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EX ソラヒメと占い

本作シリーズ累計20万部突破しました!!


ありがとうございます!!


そしてコミカライズ4巻は明日、9/21発売ですが、早い書店では既に並び始めているようです!!


電子版も9/21発売ですのでそちらもよろしくお願いします!!


『シムル、今日はできれば大人しくしていてください』


 朝一番、起きてからずっとベッドの上から俺を見つめていたソラヒメが、おもむろにそんな事を言い出した。

 俺は制服に着替えつつ聞く。


「藪から棒にどうしたんだよ?」


『今日の貴方の運勢があまり良くないような……そんな気がするのです』


 運勢って……あぁ、ソラヒメが時々話題に出す占いか。

 ローナスに来たばかりの時もそんな話してたな。

 と言うか。


「俺の運って年中変わらずそこそこ良いって言ってなかったか?」


『えぇ。大凡その筈なのですが、今日の貴方には少し違和感があります』


 ソラヒメはベッドから降りてきて俺の胸に手を当て、目を瞑ってから『ふむふむ』と頷く。


『今日は一年の中でも珍しく、貴方の厄日と言っても過言ではないようですね。特に……』


「特に?」


 腕を組んで難しい顔をするソラヒメにつられ、俺もそれっぽく腕を組みながら聞いてみる。


『今日は竜舎に近づくと、ロクな目に遭いませんね。ワイバーンには特に注意してください。燃えます』


「お、おう……そうか」


 瞳をカッ! と見開いて早口になったソラヒメに、俺は若干タジタジになった。


『良いですねシムル? ……今日は、気を付けてください』


 謎の迫力を発するソラヒメに、俺は無言で何度も頷いた。

 ……妙にピンポイントな占いって言うか予言だけど。


(今日のソラヒメはどうしちまったんだ……?)


 そう思いつつ、俺は部屋から出て校舎に向かった。


 ***


「竜舎に近寄るな、ねぇ」


 授業後、結局俺は竜舎へと来ていた。

 と言うのも、今日の竜舎の掃除当番が俺とテーラだったからだ。

 こいつをすっぽかすと後々面倒なのは間違いない。


 ――近寄るなって言われてるけど、当番なら入らないわけにもいかねーしなぁ。


 それにそもそも、ワイバーンに対して偏見バリバリのソラヒメが言うあの占い結果は、どう考えても言い過ぎてるところがあるだろう。


「そもそも燃えますって何だよ燃えますって。掃除するだけで燃やされてたまるかよ……テーラ、もう掃除してるかー?」


 そうぼやきつつ、ガラッと竜舎の扉を開けたところ。


「シムル! 扉閉じて!」


「へっ?」


 テーラの叫びの直後、目の前が真っ赤に染まった。


「うぉぉぉぉぉ!? 熱っ!?」


 目の前に迫った真っ赤な熱波が火竜のブレスであると瞬時に判断し、思い切り体を反らせて直撃を避ける。

 ……だが。


「シムル! 服、服燃えているわよ!?」


 ブレスを避けきれなかった俺の服は、パチパチとそこそこ大きな規模で燃えていた。


「おいおいおいおい!? 勘弁しろっての!!」


 全力で地面を蹴り、竜舎近くの池へと一息で飛び込む。

 ジュッと言う音と共に、俺の服についていた火が消えた。


「ボコボコ……ぶはぁっ!」


 池の底まで潜った後、肺が空気を欲しがって一気に水面へと浮上する。

 ……幸い、火傷はねーみたいだな……。


「シムル、大丈夫!?」


 駆け寄って来たテーラの手を借りながら池から這い出た俺は、息を荒くしながら仰向けに倒れた。


「おう、何とかな……ってかよ! 何で竜舎の中で火竜がブレスを吐いたんだ!? ローナスのワイバーンはその辺はちゃんと躾けられているって話じゃなかったか!?」


「私もそう聞いてはいるけど……シムルが来る少し前、火竜の機嫌が急に悪くなったの。どういう事なのか、詳しいことは分からないわ」


「……」


 事情不明の火竜の暴走を予見したソラヒメ占い、恐るべしって感じだ。

 確かに俺は燃えた、それはもう火傷をしていないのが奇跡なくらいに。

 ……最早占いってより、予言とか未来予知だなこりゃ。

 星竜には未来を見る力とかが備わってたりするんだろうか。


「……はぁ。こんな事なら、当番すっぽかすべきだったか?」


「シムル、何か言った?」


「何でもねーよ。ただちょっと反省しただけだ」


 キョトンとした顔をしているテーラに「着替えてくる」とだけ言い残し、一旦俺は部屋へと戻った。

 びしょ濡れの上に焦げた服じゃあ、掃除当番どころじゃなかったからだ。

 ……それから部屋に戻ると、普段は外で昼寝をしているソラヒメは、人間の姿で当然のように待ち構えていた。

 まるで俺が戻ってくるのも見越していたかのように。

 それで俺が何かを言う前に『服なら準備していましたよ』と、スッと俺に制服を手渡してきたのだった。

 ついでにタオルも。


「わ……悪いな」


『見事なまでに服を焦がされましたね』


「……おう」


 ソラヒメから着替えの制服を手渡されつつ、俺は思った。


 ――チクショウ微妙に笑いやがってっ!


 次からソラヒメの占いはちゃんと信じようと思う次第だった。


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