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EX 王都の竜騎士の相棒

【ドラゴンライダー】コミカライズ2巻は本日発売です!


全国書店と電子版にて発売しておりますので、よろしくお願いいたします!

 今日も一日、授業をこなした後。

 俺はふと、テーラにこんなことを聞いていた。


「なあ、テーラ。正規のドラゴンライダーってどうやって相棒を選ぶんだ?」


「相棒? またどうしてそんな……ああ。さっきの授業を聞いて気になったのね」


 俺は「おう」と頷いた。


 今さっき俺たちが受けていたのは、現場で働くドラゴンライダーから直接話を聞くって内容の授業だ。

 いわゆる将来設計とか、そう言うのを生徒にも考えさせる趣旨のものだった。


 しかしドラゴンライダーで肝心なのは相棒だ。

 相棒の竜がいなけりゃ空も飛べないし、そもそも話にならないだろう。

 なのにさっき出てきたドラゴンライダーの話は実務面ばっかりで、相棒の竜を選ぶ過程の話がまるでなかったのだ。


「もう相棒のいるシムルからすれば、他のドラゴンライダーが相棒を選ぶ過程っていうのは気になるところかもしれないわね。でもそうね……正直、これといって決まった過程はないみたいよ?」


「ん、そうなのか?」


 テーラは指を唇に当て、あれこれ思い出すような仕草をした。


「確か聞いた話だと、相棒を卵から育てたって人もいたし、野生の若いワイバーンを捕獲して契約を結んだってケースもあるらしいわ。後は若いワイバーンを育てている各地の業者さんから譲り受けたり、家で世話をしているワイバーンにそのまま乗ったり……本当に色々ね」


「ふーん……ってなると、俺見たく相棒とやりあってからお互いを認めるってケースもありそうだな」


「そ、それはアンタだけよ……多分ね」


 なぜか呆れた表情のテーラは「あ、でも詳しく知りたいなら」と続けた。


「マール先生にでも聞いてみたら? 学園を卒業してドラゴンライダーになった生徒がどんな竜と契約したかって言うのは、学園側でも把握しているって前に聞いたから。アンタが珍しく気になってる話も、ちゃんと答えてくれるんじゃないかしら?」


「珍しくってのが何か引っかかるけどよ……ま、いいや。また機会があったら聞いてみる」


 俺はそう言い、教室から出た。

 機会があれば聞くとは言ったが、先生連中も大分忙しいだろうし。

 あまり手間取らせるのも悪い気がするんだが……おっ。


「ワイバーンを竜舎から引っ張りだしてんのか……」


 少し騒がしいなと思い窓の外を見れば、生徒数人が地竜と協力して、水竜を竜舎から引き出しているところだった。

 最近知った話だが、人間同様にワイバーンも性格面ではかなり個体差があるようで、ずっと外にいたがる奴もいれば延々と巣である竜舎に引き篭りたがる奴もいるんだとか。

 でもずっと竜舎に篭られると掃除もできないし、竜の鱗も陽の光を浴びないと弱るので、引きこもり相手にはああして強硬策に出ることもままあるらしい。


「しっかしあんなことして、あの水竜も怒り出さなきゃいいけどな……あっ!?」


 若干心配になってそのまま眺めていると、痺れを切らせた生徒の一人が水竜に近寄って、あろうことか体の一部を鱗ごと引っ張り出した。

 ソラヒメ曰く、人間が肌をつねられると痛いのと同様、ワイバーンも魔力が通っている鱗を強く引っ張られるとかなり痛いのだとか。

 しかも鱗の脆さがワイバーン中随一の水竜がそんなことをされれば、当然……。


『GUOOOOOO!?』


「う、うわっ!? 暴れるなよぉ!?」


 水竜が体をくねらせ、本格的に暴れ出した。


「言わんこっちゃねぇ!」


 ──先生もワイバーンの鱗は基本的に引っ張るなって、授業で言ってただろうがオイ!!

