所があるんだなーって」


「そりゃどう言う意味だ。

...で、アルス代表がどうした?」


我ながらおかしな言い回しだと思うがテーラはニコニコだ。


「うん、それで良いのよ!

アルス代表の事なんだけど、ちゃんと仲直りをして欲しいなって。

アルス代表だって一応は学園のことを考えてやった事なんだし。

やり方が悪かっただけで、アルス代表の言い分だって実はシムルも分かってるでしょ?」


「そりゃぁ...」


分からな...くはない。

俺の起こした騒動、もとい巻き込まれた騒動で学園中が混乱していたのは事実だ。

立場上キレざるを得ないって所はあったかもしれないしな。


「まぁ...な。

あいつの言い分だって少しは分かるさ。

それに俺だってできればアルス代表と仲良くしてーよ。

だってこの学園の生徒の(あたま)だろ?

仲良くして損は無さそうだしな」


「なら」


「だけどよ、今は多分ダメだぜ」


これは勘だが、今アルス代表と仲直りする事は十中八九無理だろう。

まずあの模擬戦(デュエル)の原因を作ったのはあいつだ。

自ら吹っかけた模擬戦(デュエル)であぁも無様に負けたのではあいつのプライドはズタボロだろう。

今俺が会いに行けば間違いなく逆効果だ。


「...分かってる。

だからシムルにはーーー」


「あいつをボコした事をその内にでも謝って欲しいってか?」


こくりと頷くテーラ。

その面持ちが暗い辺り、自分が何を言ってるのか分かっているのだろう。

俺にプライドを捨てて頭を下げてこい、と言っているのだ。


彼女(ガールフレンド)とは言え、テーラもシムルから1発食らうつもりでーーー


「あぁ、それならアッチが落ち着いたら適当な時に会って謝ってやるつもりだ。

ただ、今は本当に時期が悪いからやめとくけどな」


「へっ?」


テーラは耳を疑った。

あの暴君(シムル)がアルス代表に謝る事を許諾するなど、一体何が起きたのか。


「オイオイ、そんな目で見んなよ。

俺は後始末がしっかりできる男だぜ?」


テーラのああ言う曇った顔も見たかねーし、仕方ねーや。

そうシムルはそう内心独り()ちる。


それにテーラの彼氏になったのだ、それなりの振る舞いをしないとテーラの面子にも関わるだろう。

シムルも一応その辺りの配慮はしようと考えていた。


「さて、そんじゃ食堂行こうぜ。

そろそろ朝飯の時間だ」


「うん、行きましょ!

デザートは何かなぁ」


「お前はいつもそればっかりだな」


そうして2人は手を繋いで朝日を背にして歩き出す。


普段(いつも)とは違った新鮮な朝。

今日も今日とて、王立ローナス学園の1日が始まろうとしていた。




この次は幕間の物語を暫くやってから2章に入りたいと思います。

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