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亜の巻 第4話 裏切り

このブーガン、一生の不覚だ。

あんな小童こわっぱどもにきを見せてしまうとは。


食い物に混入された毒ならたちどころに気付けたはず。あのギランとかいう小僧に地元の酒だから特殊な味がするなど言い含められて、まんまと策にはまってしまった。『七剣王』と世界に名を轟かせた俺が、こんな場所で、しかもあんな連中相手に力尽きるとは…。無念!


この毒はかなり強い。体が痺れ、意識も朦朧とするなかで剣を振るったが、恥じるばかりの動きだった。背に斬りこまれ、右脚、左腕、右目も斬られた。致命傷になったのはこの袈裟斬りにされた左肩から胸にかけてのものだろう。あの浪人、こうなるまで腕を隠していやがった。実は名のある剣客だったに違いない。見抜けなかったのは己を過信しすぎたからなのか。


残ったのは、この妖刀『エジムント』のみ。あとの六本は連中に奪われた。こうなると手にした剣がこれでよかった。妖刀には魔力が秘められている。俺は魔術の心得がまったく無いが、唯一、若い頃にジプシーのババアから教わった秘術がある。『ヒンロンの紅い首飾り』を媒介とする『言伝の法』だ。この妖刀が無ければ術を成功させられるだけの魔力は俺には無かった。


もはや呼吸するのもやっとだ。

刀傷が肺に達しているからだろう。

遠く『ズレタ』の街で俺の帰りを待っている愛する『ユイ』にこの想いを伝えなければならない。


俺は最後の力を振り絞り、『エジムント』の力を借りながら呪法に入る。『ヒンロンの紅い首飾り』が妖しく光りを発し始めた。


返す返すも無念だ。

こんな子ども騙しのだまし討ちにあうとは。

連中を呪ってやる!!

この身が修羅道に落ちようとも魔獣に転生し、あいつらを食い殺してやる!!



紅い光りがダンジョン内を一瞬強く照らし、ブーガンの絶叫がこだました後、また闇に包まれた。

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