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無色
私は、蒼の中で目を閉じた。
思い出したくないことを思い出してしまったから。
目の前にちらつく赤から逃げるように、息を殺して。
あの日、彼や従兄がどうなったか、私は知らない。
覚えていない、思い出さない、見えない、気づかない。
きっとあれは従兄のふりをした誰かで、従兄はどこかで何も知らずに生きているのだろう。
きっと彼は私の携帯を落としたまま、迷子になって何事もなくこの島を去ったのだろう。
父や母はきっと病院で一命を取り留めて、まだ島にいる私を迎えに行こうと計画しているに違いない。 親戚だって、そうだ。
それに彼はきっと、ゆびきりの約束を破った私を怒っているに違いない。
きっと彼はいつか思い出して、ひょっこりとこの島を訪れる。そして、まだこの島にいるのかと、私を笑うのだ。そして、約束は守れと叱るのだ。
そして私は、彼と一緒に、ゆびきりをした約束を果たすのだ。
ああでも、みんなは私を見つけられないんだった。
私はあの日から、色を持たなくなった。
すべての色を失って、ただ、透明になったのだ。
声だって、誰にも聞こえない、透明なものになってしまった。
水の中、手をかざしてみても、手は見えない。
私は、もう、体を持たない。




