全ての始まり
初めての小説です。
連載ですが、更新は適当にします。
誤字、脱字があったらごめんなさい。
「これが、家の鍵になります」
………
「ありがとうございます」
………
俺は不動産屋から貰った鍵を握り締め、その場に立ち尽くしていた。
「…佐藤様?」
………
「はい!」
完璧に上の空だった。
新生活の幕開けに心踊っていた1ヶ月前とは違い、この家に決めた後からどうも落ち着かない。
いや、落ち着かないと言ったら語弊があるか。
実際は驚く程落ち着いている。
一人暮らし。知らない土地。知らない人。
何もかもが知らない事尽くし。
しかし、高揚、期待、不安、恐怖。寂しさ。
その様な感情は無いに等しい。
自分の中に存在して感情は、『虚無』
ただ、それだけだ。
果たしてそれを感情と言っていいのか、それも定かではない。
新しく住む家。新しく自宅となる知らない物。
『それ』を借りてからと言うもの、全ての期待や不安は消滅した。理由は不明。
『それ』に内見に行った時は激しく興奮状態にあった。
ワクワクもしたし、不安もあった。
今はその全ての感情が『それ』に吸い尽くされた気分だ。
………
………
………
俺は現実世界に戻り、手に握り締めている鍵を見つめた。
不動産屋に背を向け一歩一歩前へと進んでいく。
その足取りは酷く重たい。まともに歩けてるのかもわからない。
電車に乗り『それ』がある駅へと着き、町並みを見渡した。
都内の割には静かな場所で人通りも少ない。
駅から歩いて15分程度の場所に『それ』はある。
俺は道を間違える事無く『それ』の玄関先へと着いた。
全部屋で8戸。集合ポスト。かなり年季の入った階段。
どこにでも有りがちな古アパートだ。
俺の部屋は2階の奥から2番目。
その部屋の前に立ち鍵をゆっくりと開ける。
カチャっ
簡単に鍵が開く。当たり前だ。鍵を差したのだから。
扉を開き中を見渡す。
なにも無い。
最初は狭いと思っていた1Kの部屋がやたらと広く感じる。