蒼
空の青さを際立たせるように、白い、くっきりとした雲が浮かぶ。
白い砂浜の上、ひんやりとつめたい水が、私の足を濡らしていた。
夏だ。
私がこの島から出ることができなくなってから、何年経ったのだろう。
ひとつだけある屋敷に詰まっていた夥しい数の本はすべて読み込んだし、島の隅々まで探検しつくした。
それだけの時が過ぎたのだ。
私を探しにくるものはいなかった。
私を見つけるものはいなかった。
私を助けるものは来なかった。
年を数えていたら、あまりの長さに、私は耐えられなかったかもしれない。
水の中を、太ももの半ばまで浸るくらいの深さまで移動する。
足元にいた魚は私を恐れることなく、するりするりと通り過ぎて行った。一度だけ鱗が水の中でぴかりと光った。
私はそっと水の中にしゃがみこんだ。目を閉じて、暗闇の中、ひんやりと心地よい水が髪の中を通り抜けてゆくのを堪能する。息を詰めたまま、その心地よい苦しさに抱かれて。
水底に座って、足を伸ばして。 手を大きく広げて、後ろに倒れて。
ふわり、と砂に頭がついた。ゆっくりと目を開けると、目の前を泡が昇って行くのが見える。
何も聞こえない静寂のなかに私はいた。辺り一面、見たこともない宝石のような、うつくしい蒼が満たしている。
はあ、と息をつくと、私は半分目を閉じた。
手のひらを魚が掠めていく。
でも魚はきっと、死んだように横たわる私など気にも留めないだろう。気付やしないのだ。
蒼の中一人揺蕩うと、思い出してしまうのはあの時の事だった。
みんないなくなってしまった。あの時の事。