 この学園の生徒は皆、俺なんかよりよっぽど飲み込みが早いと思うが、それでも肝心なところが抜けてたりして困る。


 俺は窓を開けて飛び出し、竜舎へ駆け寄りながら魔法陣を展開した。

 暴れる水竜の体を解析スキャンし、奴の特殊な魔力を一時的に右腕に付与。

 そのまま構えて、詠唱と共に右腕を突き出した。


「nearly equal:竜咆哮バースト!!!」


 殴り込むように放った拳から、魔法陣と共に、水竜のブレスと同質のものが放たれた。

 一直線に飛んだ高魔力の水閃光は、生徒を狙っていた水竜にぶち当たって、奴の体を大きく跳ね飛ばした。


『GRRRRRR!!??』


「今だ! 操竜術を使うか、魔法薬を嗅がせて落ち着かせちまえっ!」


「わ、分かった!」


 泡を食った生徒が横たわってもがく水竜に駆け寄り、小瓶の封を開け、竜を落ち着かせる効果を持つとされる魔法薬を鼻先にぶっかけた。


『GRRRR……』


 すると水竜はさっきまでの様子が嘘のように静かになった。

 あの魔法薬、いざって時のためにどの竜舎にも置いてあるとは聞いてたが、ここまで効果があるとは。

 ……怒ったソラヒメにも効果があんのかなと、少しだけ思ったりした。


「皆さん、何の騒ぎですか!?」


「ん?」


 声のした方へ首を向けると、マール先生が大慌てでやってきていた。

 それから俺たちは、肩で息をするマール先生に事情を話した。

 ちなみに水竜の鱗を引っ張るバカをやらかした奴は、後から来た怖い顔した先生にどっかへ連れて行かれた。

 多分説教だろう……おっかねぇ。


「シムルくん、今回は助かりました。本当にありがとう」


「ああ、いやいや。たまたま見てただけっすよ。それに魔法一発で水竜を横倒しにできたし、あまり危なっかしくもなかったんで」


「とはいえ何かあるたび、シムルくんを危ない目に……」


 前に起こったワイバーン暴走事件を思い出したのか、マール先生は若干顔が暗かった。

 うーん、あんまこういう雰囲気は得意じゃねぇし、何か話題でも振って……あ、そうだ。


「そういえば先生、聞きたかったことがあったんすよ。ちょうどいいんで、構わないっすか?」


「ええ、答えられることなら」


 俺は今日テーラに言ったことを、話題転換も兼ねてそのままマール先生に聞いた。

 正規のドラゴンライダーって、どんなふうに相棒を決めるもんなのかと。

 するとマール先生は得意げに答えてくれた。


「その話なら私にも答えられますよ。卒業生からよく話も聞きますが、大半は……軍からの紹介ですね」


「ぐ、軍?」


 予想の斜め上の話に、俺は声をうわずらせた。


「はい、軍です。この国はドラゴンライダーが守っていますから。ざっくり言えば、当然、軍の方にもワイバーンを育てる施設などがあるわけです。なのでそこからの紹介が多い印象です。訓練されたワイバーンばかりですから、操竜術にもよく対応してくれますし」


 マール先生は「とは言え」と腕を組んだ。


「軍からワイバーンを譲り受けたからと言って、卒業生が全員軍に入るわけでもありません。やはりローナス卒業生には、軍以外でも様々な形で王都や要所勤務になる人も多いですから。優秀なワイバーンを譲り受けた人は、軍以外の形でもこの国のために働くケースが多いんです」


 その辺の職業事情には明るくないが、しかしなるほど。

 軍隊で育てられて鍛えられたワイバーンなら、強さもそこそこで申し分ないんだろうが……。


「シムルくん、難しそうな顔をしてどうしたんですか?」


「い、いや。その……」


 俺の場合はソラヒメと出会って相棒同士となり、それからそこそこ長く一緒に暮らして絆を深めてきた自覚はある。

 だからこそ他のドラゴンライダーもきっと最初は互いにぶつかり合ったり、どこかでのんびり一緒に暮らし続けることで互いを知って、認め合うもんだと考えていたが……。


 紹介で済む上、初めから操竜術を受け入れてくれるらしいワイバーンが大半のドラゴンライダーの相棒ときたか。


 ──な、何か思ってたのと違う……か?


 小首を傾げるマール先生の手前、俺はどう言ったもんかと後ろ頭をかいていた。


 う、うぅむ……。

 王都じゃよくある話なのかもしれないし、悪い話でもないと思う。


 だが田舎の方にいた俺からすれば、いまいちぱっとしないような。

 これも竜との出会い方が違う、王都と田舎の差みたいなもんなのだろうか。


 それと「話を聞く限りだと、俺とソラヒメって案外と得難い出会い方をしたんだろうな」と少しだけ思ったりしたのだった。


本作【王都の学園に強制連行された最強のドラゴンライダーは超が付くほど田舎者】のコミカライズ2巻は本日6/23(火曜日)発売となります!


全国書店はもちろん、電子書籍の方も発売しています。


コミカライズ2巻はWEB版では1章の模擬戦闘ことデュエル決着まで、書籍版では1巻のラストのあたりまでとなっています。


2巻もソラヒメをはじめとするヒロインたちが非常に可愛らしく、戦闘シーンも迫力満点です。


発売中の原作1〜3巻やコミカライズ1巻と共に、2巻もよろしくお願いします!


***


新作「邪竜を引き連れ、悠々自適な旅路を目指す」この下からクリックで読めますのでよろしくお願いします!

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